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この映画、子どもが観ても大丈夫? WHO「自殺予防の指針」【気になる!教育ニュース】
2020.03.11 by 中村 亮子 中村 亮子

連載:気になる! 教育ニュース この映画、子どもが観ても大丈夫? WHO「自殺予防の指針」【気になる!教育ニュース】

大学入試改革、プログラミング、英語教育 。教育の世界が何やら騒がしい。このコーナーでは、最近気になった教育関連のニュースをピックアップして紹介します!

第9回 この映画、子どもが観ても大丈夫? WHO「自殺予防の指針」

教育ニュース

子どもも中学生になると「友達と映画を観てくるね」なんてことが増えてきます。でも、それってどんな映画? 気になります。そこで確認するのが映倫のあのマーク。青少年の健全な育成のための区分。「PG12?何だ?」。これは「小学生には助言、指導が必要」という意味。その他にはおなじみのR15+やR18+。G、というのは「誰でも鑑賞可」。これなら、怪しいシーンはないかな……?

昨年秋、WHOは映像作品の影響による若者の自殺を防ぐため、制作者らに向けた「自殺予防のための指針」を策定。日本語版が1月に発表されました。ここには「自殺の描写を避ける」ことのほか、「自殺の背景にある複雑な要因と広範な問題を示す」「上映前に忠告メッセージの掲示を検討」など、12項目が盛り込まれています。今後は、映倫のマークもこれを考慮した区分付けになるでしょう。

背景にあるのは、世界的な若者の自殺率の高さです。日本でも、自殺者総数の減少と相反して、未成年者の自殺数は増加。若者の自殺予防は喫緊の課題です。アメリカでは、2017年にいじめや嫌がらせを受けた10代の少女の自殺シーンを克明に描いた動画を、動画配信サービスが公開。その後、10代の自殺が急増し、動画の影響を受けた模倣自殺ではないか、と社会問題に。後にこの場面が削除されました。

培養理論。ご存じですか? 自殺や暴力などの苛烈なシーンが見た人の中で蓄積されていくと、実際の自殺や暴力に対する抵抗感が低くなり、当たり前だと捉える傾向があるのだそうです。よく「柔らかい」と評される、可塑性に富む子どもの脳は、大人より柔軟にそんなシーンに慣れてしまう恐れも。

それに加え、ネット時代。親が「この映画はだめ」と禁じたところで、スマホやタブレットには、様々な作品があふれています。幼い脳は、一挙に、何度でも、大量にこのような映像に触れることができる。ビンジ・ウォッチ、と呼ばれます。友達と感想を共有することもなく、一人で徐々に作品にのめりこんでいったとしたら……。

WHOの指針に対しては製作者側からの「表現の自由」と絡んだ反論や、自殺により子どもを失った方からの「指針が、若者の自殺を考えるきっかけとなるのは良いと思う。が、自殺の描写はNG、といわれると我が子の自殺まで否定された気持ちになる。」という趣旨の指摘もあり、難しい問題です。自殺してはいけない。けれど、どうすることもできずに命を絶つことを選んだ人の人生は尊い。描くことでしか伝えられない真実もあるはず。

映像には人間、殊に子どもの精神状態に大きな影響を与える力があります。そして、若者の自殺の阻止は大きな社会規範である以上、一部の専門家だけが取り組めばよい、という問題ではないのだと感じます。じゃあ、親にできることって何だろう?

この映像が伝えたいことは何?この人の主張以外の意見は?製作者はどんな考えの持ち主なの? こんな風に、映像を客観的に解釈し、画面に映らない部分を問う力が子どもの中に育っていたら、情報に振り回されることはないのかもしれません。子どもの「問う力」を育てるために、私たち親自身が問いを発し続けることの必要性を強く感じたニュースでした。

参照
https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/stop01/who/20200218-OYT1T50115/
https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/stop01/who/20200218-OYT1T50145/

中村 亮子

中村 亮子ライター

1971年東京都出身。中央大学法学部法律学科卒。転勤族と結婚し、全国を転々と旅するような生活を送る中、偶然の出会いに導かれ、フリーライターの道へ。家族は夫と息子が二人。趣味はピアノ

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