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揺れたオリパラ学校連携観戦【気になる!教育ニュース】

連載:気になる! 教育ニュース 揺れたオリパラ学校連携観戦【気になる!教育ニュース】

大学入試改革、プログラミング、英語教育……。教育の世界がなにやら騒がしい。このコーナーでは、最近気になった教育関連のニュースをピックアップして紹介します!


第59回 揺れたオリパラ学校連携観戦 参加者約2万人 

中止や辞退が続出した学校連携観戦

9月5日に閉幕した東京パラリンピック。原則無観客で行われましたが、小中高生が会場で直接、競技を見る「学校連携観戦」は教育的な意義を重視して実施されました。

ただ、新型コロナウィルスの感染拡大を受け、参加を中止する自治体が直前まで相次ぎ、9月10日の朝日新聞によれば、東京都内での参加は新宿区、渋谷区、杉並区、八王子市の4区市。参加校は120校で、人数は9568人だったそうです。

8月中旬時点での、東京都の観戦予定者数は約13万2千人。それが、実際には大幅に減少したことになります(朝日新聞)。

また、東京五輪・パラリンピック組織委員会は、このプログラムの参加者が全国的にはオリンピックが4700人、パラリンピックは1万5330人。合わせて約2万人だったことを明らかにしました(時事通信)。

参加? 不参加? 揺れた判断

我が家の中3の息子は、このプログラムに参加しました。息子によると会場までのパスは貸し切り。基本は2人席に1人で、会話は厳禁。会場では、消毒、検温を済ませ、3席間隔で着席。拍手はするけれど、声援はなし。感染時間は1時間ほどで、希望者に対しては事前のPCR検査を実施しました。学校から参加人数の報告はありませんが、「とても半分に満たない」数だったようです。

コロナの新規感染者が全国で初めて1万人を突破したのは、オリンピック期間中の7月末。学校連携観戦プログラムにも「一般客が入れないことと矛盾」「感染リスクがある」などの声が向けられました。千葉市では、観戦した学校の引率教員2名の感染が判明し、途中でプログラムの中止を決定。東京都の教育委員会の臨時会では、教育委員5人中4人が実施の反対を表明。

プログラムへの参加を判断する現場はかなり苦慮しただろう、と想像しますが、保護者も難しい対応を迫られました。

私の周囲でも、学校に対して参加・不参加の意思を届け出る期間も、そこから実際の観戦日までの期間もとても短く、具体的な感染対策が伝えられたのも遅かったため、ゆっくり考えることができなかった、という意見が多く聞かれました。もう少し早い段階で、どの競技をどういう状態で観戦するのか、具体的に伝えられていたら、状況は少し変わっていたかもしれません。

問われる「今後」 子どもたちの思いを形に

文部科学省によると、昨年5月時点で、車椅子使用者用トイレを整備している公立小中学校は全国で65.2%。エレベーターの設置は27.1%。障害を持った生徒にとっての理想的な環境、とは言い難い状況です。

今パラリンピックのボート競技に出場した木村由選手(17)は、都立文京盲学校に通います。弱視ながら手話も使えるため、昨年度近隣の幼稚園で園児に手話を教えたのだそうです。

パラリンピックの教育効果、というけれど単に競技を観戦するだけでは一時的な感動で終わってしまいます。問題は「その後」。普段からどう関わっていくのか、環境をどう整えていくのか。今回の経験を現場にどう生かしていくのか。具体的な施策こそが重要となってくるのでしょう。

息子の学校では、実際に観戦した生徒もしなかった生徒も共に、「障害を持つ人ができないことを自分たちはできる。けれど、自分たちにできないことを彼らはできる。協力したらすごいことができるんじゃないか」と話し合ったのだそうです。

観戦するかしないか。たった1つの決断に、実に様々な考え、思い、環境などが渦巻きました。けれど、皆がそれぞれ異なる立場に立って同じ問題について考えていく。パラリンピックが掲げた「多様性」という言葉の難しさ、深さ、を感じます。

参照

9月10日・朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/DA3S15038950.html

9月6日・時事通信

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021090600684&g=spo

文部科学省・学校施設におけるバリアフリー化の状況調査

https://www.mext.go.jp/content/20201225-mxt_sisetuki-000011942_1.pdf

東京2020パラリンピック・選手名鑑

https://tokyo2020-athletes.jp/paralympic/directory/detail/RO_kimurayui/

中村 亮子

中村 亮子ライター

1971年東京都出身。中央大学法学部法律学科卒。転勤族と結婚し、全国を転々と旅するような生活を送る中、偶然の出会いに導かれ、フリーライターの道へ。家族は夫と息子が二人。趣味はピアノ

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