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失明男性を導く少女の声 つながり続ける優しさのバトン【気になる!教育ニュース】

連載:気になる! 教育ニュース 失明男性を導く少女の声 つながり続ける優しさのバトン【気になる!教育ニュース】

大学入試改革、プログラミング、英語教育……。教育の世界がなにやら騒がしい。このコーナーでは、最近気になった教育関連のニュースをピックアップして紹介します!

第41回 失明男性を導く少女の声 つながり続ける優しさのバトン

ある朝、1人の少女の声から始まった

2月10日の読売新聞に掲載された「親切のバトン 児童つなぐ」という記事。温かさで胸が一杯になってしまいました。

簡単に内容をご紹介しましょう。

進行性の目の病気を患った和歌山市役所職員の山崎浩敬さん。バイクによる通勤ができなくなり、いったん休職。訓練施設に通ってから復職し、初めは家族に付き添われて通勤していましたが、2008年からは1人でバス通勤を始めました。

緊張と不安でいっぱいの毎日。でも、1人で通勤を初めて1年がたったある朝、山崎さんの耳に聞こえてきたのは

「バスが来ましたよ。乗り口は右です。階段があります」という少女の声。

和歌山大付属小学校の生徒だったその少女は、3年後に卒業するまで毎日山崎さんを助けました。そして、少女が卒業すると、今度は同じ学校に通う別の少女が山崎さんを助け、その少女が卒業するとまた、別の少女が、と10年以上にわたってこの「優しさのバトン」が受け継がれてきた、というのです。

少女たちとの再会

山崎さんは昨年、全国信用組合中央協会が主催する「小さな助け合いの物語賞」という作文コンクールに、「あたたかな小さい手のリレー」という題名で自分の体験を綴りました。感謝の思いに溢れた作品は見事、大賞に選ばれたのです。

その授賞式には、この8年間にわたり山崎さんをサポートした小2~中2の4人も出席。目が見えない山崎さんは、それまで自分を助けてくれている少女が誰なのか、何人いるのか、などの情報を正確に把握することはできませんでした。

最初に助けてくれた少女が3年間山崎さんを支え、何の面識も引継ぎもないまま、次の少女が自発的に山崎さんに声をかけ、いつも山崎さんを助ける少女が休みの日には、他の少女がサポートし、という事実を、その時初めて知ったのです。

「自分が思う以上の多くの支えがあったことを知り、ますます温かい気持ちになった」とは山崎さんの言葉です。

目の前に困っている人がいたら助ける、というメッセージ

ふと、ある言葉を思い出しました。次男には、脳に軽い障害を持つ幼稚園からの友人がいます。彼は、卒園後、特別支援学校に通っていますが、定期的に次男の通う学校にやってきては交流の機会を持っています。次男は、その機会をとても楽しみにしているので、彼のお母さんにそう話した時のこと。

「そう言ってもらえるのは本当に有難いけれど、私は別に深い理解を求めているわけじゃないの。ただ、何となくでも顔を覚えていてくれたら、これからこの子が1人で行動するとき、どこかで迷子になったとき、誰かが声をかけたり、道を教えてくれたりするかもしれない。それだけでいい」。

インクルーシブ教育、という言葉をよく聞くようになりました。障害のある子どもと、ない子どもが共に学ぶことで、互いの多様性を尊重できる「共生社会」の実現に貢献しようという考え方。この理念のもと、特別支援学校に通う子どもたちが地域の小中学校にも籍を持ち、授業を受けることもできるようになりました。次男の友人が、地域の学校で交流するのもその1つです。

「困っている人を助けなさい、と母に言われていたから、手助けは当然のことと思った」

2番目に山崎さんに手を差し伸べ、6年間支えた少女は、そう語ったそうです。

障害のある人の方が、障害のない人よりも、現実の生活の中で困る場面は確かに多いのでしょう。けれど、少女たちの行為が多くの人の心に届いたのは、障害のある、なし、ではなく、ただシンプルに「目の前の困っている人を助ける」という温かく、強いメッセージを持っていたからなのではないか。そんなことを感じた記事でした。

参照

読売新聞・2月10日
https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/newspaper-at-school/20210209-OYT8T50123/

「小さな助け合いの物語賞」受賞作品
https://www.shinyokumiai.or.jp/overview/about/writing11/000635.html

文部科学省・共生社会の形成に向けて
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/attach/1325884.htm

中村 亮子

中村 亮子ライター

1971年東京都出身。中央大学法学部法律学科卒。転勤族と結婚し、全国を転々と旅するような生活を送る中、偶然の出会いに導かれ、フリーライターの道へ。家族は夫と息子が二人。趣味はピアノ

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