子育てママのお悩み解決メディア
【気になる!教育ニュース】 小1プロプレムの解消 のための国の施策とは

連載:気になる! 教育ニュース 【気になる!教育ニュース】 小1プロプレムの解消 のための国の施策とは

大学入試改革、プログラミング、英語教育……。教育の世界がなにやら騒がしい。このコーナーでは、最近気になった教育関連のニュースをピックアップして紹介します!

第65回 狙いは小1プロプレムの解消? 文部科学省「架け橋プログラム」策定へ

幼児教育から小学校教育への移行をスムーズに

幼稚園や保育園、認定こども園に通う5~6歳児が小学校1年生にスムーズに移行できるよう、文部科学省が新たな教育プログラム、「幼保小の架け橋プログラム」の策定を進めています。

授業中なのに、教室内を歩き回る。先生の指示通りに行動できない。今回の「架け橋プログラム」の背景にあるのが、こんな「小1プロブレム」だそう。

11月5日の読売新聞は、「読み書き、計算ができる子、できない子がいて、一斉指導が難しい」「学習態度は就学前教育による差があると感じる」などの、現場の声を紹介しています。

「小1プロブレム」が話題に上り始めた1990年代。要因は核家族化など家庭環境である、と言われました。けれど、現在では、遊び中心の幼児期から学習中心の小学校教育への段差が大きいことが要因、と言われています。そこで、すべての5歳児に共通のプログラムを設けることで、一定程度の学びの質を確保する狙いがあるのです。

遊びの中から得られる学び

現在、就学前教育は

・3歳以上を対象とした幼稚園

・0~5歳児を対象とした保育園

・幼稚園と保育園の機能を併せ持つ認定こども園

主にこの3つに分かれていて、教育指針も異なります。この差異をできるだけ均一化するためのガイドラインを、具体的に策定していく、というのが今回の取り組み。

実は、文科省は2017年、既に幼保で教育指針の共有化を図り、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」として「自立心」「協同性」「言葉による伝えあい」など、10項目を掲げたのですが、理念先行で、現場への浸透はいまひとつ。今回のプログラムでは、この10項目を実効性のあるものにするため、より具体的な施策を示すこことしたのです。

文科省の特別委員会では、「得意なことを役割分担するお店屋さんごっこ」や「植物から作った色水を混ぜたり、砂場で深さを調節しつつ水路を掘ったりする、五感を通じた体験や遊び」。さらに「タブレット端末で撮った写真を使った物語作り」などを具体例として検討。幼児期にふさわしい学びは遊びの中から、ということのようです。

確かに、我が家の長男が年長だった時の「遊園地ごっこ」の感動は今でも鮮明。ジェットコースターをどうしても作りたい、という子どもたち。どんな大きさの箱なら人が乗れるのか、どんな速さで引っ張れば楽しいか、箱にどんな工夫をしたら滑りやすくなるのか。5歳児たちが遊びの中から得た知恵を出し合って、驚くほど楽しい遊園地を作り上げたのです。

幼児教育は重要だけど……?

実は、今回のプログラムには「小1プロブレムが5歳プロブレムに変わるだけ」「行きすぎた早期教育では?」といった疑問の声も少なからず聞こえてきます。

幼児期教育の重要性を示した興味深い実験があります。1960年代、アメリカで低所得者層の3、4歳児に対して行われた「ペリー幼児教育計画」。子どもを、幼児教育プログラムを実施したグループ、していないグループに分け、追跡調査を遂行。すると、40歳時点での年間所得、50歳時点では、本人だけでなく、子どもの高校卒業率や就職率に、顕著な差があったそうです。

ところが、2020年公表のOECD調査では、2017年の日本の幼児教育に対する公的資金の支出割合はOECDの平均を下回っていることが明らかになっています。

授業をきちんと聞くことができない新入生。深刻なケースでは、早期に勉強についていけなくなったり、不登校につながることもある、と聞くと、幼児教育の質を保ち、小学校にスムーズに移行する、というのは確かに重要、と感じます。けれど、椅子にきちんと座って先生の言う通りに動くことで、かえって委縮する子どももいるのでは?と思うことも。しかも、家庭環境や、園の教育方針、園庭の広さ、保育士の数、質など、違いは多岐にわたります。

「個性」が求められる時代。異なる環境の中で、個々の特性を伸ばしつつも、教育の質も確保する。「言うも行うも、なかなか難し」というところでしょうか。

参照

文部科学省・幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会参考資料

https://www.mext.go.jp/content/20210816-mxt_youji-000017287_10.pdf

11月5日・読売新聞

https://www.yomiuri.co.jp/commentary/20211104-OYT8T50126/

内閣府・認定こども園概要

https://www8.cao.go.jp/shoushi/kodomoen/gaiyou.html

文部科学省・幼児期の終わりまでに育ってほしい姿

https://www.mext.go.jp/content/1422303_08.pdf

文部科学省・幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会、配布資料

https://www.mext.go.jp/content/20210720-mxt_youji-000016944_12.pdf

内閣官房・参考資料~幼児教育の効果に関する代表的な研究成果

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/youji/dai1/siryou3-2.pdf

OECD・Education at a Glance 2020

https://read.oecd-ilibrary.org/education/education-at-a-glance-2020_69096873-en#page310

中村 亮子

中村 亮子ライター

1971年東京都出身。中央大学法学部法律学科卒。転勤族と結婚し、全国を転々と旅するような生活を送る中、偶然の出会いに導かれ、フリーライターの道へ。家族は夫と息子が二人。趣味はピアノ

中村 亮子さんの記事一覧 →