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第48回 大気汚染と子育て

連載:駐在員の妻は見た!中国の教育事情 第48回 大気汚染と子育て

2018年より中国・広州に駐在していた、6歳児ママです。独身時代は上海で暮らしたことがありますが、現地で子育てしてみると驚きと発見の連続。(2021年本帰国)。
駐在中は、楽しい出会いもたくさんあるけれど、気になることもあります。
私が一番嫌だったのは……。


毎日曇り? 実は、大気汚染だった

中国で生活するにあたって、私が一番神経を使ったのは「空気」問題。いわゆる、PM2.5や排気ガスによる大気汚染です。

こんなことを言うと、「神経質だなぁ」と思われるかもしれません。確かに、広州は香港に近い南方に位置するので、上海や北京よりは大気汚染はましです。

しかし、広州で青空が見える日は数えるほどです。黄色や薄茶色のどんよりとした薄い雲や靄(もや)が常に空を覆っています。

広州で暮らし始めた当初は「毎日、曇りが続くなぁ」と不思議に感じていました。が、本当は晴れており、あのどんよりは大気汚染だったというわけです。
私は、北京や上海で暮らしたこともありますがさらにどんよりしています。

大気汚染のせいでしょうか、気管支をやられている人が多い気がします。
小さい子どもにはどんな影響を及ぼすのか、心配でたまりませんでした。

ヘルシンキに拠点をおく環境問題研究グループやNGOの試算(2020年7月発表)によると、北京と上海だけで、大気汚染により、半年間で推定4万9000人の死者と230億ドル(約2.6兆円)の経済的損失がもたらされたそうです(注1)。

どよーんとした曇りの日が多い、中国の都市部。暑さとゲリラ豪雨のため、年中、晴雨兼用傘を多用する広州の人達(2019年撮影)。

大気汚染指数と常ににらめっこ

PM2.5は内陸部の火力発電や石炭消費によって生じます。その粒子が風向きによって、いろんな地方に飛ばされます。基本的には冬に汚染度があがるのですが、春夏でも、いきなり数日だけ数値が跳ね上がる日があるため、常に気を抜けません。

朝起きると、まずアプリで大気汚染指数と、時間ごとの予測をみます。そして、外を見て曇り具合を確かめます。50階建てのビルや広州タワーが上まで見えれば、OK。上の方に靄(もや)がかかっていれば、「今日も空気悪いなー」と判断します。冬の北京では、視界が悪くて車の運転ができないほど曇ります。

大気汚染指数(米国版)を比較すると、東京が15の時、広州は120。秋冬の北京は400~500の日もあります。

大気汚染指数が120を超えると、幼稚園での戸外活動は中止です。自分自身も、今日は無理して外出はしないでおこう、となります。

子どもを送るバス停では「今日の空気はマシじゃない?」「空気悪いねー」があいさつ替わり。指数次第でマスクをしたり、首からウィルスを遠ざけるペンダント機器(電池式)を下げる人もいます。おそらくあまり効き目はないのですが、安心したいという一心。

「今日は指数が90くらいだから、午後から幼稚園に迎えに行って夕方まで公園へ」と娘と約束していても、風向き次第で数値はすぐ上がってしまいます。常にアプリを見ながら行動していました。

年間を通して7割くらいは、汚染指数が100をこえていました。それでも、中国に慣れた人や中国人は、空気のことはほとんど気にせず、変わらずに過ごしています。
しかし、空気の悪さは体感しているようで「雨が降ると、世界がきれいになったと広州人はすがすがしい気持ちになります」と言われたことがあります。

写真2:日本人向けクリニックに掲示されていた、中国各地のPM2.5の観測値。日により変動が激しい。

娘と私も咳や痰が続き、ピリピリ

私達も、大気汚染を気にしなければ心穏やかに過ごせるのかもしれません。しかし、PM2.5は身体に様々なダメージを与えることがすでに分かっています。

広州に着いてすぐに、私も娘も咳が出て、痰がからみやすくなりました。二人とも風邪のようなアレルギーのような症状がなかなか治りません。

中国人小児科医に、「これは、大気汚染による症状でではありませんか?」と聞きに行ったこともあります。医師からは「アレルギーです」と言われました。
娘は0歳の時に、日本でRSウィルスにかかったので、呼吸器にしばらく影響があるかも、と私が神経質になっていたのかもしれませんが……。

ぜんそくがひどいお子さんの場合、冬の間だけ日本に避難している人もいるそうです。

家では、日本から持ち込んだ空気清浄機に、もう2台買い足して、合計3台を24時間フル稼働させました。
帰宅するとすぐうがい・手洗いとシャワー。どの家庭もこんな感じでした。人により感覚が違いますが、小さい子どもがいるママ達は特に気を遣います。

さらに、路上喫煙者がとても多くて、よくたばこの煙を吸ってしまうのも、イライラ。うーん、今思い出してもあれは嫌です。中国といえば思い出すのは、たばこの臭いです。

思いきり外遊びできないのが、最大のストレス

良いこともありました。なんと、スギ花粉症が存在しないのです!

でも、アプリとにらめっこして、健康を気にしながらの外遊びは気疲れしました。基本的に、暑さ、湿気、大気汚染のため、日本人はあまり外遊びをしません。

同様に、中国の都市部では子どもは日本ほど外遊びをしません。一方、室内遊び場はたくさんあります。でも、1時間1000~3000円程度はしますし、衛生面が気になり、私はあまり好きではありませんでした。

私自身は、田舎で好きなように遊んで育ったので、娘にも野外を裸足で走り回ってほしいという願望を抱いています。娘は実際にそういう子なので、思うように外遊びができないことは、私達親子にとって大きなストレスでした。

日本に一時帰国するのは、真夏や真冬でしたが、とにかく寸暇を惜しんで外で遊びました。都内の幹線道路沿いなんて「空気が悪い!」というイメージですが、中国生活経験者からは「まるで南アルプスのような清らかさ」です。

日本では毎日青空が見られることに、今でも感動しています。(文・写真:岡本聡子)

(注1)出所:ロイター日本語版 https://www.reuters.com/article/china-pollution-idJPKBN24A149

岡本 聡子

岡本 聡子ライター・経営学修士・防災士

戦略系経営コンサルティング会社を経て、上海にMBA(経営学修士)留学。その経験をもとに『中国のビジネスリーダーの価値観を探る』(『上海のMBAで出会った中国の若きエリートたちの素顔』を加筆・改題)を株式会社アルクより出版。幼稚園児の母。分析・事業開発支援、NPO運営なども行う。oyakobousai@gmail.com facebook.com/okamotosatokochina

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