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Column 駐在員の妻は見た!中国の教育事情

新型コロナウィルスに翻弄される日本人家族。

2020.02.10

2018年より中国・広州に滞在中の4歳児ママです。独身時代は上海で暮らしたことがありますが、現地で子育てしてみると驚きと発見の連続。今回は、新型コロナウィルスに関連する動きをお伝えします。私自身は、偶然1月中旬に日本に帰国しており、渦中の中国にはいませんが、現地と頻繁にやりとりをしています。


臨時特別号 新型コロナウィルスに翻弄される日本人家族

デマの衝撃。「お宅のマンションで感染者が出たようです」

春節休み前の1月中旬、すでに日本に帰国した私や夫の元に、複数の連絡がありました。どうやら、私達の住むマンションで新型コロナウィルス感染者が出たらしいのです。当時は、広州での感染者は一桁。あわてて、施設担当者に問い合わせると、「ネットの情報はデマです。我々も警察に被害届を出しました」と、被害証明書の写真付きで返事が送られて来ました。

当時は、「とはいうものの隠ぺいしてない? いやー、しかしこの件は嘘ついたら政府にマジギレされるから、さすがに正直に申告しているはず。大丈夫だよね!」と夫と冗談を言い合うレベルで、その後ここまで拡大するとは予想していませんでした。

写真1-1
「感染のため隔離」と貼り紙された住居

続々と緊急帰国する帯同家族達

1月21日、娘の通う幼稚園から、「もうすぐ新年!健康には気を付けて。予定通り2月3日休み明けに会いましょう」と、まだお祝い気分の一斉メール。
しかし武漢が閉鎖された1月23日、中国政府は本気だ、と緊張感が走りました。
実は、夫は北京で、私は上海で2003年のSARSを経験しています。「あの時となんだか似ていて、嫌な感じがする」……我々の共通認識でした。当時、北京がほぼ封鎖され、北京から上海に来た同級生達が1カ月隔離されたこともありました。
26日には「広州政府の決定により、幼稚園は2月17日まではお休みにします」と決定通知。27~28日頃には広州日本人学校も休暇延長を発表。

日本人学校の春節休みは1週間のため、広州に留まる家庭がほとんどでした。ただ、娘の通うローカルインターは2週間休みがあり、私達は結果的に帰国することになりました。この決定と前後して、日本人学校の生徒をもつ家庭が緊急帰国を始め、日本人家族の出国ラッシュが始まりました。

この頃には、食料や日用品などの買い占めがピークを迎え、スーパーの棚が空っぽだという写真がSNSにアップされていました。もちろんマスクは早めに売り切れ。もともとマスクをする習慣があまりない中国では、マスクの店頭在庫自体が少なかったようです。広州では、食品買い占めはそれほどひどくならず、数日で回復しました。

写真1-2
買い占めが行われた後

空港での検疫、機内での除菌……乳幼児連れは特に大変

春節休みでパパも一緒にという方もいましたが、一番大変な思いをされたのは、ママと乳幼児だけで帰国された方々です。混み合う空港、ただでさえ乳幼児連れでは気を遣う機内。床に座り込み、手指をぺろぺろなめる2歳児・・・。感染防止のために、ベビーカーにレインカバーをかぶせて空港で過ごした親子も。

検疫体制が日々変わるため、激混みを経験された方もいれば、日によってはガラガラだったという証言もあります。とにかく、機内では常にマスク、リモコンやテーブルを消毒しまくり、人混みを避けるため最後まで待って降機するなど注意されたそうです。
中国の航空会社の場合、感染防止でイヤホンが使えない、物資不足のため機内食はパン、バナナ、水のみという便もちらほらありました。
ちなみに機内は閉鎖空間ではありますが、ボーイング767では5分に1回は完全換気されているそうです。

さらに大変だったのは、休み中に、フィリピンやマレーシアなど南国に出かけ、広州への帰国便がキャンセルになり、そのまま日本に直帰したという人達です。欧州便などもキャンセルが続きました。「貴重品も何も持たず、Tシャツにサンダルで厳寒の成田に到着してしまった……」と嘆きが聞かれました。

そして、私も含め多くの人達が、「2週間後には戻れるから」と、とるものもとりあえず日本に帰国したのです。繰り返される日常がいかに貴重なものか、いま身に染みています。「冷蔵庫に入れっぱなしの人参、発芽してるかも」など、本当はもっと心配することがあるのに、どうでもよいことばかりが思い出されます。寂しくなるので、友達や幼稚園のことはなるべく考えないようにしているのかもしれません。

写真1-3
中国出国時、検疫に並ぶ人達

マスクをしないと連れ去られる?

時を同じくして、「マスク罰則規定」が公布されました。ショッピングモール、タクシーを含む公共交通機関など自宅以外のすべての場所でマスク着用義務が生じました。最初は、半信半疑でしたが、実際に、「マスクをしていない人が、バスから連れ出されていた」という目撃証言もあり、公園でさえ皆マスクをしています。

SARSの時も感じましたが、共産党のパワーは強大で、かつ強制力があります。党が本気でやると決めたら、国民(今回は外国人も含む)は徹底して守らなくてはなりません。

帰国してからも、ひと苦労

会社の方針次第では、許可なく再渡航禁止。学校開始も、政府の指示により3月まで延長。いつ中国に戻れるかわからず、子どもと実家に居候。元気で暇を持て余す子どもを連れて、老いた両親の世話になるというのは、お互いに気を遣うものです。自宅を貸し出している方も多く、自分の家に戻れる人は案外少ないようです。

そして、帰国が長引くと学校をどうするかという問題に直面します。帰国後14日間はマスクをしてなるべく自宅にいるという方が多く、皆さんとても気をつけています。ただ、気になる話もいくつかきいています。

小学校に「体験入学」(一時帰国中はこう呼びます)を問い合わせたところ、「いじめや保護者からの抗議があると予想されますが、その覚悟はありますか?」と言われた方。私立幼稚園に問い合わせて定員が空いているのでぜひ、と言われたが中国にいたと言うと、突然見学を断られ、「中国出国時には感染者の出ていない地域からで、帰国後1カ月以上過ぎています」と訴えても、最後は「見学は塀の外から自分でしてください」と言われショックを受けている方も。

文部省は、中国から帰国した子ども達に関する通達の中で「14日経過観察後は、速やかに就学させること。新型コロナウィルスを理由とした偏見を生じさせないこと」と明示しています。

先の見えない居候生活。3月は卒業や本帰国が多く、このまま挨拶もせずに友達と別れるかもという寂しさ。緊急帰国の疲れや心の傷。すでに父親だけは仕事のため、中国に戻り、家族がいつ再会できるかわからない家庭も多いです。

未知の部分が多い感染症なので、不安やマスク買い占めなどパニックにつながりかねないということも理解できますが、すでに科学的にある程度立証されている事柄や、国が方針を出している事柄に関しては、必要以上に過敏になることはないと思います。恐れすぎては経済活動も日常も止まってしまうので、大切なのは「正しく恐れる」です。SARSの経験や今回の出来事を通して、一番の難関は「人間の心理」だと改めて感じました。

SARSと新型コロナウィルスを経験して考えたこと

今後も、広範囲の感染症流行(パンデミック)はどの地域でも起こりうることです。残念ながら移動手段の利便性を高めた結果、各地に素早く伝播することとなってしまいました。これは人類が自らの発展と引き換えに、受け止めなければならないリスクのひとつです。

今回はたまたま武漢が発生地になりましたが、人類は新たなパンドラの箱を開けてしまったのだと私は考えています。避けられないものをどのように受け止め、乗り越えるか。人類の智慧が問われる事象として、引き続き見守りたいです。今回の経験や教訓をきっと次回に活かせると信じて。

岡本 聡子

岡本 聡子 (おかもと・さとこ)経営学修士

2003~05年上海にMBA(経営学修士)留学。その経験をもとに『中国のビジネスリーダーの価値観を探る』(株式会社アルク『上海のMBAで出会った中国の若きエリートたちの素顔』を加筆・改題)を執筆。2018年より、広州へ駐在帯同中。5歳女児の母。防災士としてNPO活動も行う。facebook.com/okamotosatokochina

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