連載:気になる! 教育ニュース 脱5K!進化する学校トイレの現状は?【気になる! 教育ニュース】
第34回 脱5K!進化する学校トイレの現状は?
洋式、男子トイレの個室化も
学校トイレの「5K」ってご存じですか?
正解は、「暗い」「汚い」「臭い」「怖い」「壊れている」です。
昭和46年生まれの私にとって、学校トイレはまさにこれ。けれど平成生まれの息子たちの世代でも、たびたびこんな声が聞こえてきます。
「学校のトイレは汚いし、からかわれるから排便は家まで我慢する」
そんなわけで、11月28日・読売新聞掲載の「今風・学校トイレ」という記事にはとても驚きました。
「公立の小中学校のトイレが変わり始めている。洋式化が進み、男子トイレの個室化や、男女共用のトイレを設ける学校もある」
本当!? 確かに紹介されている学校トイレはとてもきれい。「5K」の影は見当たりません。
5Kトイレが子どもの心身に与える悪影響とは?
文部科学省の調査によれば、2020年9月現在、全国の公立小中学校での洋式トイレの割合は57%。16年の前回調査と比し、実に13、7%も増加しています。
現在、多くの学校が抱える施設の老朽化問題。トイレも例外ではないのですが、資金面の問題もあり、校舎の耐震化、教室のエアコン設置などの整備に先を譲ってきました。が、ここにきてようやく、トイレ整備に順番が回ってきた、という面があるようです。
実は、学校の5Kトイレには耐震化やエアコン設置に劣らない大きな問題があります。
・清潔な家庭のトイレとのギャップが大きい→安心してトイレを使えず便秘の一因にも
・特に男子は、個室に入るとからかわれる→いじめや不登校につながる
・和式トイレは衛生的に問題→和式トイレは汚れやすく雑菌が繁殖しやすい
・災害時などの対応が必要→避難所でもある学校は多くの人がトイレを利用する
・性的少数者への配慮が必要→トランスジェンダーの子どもは男女別のトイレに入ることに違和感があることも
など。
文科省は汚れにくく衛生面で優れる洋式トイレを推奨しますが、未だに4割もの和式トイレが学校には残っています。これは、駅や公園などの和式トイレの使い方を覚える必要があるから、だそう。確かに、息子が小さかった頃、公園の汚れた和式トイレでは排便できずにとても困った覚えが……。「お母さん! ここはダメ!」と叫ぶ息子の泣き顔は今では笑い話。小学校入学時にも「和式トイレの使い方」を教える学校が多いよう。自動洗浄に慣れた子どもは、使用後に流す習慣がない、という話を聞いたこともあります。
ホッと一息 トイレには大きな可能性がある!
大手トイレメーカーで作る「学校のトイレ研究会」のHPに掲載される様々な学校トイレ。
その中の一つ、「みんなのトイレ」と呼ばれる愛知県豊川市立長澤小学校のトイレには、女子用、男子用、男女共用、男女共用で車いすでも利用可・男子用小便器、計5つの個室があるのです!写真で見るととてもきれいで、家庭のように気持ちよく落ち着いて利用できる環境です。
以前見たテレビで、男性アイドルが「トイレが大好きで何時間でもいられる」と言っていましたが、一人になりたいとき、落ち着いて考えたいときなどトイレに入る、という人は案外多いもの。狭い空間であるトイレは人の目からも離れ、安心感や解放感を味わえる場所。「パーソナルスペース」というのだそうです。
単に排泄する場所、というだけではなく、トイレは健康面や精神面にも大きな影響を持ち、環境や災害時にも大きな威力を発揮する、私たちが生きていく上で非常に重要な場所です。前述の長澤小学校のようなトイレはまだまだ少数派のようですが、子どもたちにとって学校のトイレがほっと安心できる、そんな場所になったら。学校のトイレは私たちの想像を超えた大きな可能性を秘めた場所なのかもしれません。
「学校のトイレ研究会」のHPは、様々な学校トイレを見るのも楽しく、掲載される情報に、自分のトイレ観、が変わるかも。お勧めです!
参照
TOTO・ホームページ
https://jp.toto.com/products/public/school/needs/old_toilet.htm
11月28日・読売新聞
文部科学省・公立学校施設のトイレの状況について
https://www.mext.go.jp/content/20200926-mxt_sisetujo-000010121_05.pdf
学校のトイレ研究会HP・学校トイレ事例