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Column 気になる! 教育ニュース

「やさしいことはつよいのよ」宮城まり子さん死去【気になる!教育ニュース】

2020.05.01

大学入試改革、プログラミング、英語教育……。教育の世界がなにやら騒がしい。このコーナーでは、最近気になった教育関連のニュースをピックアップして紹介します!


第13回 「やさしいことはつよいのよ」宮城まり子さん死去

泣いている子を放っておけない

宮城まり子さんをご存じでしょうか?

今回の題名「やさしいことはつよいのよ」は3月21日に亡くなった彼女の言葉。

女優であり、歌手である彼女は、1968年、日本初の肢体不自由児の養護施設である「ねむの木学園」を創立しました。学園では豊かな人間性を育もうと、美術や音楽を本格的に教えます。特に子どもたちの絵はそのひたむきさで多くの人の心を捉え、国内外で開かれる美術展で高い評価を得ています。

けれど、スターだった彼女がなぜ、ねむの木学園の創立に踏み切ったのでしょう。何しろ「日本初」のこと。金銭面でも精神面でも、想像の及ばない苦労があったはず。

「たまたま障害をもつ子どもを演じて、初めて障害をもつ子どもが学ぶ学校がないことに気が付いた。泣いているあの子たちを放ってはおけない。そんな気持ちだった。」 彼女自身の言葉を目にして、思い起こす一本の映画がありました。

インクルーシブ教育って?

大阪市立大空小学校に密着取材したドキュメンタリー「みんなの学校」。

大空小学校には、ちょっと乱暴だったり、障害があったり、それまでは居場所のなかった多様な個性や背景を持つ子どもたちが多く集まります。学校で発生する様々な出来事を通じて、子どもたちは人とのかかわり方、物事の受け止め方など学んでいきます。

インクルーシブ教育、というそうです。障害の有無などで学ぶ場や環境を分けることなく、一人一人の能力、個性と向き合いながら共に学ぶ教育。日本では2012年に文部科学省がこの方針を明確にし、本人や家族の意思を尊重した教育環境を整えることを目標としています。

大空小学校では、障害や、貧困、虐待など、よって立つ背景も、生活も、それぞれ異なることを事実としてただ受け入れて、一緒の空間で生活します。それは確かに「やさしくて、つよい」ことだと感じたのです。

やさしさを広めたい

現在、肢体不自由児のための養護施設はねむの木学園設立の頃に比べ数も増え、全国に配置されています。また、小中学校における障害児教育も、子どもの障害の状態によって、特別支援学校、特別支援学級、通級による指導など細やかな配慮がなされます。障害児に対する社会的理解も徐々に進み、取り巻く環境は改善している、はずでした。

そこで、あの事件です。津久井やまゆり園での事件。障害のある人、ない人。ともに在るべき共生社会への道のりの険しさを感じました。

「一人一人に寄り添い、状況を見極めてあげる福祉制度があれば、違ったのではないか。もっとやさしさを広めたい」宮城さんは事件のあと、こんな言葉を残しています。

一口に「障害」と言っても、その程度は様々。人の手を借りなければ動くことのできない人、物ごとの理解が難しい人。いかに「インクルーシブ教育」が浸透したとしても簡単に解決に結びつくわけではありません。それでも、「やさしい」という言葉の意味は理解できなくても、「やさしさ」を感じることはできるのではないか。それが、共生へとむかう一本のクモの糸なのかな、と思うのです。

参照
https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202003/CK2020032302000236.html
https://www.asahi.com/articles/ASM3W6QS7M3WUTIL05Y.html

中村 亮子

中村 亮子 (なかむら・りょうこ)ライター

1971年東京都出身。中央大学法学部法律学科卒。転勤族と結婚し、全国を転々と旅するような生活を送る中、偶然の出会いに導かれ、フリーライターの道へ。家族は夫と息子が二人。趣味はピアノ

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