
連載:発達障害児ママのドタバタ子育て奮闘記 痛覚の鈍いASDっ子でも予防接種は修羅場です。
次女のアタはASD、いわゆる発達障害児。最初はその事実を受け入れられませんでしたが、そのうち、これって普通の子より個性が強すぎるだけなのかも、という心境に。こう言っては不謹慎ですが、障害児を育てるというのは、案外面白いのです。現在、夫は海外に単身赴任中。大学生の長女と私、そしてアタの3人のドタバタライフを書き綴っていきたいと思います。
第25回 痛覚の鈍いASDっ子でも予防接種は修羅場です。
予防接種で大暴れ!
インフルエンザの季節到来。コロナの影響で今年は特に接種が呼び掛けられていますが、小さい子連れて行くのは気が重いですよね……。
アタは、というと。幼稚園の年長くらいまでは、なーんにも言わずにプスプス注射されるがままになっていました。おとなしくて助かるわ〜なんて思っていたんですが。実はこれ、痛覚が極端に鈍かったせいもあるみたいです。
豹変したのは、恐らくその年のインフルエンザ予防接種。いつも通っている小児科で、先生が注射器を用意していざ打とうとしたその時!
「イヤーーーーー‼︎(ドカッ‼︎)」
なんとアタさん、先生のミゾオチにいきなりキック‼︎ 先生もビックリで、注射器持ったまま後ろに飛びすさりました。
「す、すみません‼︎」
慌てて謝ったものの、アタは泣き喚きながら全身ビチビチ暴れて興奮状態。こりゃ今日は無理だわと諦めかけると、体格の良いベテラン看護師さん登場。
「大丈夫ですよ。」 にっこり笑って……。ドスン!
診察用の椅子からズリ落ちそうになっているアタの上から覆い被さるように、え? 座った⁉︎ さらにもう1人の看護師さんがアタの頭をぎゅっと抱え込み、私からはアタの腕しか見えない状態に。こ、これはレスリング⁈
「ンムーッ!」 最後の抵抗で腕をピコピコ動かすアタ。
「お母さん! 腕押さえて!」
「は、はいっ!」
看護師さんの迫力に押されて腕を固定すると、すかさず先生がプスリ。一瞬ビクッと筋肉が震え、だら〜ん。アタの腕から力が抜けるのがわかりました。
「はい、がんばったね。ご褒美のシールだよ」
看護師さんの呪縛から逃れて、汗と涙でぐちゃぐちゃのアタでしたが、褒められてシールもらって、わけがわからなくなったようで、
「ア、アリガトゴザイマシ、タ…?」
たどたどしくお礼を言って診察室を出ました。
帰り道では、ひたすら「えらい?えらい?」と聞いてくるので「偉かったね〜!」褒めて手をギューっと握ってやりました。何だか悪の手先になったみたいで申し訳ない気分でした。
でも、「痛かった?」と聞くと「ん〜?」。よく覚えてないようで……。
注射の痛みではなく、緊張した雰囲気が怖くて嫌だったみたいです。つまり、状況が読めるようになったってこと? これは喜ぶべきかなぁと思いつつ、インフルエンザの予防接種はもう1回あるんだよと、さすがに言えない母でした。
「感覚鈍麻」=感覚が鈍いのは障害のせい? あとで考えたらあるあるでした……
注射を痛がらないのが、発達障害の特性の1つだと気づいたのは、もっと後になってから。音や光などに対する発達障害者の「感覚過敏」はメディアでもよく取り上げられますが、逆の「感覚鈍麻」があることはご存知でしょうか?
もしやと思って観察してみると、アタは
・暑い寒いを判断して服を着られない。
・足の青あざがいつできたのかわからない。
・髪の毛を抜いてしまう。
・高い所が大好き。
・体調が悪くてもギリギリまで気づけない。
他にも色々思い当たる節がありました。感覚鈍麻の子は、無意識に刺激を求めて自傷したり、高い所に登ってしまうそうです。治すというよりは、別の刺激を与えるなど、自分の感覚の程度を意識して生活することが大事とのこと。場合によっては命にも関わるので、感覚鈍麻の傾向がある子は注意が必要です。
アタの場合、特別気にするほどではないんですが、天気予報を見て服を選ばせたり、できるだけ長ズボンを履かせたり、ルールを作って対策しています。髪の毛については、さすがにハゲると困るので、
「まだアタちゃんの頭に住んでいたかったのに」
抜かれる毛の気持ちを涙ながらに語ったら、
「ごめん……。」
次からは「毛!」と言うだけで慌てて手を離すようになりました(笑)。
さて、予防接種。その後も色々やらかしてくれましたが、今ではサッと自分から腕を差し出すアタ。彼女にとってはたいして痛くないのと、騒がない方が褒められると気づいたようです。
先生も「大人になったねぇ」と、しみじみ笑います。
「私、成長してる?」 ドヤ顔で聞いてくるアタさんでした。
