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全国学力テストの意義って何?【気になる!教育ニュース】 

連載:気になる! 教育ニュース 全国学力テストの意義って何?【気になる!教育ニュース】 

大学入試改革、プログラミング、英語教育……。教育の世界がなにやら騒がしい。このコーナーでは、最近気になった教育関連のニュースをピックアップして紹介します!


第50回 全国学力テスト、2年ぶりの実施。でも……? 問われる存在意義

学テ」は何のため?

5月27日、小学6年生と中学3年生を対象にした全国学力・学習状況調査(全国学力テスト。以下、学テ)が行われました。昨年度は新型コロナウイルス流行の影響で中止。2年ぶりの実施です。科目は国語と算数・数学の2教科。対象となる子どもは、小6生、中3生合わせて、約200万人に上ります。

2007年度から文部科学省が実施している学テ。狙いは、子どもの学力や学習状況を把握・分析し、学校現場の指導改善と、国の施策に反映させること。学習環境などに関する質問も行われ、今回はコロナ禍の影響を調査するため、休校中の家庭学習状況なども尋ねたようです。科目は国語と算数、数学。3年に一度、理科と英語も実施。

次男が中3生の我が家では、長男から通算で4回目の学テ。ただ、実を言うと毎回残るのは「それで……?」という感想だけ。結果返却はテストから3か月もあと。息子の成績の大まかな位置づけは分かっても、順位はわからず。学校からは個票が1枚返される以外、何もなし。「あれって何であるの?」という保護者の声も少なからず。

これは「試験」ではなく「調査」なので、当然なのかもしれませんが、学テがその後の授業内容や、教育施策にどう生かされているのか、受ける側にはほとんど見えてこないのです。その割にメディアは各都道府県の順位ばかりを取り上げる。何となく釈然としない。

現行方式が内包する問題点

2018年、当時学テの平均正答率が政令指定市の中で最下位だった大阪市が、テスト結果を教員らの評価に反映させる、と表明し話題となりました(のちに撤回)。今回も、5月27日の西日本新聞が、過去問などでの事前練習に追われ、疲弊する学校現場の様子を伝えています。一方、息子たちの学校のように事前にも事後にも特段の対応がなく「成績に関係ないし、皆あまり真面目にテストを受けない」という話を耳にするような地域も。なぜこんなことが起きるのでしょう。

学テに関する国の専門家委員会の委員で、福岡教育大の川口俊明准教授は、前述の西日本新聞で「目的と手法との間のずれ」をその大きな要因としています。国が示す学テの目的は「学校現場の指導改善」と「国の政策に反映」の2つ。けれどこの2つの目的を両立させるのはなかなか難しい。現場の指導改善のためには従来のテストでも十分。一方、国の政策へ反映させるには子どもの家庭環境や学習環境など、より詳細に調べる必要がある、と。

全員受験か、対象を抽出するか。どのような理論でテストの分析や研究を行うか。

学テの評価にはおそらく細かな専門知識も必要で、安易な批判は的外れになりかねません。ただ、「学校現場の指導改善」と「国の政策に反映」という、両立しにくい目標を掲げることが、どっちつかずのわかりにくさにつながっている面があるのかもしれません。

広がりを見せる「比べないテスト」

このような中、埼玉県では、2015年から毎年さいたま市を除く県内全域で小4生から中3生の全員を対象に、独自に開発した国語や算数・数学それに英語などのテストを実施しています。目的を「学校現場の指導改善」に絞り、平均点との比較ではなく、子どもが過去の自分と比べて伸びを確認できるよう設計されている「比べないテスト」です。

子どもたちには自分の学力の伸びを図示した個票が渡されます。先生たちも、平均点より前年度から伸びた児童や生徒の割合を重視。またテストと合わせて「自己効力感」や「やりぬく力」「勤勉性」などの「非認知能力」と呼ばれる力と、学力との関係についても分析。すると「非認知能力」と学力に強い相関があることがわかり、県内の小中学校ではこの結果を授業に生かそうと試行錯誤を重ねています。

この方法は他の自治体の注目を集め、現在では福島県全域や高知県や京都府の一部などでも導入されているそうです。

今回が13回目となる学テですが、紙のテストで測れるのは学力の一面にすぎません。前回2018年の学テに関する朝日新聞の報道によれば、実施には約50億円かかっているとか。これだけの費用を投じて行われる学テが本当に子どもの役に立っているのか、どのような形態がベストなのか、たゆまぬ検証が必要ではないかと感じます。

参照

5月27日・読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/news/20210527-OYT1T50132/

文部科学省・全国的な学力調査(全国学力・学習状況調査等)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/

2019年7月31日・日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47976840Q9A730C1AC8000/

5月27日・西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/745124/

6月2日・NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210602/k10013063991000.html

2019年8月1日・朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/DA3S14122372.html

中村 亮子

中村 亮子ライター

1971年東京都出身。中央大学法学部法律学科卒。転勤族と結婚し、全国を転々と旅するような生活を送る中、偶然の出会いに導かれ、フリーライターの道へ。家族は夫と息子が二人。趣味はピアノ

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