連載:発達障害児ママのドタバタ子育て奮闘記 憧れの電車通学。1人登下校は自立への第1歩!
次女のアタはASD、いわゆる発達障害児。最初はその事実を受け入れられませんでしたが、そのうち、これって普通の子より個性が強すぎるだけなのかも、という心境に。こう言っては不謹慎ですが、障害児を育てるというのは、案外面白いのです。現在、夫は海外に単身赴任中。大学生の長女と私、そしてアタの3人のドタバタライフを書き綴っていきたいと思います。
第22回 憧れの電車通学。1人登下校は自立への第1歩!
さて。アタも、今や中学1年生。そろそろ何でも1人でやりたいお年頃です。元々口出しを嫌がる子でしたが、最近はさらに「言わないで!」が口癖に。思春期ってやつでしょうかねぇ。
そんな中、コロナで出鼻を挫かれたもののついに念願の電車通学スタート。
「今日は新型車両だ!」鉄子アタ。朝から目がキラキラです。
1学期だけ送迎するつもりでしたが、今年はあっという間に夏休み突入。2学期が始まってもなんとな〜く一緒に行っているうちに、あれ、これいつまで?
今日は1人で行ってみる?と聞くと、「……ちょっと寂しい」
そんな時だけ可愛いこと言われると、つい甘くなっちゃいます。でも、朝の送りはともかく下校時刻がバラバラな毎日の迎えは負担大。そこで、1人で帰る距離を少しずつ伸ばす練習を始めました。
最初は学校の最寄駅で待ち合わせ
↓
乗り換え駅の改札
↓
自宅の最寄駅
↓
最後は自宅! 通常の下校は、すんなりクリア!
次は放課後デイサービスまでの移動です。全く別路線なので、こちらも少しずつ距離を伸ばし、ついに完全お1人様お試しの日がやってきました。
放課後デイサービスまで初の1人移動。思わぬハプニングに冷や汗!
定期、PASMO、スマホ、GPS、着替え、おやつと消毒用ハンドジェル。担任の先生には、授業が終わったらすぐ教室から出すようお願いし、さあ、これで準備万端!
「何かあったらすぐ電話してね」
「オッケー!」
いい笑顔でした。
さて17:00過ぎ。GPSの位置情報では放課後デイサービス最寄駅まで無事移動完了。よっしゃ! と思ったら、突然スマホが鳴り出しました。
「ママ大変! PASMOにお金足りない! 改札出られません!」
「え⁉︎」
思わぬ落とし穴でした。いつも定期だから、チャージ額見てなかった! すぐ行くからそこで待っててと通話を切り、自転車で出ようとしたら、ザーッ。
突然の大雨! ウソでしょ〜! 歩いたら30分近くかかる駅。タクシー? すぐ捕まる? アワアワしていたら、長女が言いました。
「ねえ、駅員さんにお金借りられない?」
それだ! 慌ててアタに電話。10ベル以上鳴らしてようやく出たアタに、駅員さんにスマホ渡してと言うと、
「なんで?」 超不服そうな声。
あ、自分のスマホ他人に触られるのが嫌なのね……。そこで、駅員さんにお金借りられるかママから聞きたいと言うと、しばらく沈黙の後、
「わかった」。…ところが。
「あのっ! PASMOにお金が足りないんです!」
突然自分で駅員さんに説明を始めました。ママに代わって! と叫んでも全然応答せず。こ、これは、ワザと無視?
「じゃあ確認するのでPASMO見せてもらえますか?……確かに残金19円。150足りないですね」
「えっと、出られないんです!」
「この駅で降りるんですか?」
「そうです、お金が無いんです(偉そう)!」
電話の向こうで、アタと駅員さんの会話が聞こえます。お〜い、頼むから代わってと叫ぶ私の声は届かず、駅員さんの声が聞こえました。
「分かりました。じゃあ、今回は特別通っていいですよ。次から気を付けてね」
そこでようやくアタがスマホに返事しました。
「通っていいって!」
「ママも話すから代わって‼︎」
アタのたどたどしい説明にも根気よく対応してくださった駅員さん。お金を返しに行きますと言うと、「今回はけっこうですよ」と最後まで優しく穏やかでした。本当にありがたかったです。
必要なのはちょっとずつの引き算。手を離せないのは案外の親の方かも
いやはや、母のミスで大変な思いをさせてしまい、アタにはあとで平謝りでした。これで嫌にならないか心配しましたが、「自分で交渉できた!」が成功体験になって、アタは逆に自信満々。バッグに障害者マークの赤い札を付けていたおかげもあると思います。でも、自分で何とかしなきゃと、1番苦手なことに挑戦したアタ。
身も心もちゃんと大きくなっているんですね〜。
「自分しかいない」と思えば、案外もっとできるのかもしれません。いつまでも「できない」と思い込んで子離れできないのは、実は親の方なのかも……。 そろそろ引き算を始める時期なんだなと実感しつつ、ちょっぴり寂しさも感じてしまうのでした。