連載:駐在員の妻は見た!中国の教育事情 中国の競争社会は、子どもの習い事にも影響を与えている
2018年より中国・広州に滞在中の5歳児ママです。独身時代は上海で暮らしたことがありますが、現地で子育てしてみると驚きと発見の連続。(新型コロナウィルスによる退避のため、一時帰国中)
中国で子育てをしてみて感じたのは、中国人の教育熱。ある程度は想像していましたが、習い事の数と真剣さはすごいです。英語で教育を行う幼稚園ですので、特に教育熱心な親が集まるためかもしれませんが……。
第23回 中国の競争社会は、子どもの習い事にも影響を与えている
習い事は多岐にわたる
中国では幼稚園児でも、放課後は習い事がたくさん組まれています。英語、ピアノ、バレエ、などが人気の習い事で、そのほかに数的・論理能力、プログラミング、サッカー、少林寺、水泳など多岐にわたります。
娘の幼稚園では、アフタースクール(校内で行う、放課後の習い事)があります。だいたい1回(1時間)200元~450元(3000円~7000円弱)。料理、歌、地理、テニス、サッカー、空手、実験、プログラミング、バレエ、図画工作、モデルクラスなどです。
主に幼稚園の先生が行うものと、外部団体が行うクラスがあります。1時間3000~7000円と、けっこう高額です。昨年度は、英国式ミュージカルクラスが最も高いクラスでした。内容は、英語で歌い、簡単な振りを覚えて、最後は舞台を借りて発表会。ちなみに、サッカーは南米の方が先生。授業は英語です。
私には割高に思えてずいぶん迷いましたが、娘は1時間3000円の歌のクラスを10回受講しました。本人が歌大好き、かつ、その音楽の先生のことが大好きだからです。そして現在、娘は、ピアノやダンス、音楽を楽しむ子になりました。うまくならなくていいです。つらい時期や、知らない土地に行ったとき、音楽が彼女の力になり、人とつながるきっかけになれば、と思います。コロナによる一時退避や休校期間中、心からこのように感じました。
でも、こういう考え方は中国人ママには「甘い」と映るようです。
習い事に真剣な理由は、受験で差をつけるため?
習い事に真剣な理由は、中国の競争社会にあるようです。
ずばり、入試に有利だから。例えば、ピアノでは「級」を重視するそうです。詳しく聞くと、ピアノの級には「アメリカ式」「イギリス式」があるらしく、親同士はどちらがよいかを議論していました。
「中国は、日本人には理解できないほど競争が激しい社会。小学校や中学校の入試で、同じ成績、同じコネの子がいれば、他にアピールできることがないと。せっかくピアノやバレエを習うなら、願書に何級と書いてあるほうが受かりやすいはず」との意見も。
中国では、入学金や月謝という概念はなく、習い事は回数チケット制。バレエ50回分チケットや100回チケットを購入して熱心に通う親子がいて驚きました。ピアノにしても、幼稚園や小学生でコンクールを目指す特別料金クラスをよく目にします。皆どうしてこんなに真剣なの? そんなに音楽家にしたいの? と最初は不思議に思いましたが、これも「コンクールで入賞すれば、入試に有利」という背景があるのかもしれません。
競争社会の厳しさが、子どもの生活にまで影響を及ぼしています。中国では、好きだから、楽しいから、だけでは習い事を語れません。
(この記事は、2020年8月23日現在の情報を元にしています)