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第53回【最終回】格差社会・中国。格差は次世代に受けつがれるのか。

連載:駐在員の妻は見た!中国の教育事情 第53回【最終回】格差社会・中国。格差は次世代に受けつがれるのか。

2018年より中国・広州に駐在した、6歳児ママです。独身時代は上海で暮らしたことがありますが、現地で子育てしてみると驚きと発見の連続(2021年本帰国)。
現地では、娘は英語で教育を行う幼稚園に通いました。同級生の7割は中国人で、皆とてもお金持ち。

幼稚園におやつを持ち寄り、クラスパーティ

同級生は、驚くほどの富裕層

中国では英語教育が大ブーム。英語で教育を行う幼稚園や小学校は、空席待ちが出るほどの大人気です。

幼稚園の体育の先生は、オーストラリア人

朝と午後の送迎時、幼稚園の前には高級外車やスポーツカーがずらり。運転手付き、お手伝いさんに付き添われて登園する子も珍しくありません。
場違いなところに来てしまった、とひやひやしました。

お父さんが高級外車を運転して送り迎えする家庭も多いです。平日のこの時間、Tシャツ短パンで送り迎えできる仕事って何……?

仲良くなってから聞いてみると、彼らはレストランチェーンのオーナー、人気セミナー講師、不動産開発、スポーツ選手などでした。

クラスメイトでは、雲南省出身者と北方地域出身の夫婦、その娘のローラファミリーと仲良くなりました。
ローラには、専属のシッターと運転手がいます。
外食する時も、子どもにはベビーシッターが付き添い、食材を細かくして食べさせ、トイレにも連れて行きます。親は食事とおしゃべりに集中。

ローラ一家との交流の様子はこちら。
第27回 幼稚園クラスメイトの中国人一家と、ディナーへ

ある日、ローラママが「今日、夫は病院に行って仕事をしている」というので、「お医者さんなの?」と聞き返すと、「病院を建てている」との答え。

共通の友人によると、「ローラは、生まれた時からビルのオーナーだよ。おじいさんからビルをすべて受け継ぐのだから」とのこと。

そんなローラ一家は、日本が大好きで、京都の高級旅館を定宿にしているそうです。
やがて、2人目を妊娠したローラママは、米国で出産。近年、中国人の米国出産は厳しく制限されているのですが、富裕層にはそれなりのやり方があるのでしょう。

あまりの豊かさに戸惑う私。ある人から、こんな忠告を受けました。
「この幼稚園の同級生のご家庭は、日本人が想像できないほど裕福です。日本からの駐在員がおつきあいできるレベルではありませんから、無理してつきあわなくていいです」

一見、富裕層には見えないが……

ローラ一家を含め、幼稚園の同級生の両親は、がつがつした感じがまったくしませんでした。声は小さく、低く、物静かで控えめ。一般的な中国人とは印象が異なります。

でも、Tシャツに短パンやジーンズ姿なので、とてもお金持ちには見えません。実はこれ、広州の富裕層の特徴なのです。

幼稚園の父の日イベント。パパたちは若く、すらっとして、なかなかの男前でお金持ち!

中国では夫婦共働きが一般的ですが、ここまでの富裕層になると専業主婦も多いです。

クラスに1人だけ雰囲気の違う中国人ママがいました。彼女は、デザイナーとしてブランドを展開中。仕事にまい進しており、子どもの世話はシッターに任せきり。子どもの友人関係で悩んでおり、私も声をかけられました。

猛烈に働くママは、クラスでちょっと浮いていたのかもしれません。

そのママとの交流はこちら。
第35回「娘と仲良くしてほしい」―ある中国人ママの悩み―

農村部と都市部の格差は大きい

中国は激しい競争社会であるとともに、格差の大きな社会でもあります。先ほど述べたような超富裕層がいるかと思えば、中国の李克強首相は、「平均月収が1000元(1万5000円)前後の中低所得層も6億人いる」と発言し、世界を驚かせました(注1)。

李首相は、2020年に「国民の年間可処分所得は平均で3万元(45万円)」とも述べています(注2)。

農村部は都市部に比べ、所得の低い地域です。
背景として、農村生まれの農村戸籍と、都市戸籍には厳然たる区別があります。すなわち、移動や正規の定住が制限されます。農村から抜け出すには、良い大学に入るか、都市部に就職しなければなりません。

しかし、収入が低く、教育機会の限られる農村戸籍者にとって、農民・出稼ぎから抜け出るのは困難です。こうして都市部に住みながらも、農村戸籍のまま、就業・医療・教育など社会的サービスから取り残されている人達が多数存在しています。

私がいた広州にも、農村からの出稼ぎ労働者がたくさんいました。工場での労働や中国版Uberのような宅配サービスに従事するのは、彼らです。狭い一部屋に何人かで生活しています。
一方、都市出身者は概して学歴が高く、ホワイトカラーとして働く人が多いです。

「クレディ・スイス」は、2020年、中国の上位1%の富裕層が中国全体の資産の30.6%を保有していると指摘しています(注1)。

相続税・固定資産税がないため、富がそのまま引き継がれる

さらに、相続税や固定資産税がないことも、格差を広げています。富の再分配がなされず、経済格差が階層ごとに固定しやすくなります。

だから「ローラはすべてを引き継ぐ」というわけです。

2021年8月、習近平が「共同富裕」というスローガンを打ち出しました。
「貧富の格差を是正し、すべての人が豊かになることを目指す」という内容です。

しかし、相続税や固定資産税の導入など、共産党幹部の既得権益に踏み込むような改革は行われていません。
2021年秋、習近平は日本の固定資産税にあたる「不動産税」を一部の都市で試験的に導入することを決定しましたが、反発が予想されています(注1)。

政府の思惑とは逆に、中国社会の格差は拡大していくのではないでしょうか。

中国のレストランでは、入店待ち時間を楽しむ工夫がたくさん。黒板もそのひとつ。4歳娘の落書きにホロリ。

この連載は今回で終了いたします。これまでおつきあいいただきありがとうございました。また機会があれば、よろしくお願いします。

(文・写真:岡本聡子)

(今回の記事は、2022年1月末時点の情報をもとにしています)

注1:NHK News Up(2021年11月9日付)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211109/k10013338551000.html

注2:東洋経済オンライン(2020年6月18日付)

https://toyokeizai.net/articles/-/357314?page=2

岡本 聡子

岡本 聡子ライター・経営学修士・防災士

戦略系経営コンサルティング会社を経て、上海にMBA(経営学修士)留学。その経験をもとに『中国のビジネスリーダーの価値観を探る』(『上海のMBAで出会った中国の若きエリートたちの素顔』を加筆・改題)を株式会社アルクより出版。幼稚園児の母。分析・事業開発支援、NPO運営なども行う。oyakobousai@gmail.com facebook.com/okamotosatokochina

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