子育てママのお悩み解決メディア
第46回 子ども達の日常に、国家の影?

連載:駐在員の妻は見た!中国の教育事情 第46回 子ども達の日常に、国家の影?

2018年より中国・広州に滞在中の6歳児ママです。独身時代は上海で暮らしたことがありますが、現地で子育てしてみると驚きと発見の連続。(現在、コロナによる退避のため、一時帰国中)。

娘が、英語が公用語の幼稚園に転入した日、考えさせられる場面に出会いました。

カルチャーショックを受けた「乗り物」の授業

娘は、中国の幼稚園の年少が始まって1か月たってから転入しました。同級生は、中国人が7割を占めています。初日だけは私が付き添い、授業を受けました。

「先月から、乗り物の勉強をしています」と担任のYan先生。
中国人ですが、英語が堪能で、信頼できそうな人で一安心。「さ、あなたも前に来て皆の仲間に入って!」と誘われ、娘は輪の中に。床にはじゅうたんが敷かれ、その上にあぐらをかいて皆座っています。

……日本の幼稚園とまったく違う! リラックスムード? 猫背姿勢の子多いです。

上靴を履いたままですが、寝転がる子もいて先生に「まっすぐ座って!」とたしなめられています。どうして椅子じゃないんだろう? 衛生面や姿勢の悪さが気になります。

さらに観察すると、基本的に勉強の時は、椅子に座って机を使います。机を使わない「音楽、お話をきく、動画を観る」という内容の時は、床に座るスタイルのようです。

中国での習慣は、今も娘に影響しており、正座よりあぐらを好みます。日本で神社の結婚式に出席した時、娘が和室であぐら座りをしました。すかさず、祖母に「和室では、日本人は正座です」とたしなめられて、恥ずかしい思いをしました。

幼稚園の教室風景。直接、床に座る子ども達

と、あれこれ考えながら授業参観していると、「道路を走るものを紹介します、これは何かな?」という質問が出されました。
自転車、バス、タクシーと進んで、やがて戦車が登場。

なにっ? 戦車!? 道路を走る乗り物だっけ?
「軍事パレードで走りますね~」と、先生。

幼稚園児向けの授業に戦車が? 私の理解が追い付きませんでした。
見たことがない乗り物の出現に、娘は私のほうを振り向いて「ママ、これ何?」。

「空を飛ぶもの」には、もちろん軍用機が登場しました。これは、歴史や政府の考え方・宣伝によるものでしょう。軍事力が国力の一部として、国民に重要視されているわけですから当然といえば当然です。

幼稚園自体はインターナショナルスクールを模しているとはいえ、随所に中国色がみられ、発見が多かったです。

銃のおもちゃと子ども達

注意して見てみると、街中ではかなり小さい子から小学生くらいまでが、銃のおもちゃを持って遊んでいる姿をよくみかけます。日本よりも本格的な造りなので、どきっとします。中国人に聞くと、すすんで買い与える親もいるということです。

私は、特に政治信条がどうというわけではないのですが、戦争を想起させるものは苦手です。また、中国では今でも第二次世界大戦中の日本軍の行為についてしっかり教育されており、たまにどきっとします。

だからかもしれませんが、銃のおもちゃを向けられることがあると、すごく嫌な気持ちになり、「やめて!」と子ども相手にむきになることもありました。日本人ってどちらかというとこういう感覚な気がします。

一度、幼稚園に銃のおもちゃを持ってきた子がいたので(年中までは、小さなおもちゃや人形の持ち込みは黙認)、それとなく先生達に「どう思いますか」と尋ねたことがあります。「好ましくないので、校内では使わせません」とのことでした。

国家が軍備をどう考えるか、子どもにどう教えるか次第ですよね。転入初日に、中国という国家と教育について考えさせられました。

防空訓練の深い意味

余談ですが、中国では年1回、全都市で防空サイレン演習(防空訓練)があります。メディアやSMSなどで予告が流され、決められた時刻にサイレンが鳴り響きます(*)。

興味を持った私は道路に出て、その瞬間を迎えました。
「ブゥーーーン!」という大音響のサイレンが断続的に続き、本当に戦時ならどれほど怖いだろう、と背筋が寒くなりました。でも、広州の人々は特に反応せず、普段通りの生活を送っていました。

しかし、この演習もどんな事態を想定しているのか、どこが仮想敵国か、と考え出すと、ぞっとする話です……。

*中国の防空訓練
2001年より、毎年9月の第三土曜日に実施。この訓練、実は9月18日の満州事変(中国にとっては九一八事変)記念日に関係があります。「日本帝国主義による中国侵略開始を忘れない」「犠牲になった人々への哀悼」という意味もこめて実施されているそうです。

戦争関連の記念日はいくつかあります。日本ではあまり知られていませんが、中国人と深くつきあう上では避けてとおれません。日本人にとっての原爆や終戦記念日のようなものです。

以前、9月18日に中国で新製品を発売した日本企業に非難が殺到しました。それほど中国人にとっては忘れがたい日です。

岡本 聡子

岡本 聡子ライター・経営学修士・防災士

戦略系経営コンサルティング会社を経て、上海にMBA(経営学修士)留学。その経験をもとに『中国のビジネスリーダーの価値観を探る』(『上海のMBAで出会った中国の若きエリートたちの素顔』を加筆・改題)を株式会社アルクより出版。幼稚園児の母。分析・事業開発支援、NPO運営なども行う。facebook.com/okamotosatokochina

岡本 聡子さんの記事一覧 →