連載:気になる! 教育ニュース AIは先生の最強バディ? 大津市いじめ対策【気になる!教育ニュース】
大学入試改革、プログラミング、英語教育 。教育の世界が何やら騒がしい。このコーナーでは、最近気になった教育関連のニュースをピックアップして紹介します!
第7回 AIは先生の最強バディ? 大津市いじめ対策
54万3933件。
やけに多い数字。何だかご存じですか? これは、文科省が昨年10月に発表した2018年度におけるいじめの認知件数。小、中、高校、特別支援学校のうち8割近くが小学校で起きています。前年度比12万9555件増で過去最多を更新。
このような状況の中、AIによる分析をいじめ対策に生かそう、という滋賀県大津市の取り組みが注目されています。大津市では2011年、当時中学2年の男子生徒がいじめを苦にして自殺。学校や教育委員会の対応が世間の非難を浴びた、という消すことのできない過去があります。
同市は約9000件のいじめの事例を集め、そのデータをAIで分析。個々のケースを精査すると・いじめの第一発見者が教員以外・SNSでの中傷や無視・被害児童が登校しない場合などは、深刻化する可能性が高いことがわかりました。特に、いじめの把握から24時間以内に加害児童を指導すると深刻化は半減する、というデータは興味深い。
「正しいデータが集まるのか?」「AIの評価が低いケースは見落としにつながる」「AI依存の指導になってしまうのでは」大津市の取り組みには様々な疑問や、批判が投げられます。
けれど、学校教育の現場でのAI活用事例は案外多いのです。例えば長野県塩尻市では学校に対する質問や疑問にチャットポットが回答するシステムを導入。英会話学習にAIロボを活用する動きも全国の小中学校に広がり始めています。さらに、埼玉県では県内の公立小・中学校を対象に学力調査の蓄積データをAIで分析、個人の理解度に応じた教育の高度化を図ります。
AIがその能力を存分に発揮できる条件が2つあるそうです。1つ目は多くのデータがそろっていること。2つ目は正解が決まっていること。教育の現場は様々な個性を持つ子ども一人一人に対応したきめ細かい指導が求められ、特にいじめの対応方法に算数のような正解はありません。とすれば、教育現場でのAI活用は早晩、失敗するのでしょうか?
囲碁のトップ棋士に勝利した「AlphaGo」の衝撃から、AIの進化はすさまじく、私たちの生活は否応なしにAIとの共存の道をたどっています。であれば、「教育現場にAIを導入することの是非」を論じるスピードよりもずっと速く、AIは教育の現場にも入り込んでくるのではないでしょうか。
「先生か、AIか」という二者択一ではなく、互いに補完し合う新しい関係を構築できたら、どうでしょう? すべてのいじめ事案に先生の目を行き届かせることは難しい。けれど、想像力やコミュニケーション力を持たないAIが、子どもと向き合い子どもの心に触れていくことはやはり難しい。
AIが数多くのデータをもとに、深刻化が疑われるケース、さらには効果的な解決方法を提示する。先生は、データに見落としはないのか、本当にその解決方法がその子どもに適しているのか、を判断し、人と人との関りでいじめを解決していく。そんな補完、協力関係が先生とAIの間に生まれたら、「決してなくならない」といわれる「いじめ」という大きな敵に挑んでいくことができるかもしれません。多くのアプローチがあって良い。そこには1つの可能性がある、と思うのです。
参照
https://www.asahi.com/articles/ASN1M6751N13UTIL00B.html
https://www.fnn.jp/posts/00048800HDK/201911031900_FNNjpeditorsroom_HDK