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ネット依存・ゲーム依存にならないための予防策
2020.07.01 by 大笹 いづみ 大笹 いづみ

連載:子どもとネットの上手な付き合い方 ネット依存・ゲーム依存にならないための予防策

子どもたちの間に急速に広がるスマートフォン。SNSを通じて、簡単に知らない人ともつながることができてしまう世の中です。子どもを危険から守るためにどうすればいいのでしょうか。子どもとネットの関係に詳しい大笹いづみさんに聞きました。


第5回 ネット依存・ゲーム依存にならないための予防策

どうしてゲームに夢中になるのか

子どもも大人もなぜゲームに夢中になるのでしょうか。ネットに接続して遊ぶゲームに感じている楽しさに関して、リチャード・バートルという人が興味深い分析をしています。彼は論文の中でプレイヤーを以下の4つにわけて考えています。

1.アチーバー(達成や成長)

目標を達成したい。レベルアップ、ミッションクリアが楽しいタイプ

2.エクスプローラー(探究)

ゲームの世界観や物語を深く知りたい。ゲームで何かを発見したいタイプ

3.ソーシャライザー(交流、協力)

ゲーム内での人とのコミュニケーションをしたいタイプ

4.キラー(優位、勝利)

他のプレイヤーに勝ちたい。ランキングの上位を目指すタイプ

最近のゲームは、より長く続けてもらえるよう、上記のすべてタイプのプレイヤーが満足できるように作られています。また、ゲームそのものの面白さ以外に、ゲームのシステムや演出の中にも、より続けたくなる仕掛けが満載です。

掛けはいくつもありますが例として2つを挙げてみましょう。

(1)何かを達成する、獲得するなど、成功する体験、うれしい体験を短時間に連続させる。

(2)時間かお金を使えば、必ず問題が解決できるという安心感を与える。

人は簡単に達成できるミッションだけでは飽きてしまいます。逆に、いくら時間をかけても何も達成できなければゲームを続けたくなくなるでしょう。現在は多くの人が楽しいと思えるような難易度を人の手で調整していますが、最近ではAIがプレイヤーのゲーム内の行動を分析し、その人がもっとも楽しいと思えるようにリアルタイムで難易度を調整する「メタAI」と呼ばれるものも研究されています。

ゲームが面白さにあふれているのに対して、勉強やスポーツはどうでしょうか。前に挙げた(1)、(2)の観点で比較してみると以下のような違いがあると言えます。

(1)面白さを感じるには、その教科や運動の基礎を身に着ける必要があり、それには時間がかかる。

(2)時間をかけても解決できるとは限らない。できないかもしれないという不安がある。

すべてがそうとは言いきれませんが、まだ勉強やスポーツの面白さを知らない子どもにとっては、面白さにあふれ、比較的簡単に成功体験ができるゲームの方が勉強やスポーツよりも魅力的に見える、没頭してしまうのは当然と言えるかもしれません。

日常にゲームの楽しさを

ゲームは短時間にたくさんの面白さを味わうことができます。では、日常はどうでしょうか。日常の中にゲームの面白さを取り入れてみることで、ゲーム依存をやめさせることはできないでしょうか。

例えば、バートル氏の言う「達成、交流、探究、勝利」などを、日常生活の中で体験できるようにする方法は? 意外に思うかもしれませんが、家事や片付けは、いくつかゲームと共通点があります。

まず、短時間で目標を達成できます。また、手順が決まっているので必ず達成できるという安心感もあります。あと足りないのは、達成したあとの「うれしさ」でしょうか。

ゲームであれば、派手な効果音とともにアイテムゲット!と、大きな文字が飛び出す場面です。

「よくできたね!」「ありがとう!」などの声掛けがあれば、子どもたちは「うれしい」と思い、ゲームと同じように取り組むことができるかもしれません。間違っても「これくらいやって当然」「次からは言われなくてもやって」などの言葉をかけて、家事をうれしくない活動にしてしまわないこと。

また、達成後の「うれしさ」をお金やおもちゃで与えないことです。それらを達成の「うれしさ」にすると、次からは「もらえるお金の分しかやらない」「おもちゃをもらえないならやらない」というように行動の動機がかわってしまうことがあります。家族みんなで家事達成シートなど作り、できた分だけシールを貼って競い合う、夕飯の時に家族の前でほめる、家事をする中で発見したコツなどをみんなに教えてもらうなどの活動も達成後の「うれしさ」につながります。

久里浜医療センターが発表しているゲーム依存予防の項目の一つに「ネットゲームの時間を減らす」というものがあります。ゲームが生活の中での最優先事項となっている子どもには、ゲームで味わえる楽しみの代替えとなるものを現実の活動の中に見せていくことで、まずはゲームの優先度を下げていくことが重要です。

嫌なことから逃げているケースも

ゲームに依存している子の中には、勉強ができない、人間関係がうまくいかないなどの理由で、そこから逃れるためにゲームに没頭しているケースもあります。この場合、ゲームを禁止したとしても依存先が他の活動に変わるだけで状況は改善できません。また、ゲームが唯一の逃避先であった場合には自暴自棄になったり、暴力に走ったりなどさらに良くない状況に陥るケースもあります。

こういった場合、散歩など簡単な運動に誘う、その子の良いところを褒めるなど、ひとまずその問題をさけて自己肯定感をあげる活動を行うことが推奨されています。しかし、そこで終わってしまっては再びその問題と対峙したときに解決ができずに、またゲームに逃げてしまうこともあります。ある段階からは何が逃避の原因となっているのかを一緒に考え、根本の原因を解決する方法を具体的に模索してください。

お互いの好きな活動を一緒に

子どもに本を読ませたい時は、まず親が本を読んでいる姿を見せるのが一番です。もし、寝る間も惜しんで没頭してしまう趣味があるなら(過去にあったことでも)、その活動を子どもと一緒にやってみるのはどうでしょうか。あなたが目を輝かせながら行う活動であれば子どもも興味を持つでしょうし、一緒にやってみたいと思うかもしれません。

反対に、子どもが面白いと思っているゲームを一緒にやってみるのもひとつです。子どもがどこに興味を持っているのか、何が面白いと思っているのかを知るきっかけにもなります。ゲームについて詳しい子どもの方が親に教えるという場面ができれば、子どもの自己効力感を高めることもできますし、ゲームの話題をコミュニケーションの道具としてうまく活用できるかもしれません。

ただ子どもをゲームから引き離そうとするのではなく、ゲームと同じくらい楽しくて興味深いものが世の中にたくさんあることを見せてあげてください。子ども自身が楽しいと思える活動を発見してそちらに時間を使い、結果として日常でゲームだけに時間を使わなくなるのが理想的だと思います。

まずは、日常の中で一緒に家事してみたり、お互いが好きな活動を一緒に行ってみたりするなどして、日常の中でゲーム以外の活動の優先度を上げていくところからはじめてみましょう。

大笹 いづみ

大笹 いづみ株式会社教育ネット代表取締役

未来を生きる子どもたちの情報活用能力を育むことを目的とし、教材づくりや出前授業などを行っている。2児の母。

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