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ママのためのカウンセリングルーム・70子どもが犬にかまれてしまった!飼い主に賠償義務はあるの?【弁護士・宮地先生に聞きました】

2019.02.06

犬の飼い主には「相当の注意」を尽くす義務があります

宮地先生アイキャッチ

お子さんがご近所の飼い犬にかまれてしまったとのこと、大変でしたね。
動物愛護法は、動物の飼い主は、動物の種類や習性等に応じて、動物の健康と安全を確保するように努め、動物が人の生命等に害を加えたり、迷惑を及ぼしたりすることのないように努めなければならないと定めています。

そして、民法718条1項では、動物の飼い主等は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負うとして、ペットの飼い主が不法行為責任を負うことが定められています。もっとも、飼い主が「相当の注意」をもってペットを管理していたときは、例外的に飼い主の責任が否定されるとされています(民法718条1項但書)。

今回、ご近所の車庫につながれていた犬を触っていたところ、お子さんがかまれてしまったということです。
その場合も、原則として、犬の飼い主は損害賠償責任を負います。ただし、飼い主が、犬種や犬の性質等にしたがって、相当の注意をもって犬を飼っていた(管理していた)ことを証明できた場合には、損害賠償責任を免れることになります。

最高裁判所昭和37年2月1日判決は、相当の注意について、通常払うべき程度の注意義務を意味し、異常な事態に対処すべき程度の注意義務まで課したものでないとしています。

具体的には、動物の種類、雌雄、動物の性質、動物が加害した前歴、占有者又は保管者のその職業、保管に対する熟練度、保管の態様(放飼か係留か、狂犬病注射をしたか等)、被害者側の状況(警戒心の有無、被害誘発の有無等)の事実をもとに、個別具体的に注意義務の有無・程度を判断することになります。

今回、みどりさんのお子さんがかまれた犬は、どのような犬でしたか。

体長や体高の大きな大型犬であったり、攻撃的な性質をもっていたり、以前にも人をかんだことがあったりした場合には、飼い主は、より注意をして、管理しなくてはいけないことになります。
犬は、通行する人の目に留まるような車庫につながれていたようです。遮蔽などもなく自由に立ち入ることができるところにつながれていたのであれば、通りがかった人が犬に接触することが想定されます。実際に、みどりさん以外にも、通りがかりの人が犬をかまっていたということです。

通行人が容易に接触できるような場所に犬をつないでおけば、犬好きの人が撫でようと近づいたところ犬の機嫌が悪くてかんでしまうとか、心無い人が犬にいたずらをして怒らせてかんでしまうとか、さまざまな要因から咬傷事故につながることが考えられます。そのような場所につないでいたのでは、通常払うべき程度の注意義務を尽くしてその犬を飼っていた(管理していた)とは言えないでしょう。

「かむので注意」と張り紙がされていたということですが、張り紙をよめない幼い子が近づくこともありますから、それだけで、飼い主が相当の注意をしていたものとして責任を免れることにはならないでしょう。

小学校5年生の女の子が他人の家につながれていた中型の雌犬に口部をかまれて傷害を負い、後遺障害が残ったとして、飼主に損害賠償を請求した件の裁判例があります。飼い主は、「犬にさわらないでください」という看板を設置して、相当な注意をもって飼犬管理していたから責任はないと主張しました。裁判所は、人をかむ癖を有する犬の管理方法としては、より注意して管理することが求められ、被告敷地内で飼っていることや看板を設置して注意喚起をすることだけでは足りず、人が犬に近づかないような措置まで講ずる必要があるとして、女の子に対する損害賠償責任を認めました。

損害賠償として請求できるものは、犬にかまれて受診した病院の治療費、薬代、病院に行った交通費、慰謝料等になります。

飼い主が「相当の注意」を尽くしていなかったとして損害賠償責任を負う場合でも、被害者側に落ち度がある場合には、過失相殺により、飼い主の責任が軽減されることがあります(民法722条2項)。
みどりさんのお子さんは4歳で、その年齢では、犬にかまれるという危険性を理解できなかったといえます。危険性の有無を判断できないお子さん自身に過失はないことになりますが、お子さんの監督者であるみどりさんには過失があるとして、被害者「側」の過失として過失相殺がなされ、飼い主の責任が軽減されることはあります。

今回、「かむので注意」と張り紙がされていたことから、みどりさんは、かむので注意が必要な犬であることをわかったにもかかわらず、子どもを近づけてしまったことが、被害者「側」の過失として過失相殺され、飼い主の責任が軽減されることはあるでしょう。

先程の裁判例では、被害者の小学校5年生の女の子は、かみ癖のある飼犬であることを知りながら近づいたことについて、被害者に50パーセントの過失があったと判断し、飼い主の責任の軽減が認められました。

犬の咬傷事故は、傷が小さくても、破傷風、パスツレラ症などの感染症にかかることもありますし、死亡等の重篤な結果を生じることもあります。今回は、大事に至らず幸いでしたが、すぐにお子さんを外科や皮膚科などの病院に連れていって傷口を診てもらうことが大切です。

また、みどりさんが、飼い主に咬傷事故について伝えたことも的確でした。あとで飼い主に「うちの犬はかんでいない」などと言われないために、かまれたその場で伝えた方が、なおよかったですね。

今回、飼い主は、犬に子どもを近づかせたみどりさんを責めたようですが、本来、かんだ犬の飼い主として義務を果たさなくてはいけません。
飼い主は、犬が人をかんでしまった場合、被害者の適切な応急処置をし、さらに事故を起こさないような措置をして、24時間以内に保健所に届けなくてはいけませんし、事故発生の時から48時間以内に、その犬の狂犬病の疑いの有無について獣医師に検診させなければいけないことが、条例などで定められています。

保健所への届出は、飼い主のみならず、かまれた人、かみ傷を治療した医師も報告を義務付けられています。忘れずに届け出るようにしましょう。

miyachisensei

宮地理子(みやち りこ)さん・弁護士
中央大学法科大学院修了。2010年11月から3年半、沖縄県の石垣島にある八重山ひまわり基金法律事務所で所長弁護士を務める。現在は東京四谷の弁護士法人アルタイル法律事務所で医療事件、家事事件、子どもをめぐる問題などに取り組んでいる。
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飼い主は自分の飼い犬に対してきちんと注意を払う必要があるのですね。自分が逆の立場になることもありそうなので、気をつけたいですね。

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