連載:駐在員の妻は見た!中国の教育事情 中国で、子どもの学校をどうやって選んだか
2018年より中国・広州に滞在中の5歳児ママです。独身時代は上海で暮らしたことがありますが、現地で子育てしてみると驚きと発見の連続。(新型コロナウィルスによる退避のため、一時帰国中)
第21回 中国で、子どもの学校をどうやって選んだか?
現地の学校情報が少ないため、不安になった
初めての子連れ海外生活で戸惑うことは多々ありますが、最も頭を悩ませるのが、子どもの教育。
娘の場合、幼稚園年少で広州に引っ越しました。下見なしで幼稚園を選ぶことになり、不安でいっぱい。中国の現地校に行かせるのは語学的にも難しいので、日本人学校の幼稚園に行かせるつもりでした。
懸命に現地情報を探すうちに、知り合いから英語で授業を行う幼稚園をすすめられました。学費は高額でしたが会社からいくらか補助が出ることが分かり、夫はその幼稚園に大変乗り気な様子。一方、私は「幼児期は母国語が大切」と考えていたため、英語の幼稚園を手放しで喜べず……。迷った末、たどり着いた我が家の選択は……?
今回は、その顛末についてお話ししたいと思います。
候補となる学校は4種類
そもそも中国にはどのような幼稚園(学校)があるのでしょうか。調べてみると、主に以下の4種類があることがわかりました。学校によって、公用語、受け入れ国籍の制限、学費などが異なります。
現地公立校を除き、毎年学費が10~20%も上昇しているため、学費は悩みの種です。
①インターナショナルスクール(いわゆるインターナショナルスクール)
英語や、フランス語などを公用語とする学校。欧米系を指すことが多い。学費は最も高い。中国国籍は受け入れ対象外の場合が多い。教育システムは、アメリカ式、イギリス式、フランス式、国際バカロレア方式*など。卒業時に得られる資格は、各校により異なる。
② ローカルインター(主に中国人のためのインターナショナルスクール)
生徒の半分以上は中国人。学費はインターナショナルスクールに比べ割安。英語が公用語だが、ほとんどが中国人なので休み時間は中国語。最近は、中国国籍の入学者数を制限しているとも聞く。
③ 日本人学校(日本人による日本人のための学校)
日本国籍の子ども達を対象にし、日本と同じ教科書やカリキュラムで教育を行う。学費は上記2つのカテゴリーよりは安いけど、幼稚園は少ない。高校がないため、生徒たちは帰国・留学するか、インターナショナルスクールなどに進学する。
④ 現地校(中国人による中国人のための学校)
公立校。中国語のみ。入学には、戸籍、住所などの条件がある。大学付属の私学もある。
ここまで調べて、冒頭の、知人がすすめてくれた幼稚園は、ローカルインターというカテゴリーだとわかってきました。
駐在員の場合、主に日本人学校か、ローカルインターを選ぶ
学校選びの基準は、学費(会社がどこまで補助を出してくれるかも含め)、言語の問題、教育方針など、各家庭によってさまざま。
上記①の本格的なインターナショナルスクールは、学費が高く、定員や国籍割り当てが存在し、入りづらい印象。企業の補助金がかなり期待できる、インターナショナルスクールに対するこだわりがあるなど、ごく限られた人の選択肢かもしれません。
現地校という選択肢もありますが、手続き、言語の問題で、選択する家庭はごくわずかです。
このような背景により、多くの家庭が、日本人学校、またはローカルインターを選びます。ローカルインターであっても学費はそれなりの金額になるため、幼稚園はがんばってローカルインター、小学校は日本人学校という家庭も多いです。
駐在員の場合、日本人学校以外を選ぶ場合は、企業が日本人学校の学費上限まで補助し、超過部分を社員自身が支払って通わせるというケースが多いようです。ちなみに、日本人学校も日本国内の私学並み学費レベルであり、企業が補助を出す場合がほとんどです。
選択の結果……
わが家の場合、学費負担、空き状況、通学時間などを考慮して、結局ローカルインターを選択。娘は、最初は英語での授業に戸惑っていたものの、クラスにすぐとけ込み、今では簡単な英語の文章で話し、意思疎通できるようになりました。
もっと英語を話せるようになるかもと密かに期待していたのですが、「先生の話す内容は理解できるけれど、自分で文章を組み立てて話すまでにはもう少し」というレベルです。
クラスに日本人の子どもがいて一緒に遊ぶので、結局のところ日本語タイムが多かったからだと思います。(転入した時点で、全校生徒の2割近くを日本人が占めていました)
日本に一時帰国すると、「日本語忘れちゃったでしょう?」「英語も中国語もペラペラ!?」とよく言われますが、それは日本人が一人しかいないような、へき地の現地校に入った場合です。さらに、両親ともに日本人なので、家ではすべて日本語ですし。
実は以前、家でも英語や中国語で話そうと試みたことがありましたが、娘に拒否されました。当たり前のことなのですが、娘は幼稚園ではよく分からない英語で頑張っているわけで、家では日本語を話したいのです。反省しました。このように私達も、日々試行錯誤です。
また、語学面だけではなく、日本人学校とローカルインターは、教育方針や雰囲気が大きく異なります。例えば、学校では「整列、手洗い励行」など基本的なマナーやルールは徹底しているのですが「給食は好き嫌いOK、食べ残しは自分でゴミ箱に捨てる」という点は、私には受け入れがたかったです。おやつも多すぎます。こんなことは日常茶飯事、やはり異文化に暮らしているのだと実感します。
(第3回参照:https://hanakomama.jp/column/chinese-education/79122/)
娘は友達と一緒に過ごす幼稚園生活が楽しいようで、行きたくないと言ったことは一度しかありません。「中国語で何を言っているかわからない。私が使っているものを、貸してって言わずに、ぐいって取るからいやだ」と落ち込んだ時でした。これも、やがては英語で意思疎通できるようになり解決しました。
私も、ママ友の行動力に刺激を受けた
言いたいことを、言いたいときにすぐ口に出す子どもや親達。振り回されることも多々ありますが、「やってみよう」「だめなら、変えよう」という中国人の行動力に圧倒されます。学校とも対等に交渉します。でも、案外繊細な気遣いをしてくれることもあるので、そういうところにほろりとします。
私も、中国をはじめとするいろんな国の保護者と接し、大いに刺激を受けました。影響を受け、自分も生き生きしているように感じました。
海外に出ると日本の良さがよくわかるのですが、その反面、私は日本で息苦しさを感じることもありました。こんな私には、ローカルインターの幼稚園は合っています。
さて、娘には……? コロナで一時帰国中の今、彼女は日本国内の幼稚園に短期で通っていますので、一段落したら答えを聞いてみることにします。
*国際バカロレア(IB)方式
国際バカロレア機構(本部ジュネーブ)が提供する国際的な教育プログラム。
国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)を与え、大学進学へのルートを確保することを目的として設置。認定校では共通カリキュラム、世界共通の国際バカロレア試験を経て、国際バカロレア資格を得られる。2018年4月現在、世界140以上の国・地域、5,119校において実施。
目指す人材像などは、文部科学省IB教育推進コンソーシアムを参照。
(この記事は、2020年7月27日現在の情報を元にしています)