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【気になる!教育ニュース】学校配付のタブレットはいじめの温床?

連載:気になる! 教育ニュース 【気になる!教育ニュース】学校配付のタブレットはいじめの温床?

大学入試改革、プログラミング、英語教育……。教育の世界がなにやら騒がしい。このコーナーでは、最近気になった教育関連のニュースをピックアップして紹介します!


第61回 社会は「ネットいじめ」にどう対応すべき? 町田市小6女児自殺

学校配布のタブレット端末に悪口

昨年11月、東京都町田市で小6生の女児が同級生からのいじめを訴える遺書を残して自殺しました。女児はGIGAスクール構想により一人一台配布された端末のチャット機能に「うざい」「きもい」などの悪口を書き込まれていたことを、両親が明らかにしています(9月19日・毎日新聞)。

波紋を広げているのは、学習用に配布された端末がいじめに使用されたこと。

文部科学省は今年3月、GIGAスクール構想の実施に先立ち「他人を傷付けたり嫌な思いをさせることをネット上に書き込まない」などのチェックリストを作成。都道府県教委に通知していました

非常に痛ましい事件ですが、「一人一台配布の端末は、いじめの温床になりかねない」ということがこの事件の問題点なのでしょうか?

全員同じパスワード ずさんな運用の実態

町田市は2017年度からICT環境整備を本格的に推進。女児が通っていた小学校は市内で3校指定されたモデル校の1つでした。

ところがこの小学校では、当初、パスワードを「123456789」に統一。IDも「学校番号+入学年度+通し番号3桁」という、容易に推測しうるもので、同級生になりすましてログインして悪口を書き込んだり、ほかの子どもたちが悪口を閲覧したりすることが可能な状態でした(9月17日・朝日新聞)。あまりにずさんな学校側の運用に、驚きを禁じえません。

加えて、子ども同士が容易にチャットできる状態であったことも大きな問題でしょう。事件後の聞き取りで、同級生は、「先生が画面を見られない時に、素早く」悪口を書いていた、と答えたほか、チャットが見られないよう画面を切り替えていたなど、先生の目を盗んでチャット機能を利用していたことがわかります(9月25日・朝日新聞)。

文科省による、令和元年度の問題行動・不登校調査では、「ネットいじめ」は過去最多の約18000件。また、内閣府の調査では、令和元年度の小中高校生のネット利用率は93%に達します。匿名性・秘匿性が高いSNSは、いじめる側にとって「渡りに船」の手段。デジタルネイティブ、と評される現代の子どもたちですが、デジタル社会に生きる、ということが、自分にとってどういう意味を持つのか。その視点は薄いように感じます

つまり、問題は、「学校が端末を配布すること」ではなく、「学校配布の端末さえもいじめに使用してしまう、使用させてしまうこと」ではないでしょうか? だからこそ、情報モラルを教える教育は待ったなしの課題。学校側の適切な管理、運用体制はそれ以前の話でしょう。

デジタル社会でよりよく生きるために必要な力とは?

欧米で広がる「デジタル・シティズンシップ教育」。ネットの危険性を強調することに重点が置かれてきた、日本の従来型「情報モラル教育」と異なり、子ども自身がICTのよき使い手になるよう、自分で考えて使える力を育む教育のこと。

日本での実践事例も増えていて、例えば、埼玉県戸田市ではデジタル・シティズンシップが学べるオンライン学習プラットフォームに「DQ World」を採用。これは、「プライバシーの扱い」「デジタル共感力」などデジタル・シティズンシップに関わる8つのスキルが体系化され、子どもはゲーム感覚で楽しみながら学習していきます。

また、9月29日の朝日新聞で、モラルエデュケーターの今度珠美さんが紹介したアメリカのデジタル・シティズンシップ教育は、示唆に富みます。ネットトラブルで気分が落ち込んだ時、①自分の気持ちがはっきりするまで立ち止まる②何をしたいのか、何をしてほしいのか考える③尋ねる。周りの大人に助けを求める。この3ステップを教えるのだそう(9月29日・朝日新聞)。

デジタル社会を生きる子どもたち。「学校配布の端末は危険」という議論になると、ICT教育自体が頓挫しかねない。かといって「子どもの自主性を重視」では、単なる放任の危険が。町田の学校の例を見ても、指導やチェックは必要でしょう。また、「大人がルールを決めて使用させる」では、子どもの自主性を育てるのは難しい。

学校も家庭も、バランスの難しいかじ取りを求められますが、ネットへの書き込みが、誰かの命を奪うこともある、そんな「ネットいじめ」の現実も示しつつ、子どもと一緒に問題を考え、使用のルールを決めてみても良いかもしれません。

参照

9月19日・毎日新聞

https://mainichi.jp/articles/20210919/ddm/005/070/121000c

文部科学省・1人1台端末の積極的な利活用に当たっての留意点と新たに作成した「本格運用時チェックリスト」

https://www.mext.go.jp/content/20210312-mxt_jogai01-000011649_002.pdf

9月17日・朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASP9K4D3QP9KUTIL017.html

9月25日・朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASP9S7GKSP9SUTIL014.html

文部科学省・令和元年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について

https://www.mext.go.jp/content/20201015-mext_jidou02-100002753_01.pdf

内閣府・令和元年度 青少年のインターネット利用環境実態調査結果

https://www8.cao.go.jp/youth/kankyou/internet_torikumi/tyousa/r01/net-jittai/pdf/sokuhou.pdf

DQ World

https://cyber-felix.com/dqservice/#page-content

戸田市教育委員会・デジタルデバイドと子供のインターネットリテラシー(情報モラル)について

https://www.city.toda.saitama.jp/uploaded/attachment/44542.pdf

9月29日・朝日新聞

https://www.asahi.com/edua/article/14448831

中村 亮子

中村 亮子ライター

1971年東京都出身。中央大学法学部法律学科卒。転勤族と結婚し、全国を転々と旅するような生活を送る中、偶然の出会いに導かれ、フリーライターの道へ。家族は夫と息子が二人。趣味はピアノ

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