連載:気になる! 教育ニュース 大人気! 教育系YouTuberは、教育の多様化へ扉を開くか【気になる! 教育ニュース】
第21回 大人気! 教育系YouTuberは、教育の多様化へ扉を開くか
とある男の素敵な授業
とりあえず、私も見てみました。
「とある男が授業をしてみた 小6 円の面積」
確かに、確かにとても分かりやすい。基本事項の中に、問題を解くポイントやコツをさりげなく放り込む。何より、白板の板書がウツクシイ。話し方も聞きやすく、「おおっ」と思っているうちに終了。約10分。
これは教育系YouTuberとして大人気の葉一さんの動画です。
小3生から高3生までを対象とした授業動画で登録者数は80万人! 私が感心した板書の美しさも、字体から列の間隔まで徹底的にこだわっているそうです。勉強の苦手な子どもを想定した授業は理論よりも「問題を解くこと」に直結した手順やテクニックを重視しています。
これが無料なんて! 個別指導に通う高1の我が子、週2回45000円なり。
葉一さんのほかにも「おっぱっぴー」の小島よしおさんや、カズレーザーさんなど有名なお笑いタレントも教育系YouTuberとして活躍中。コロナ休校の影響か、俄然、熱い視線が注がれる分野なのです。
教育系YouTubeは現代っ子のニーズにぴったり!
そもそも子どもはYouTubeが大好き。
2019年3月、教育ネット発表の「2018年度小学生・中学生のネット利用の実態調査」によると、YouTubeの利用率は中学3年生の96%、もっとも利用率の低い小学3年生でも70%に上っています。ほぼ、みんな、ですね。
脳科学者の茂木健一郎さんによると、人の脳は「ある程度は予想できるが予想できない部分もある」という不確実性を有するものに喜びを感じる傾向があるのだそうです。
豊富なコンテンツから自分で検索できる、テレビのような規制がないため、意外性や刺激の多い内容が期待できる、自分の見たい時間にみられる、コメントや評価を付けられる、などの特色を持つYouTubeは人間の脳の特性に合致したのかもしれません。
実際、2019年5月公表のMMD研究所の調査によると、中学生の9割がスマホを勉強に活用。YouTubeの利用率と相まって教育系YouTubeは非常に子どもにとって利用しやすいことが理解できます。また、YouTuberはファンとの距離が近いことが人気の理由の一つ。とすれば教育系YouTuberによる授業はより、子どもの勉強に対する意欲を高める効果があるのかも。
YouTubeが教育格差を救うカギに?
もともと個別指導塾で人気講師だった葉一さん。高額な授業料を捻出する家庭を目の当たりにし、家計的に恵まれない子どもにも教育を届けたい、との思いが高まり、当時は一般的ではなかったYouTubeの利用を思いついた、とメディアに語っています。
どこにいても無料で視聴できるYouTubeは、経済や地域による教育格差を解消できる大きな可能性を有します。それだけでなく、いじめなど様々な理由で不登校となっている多くの子どもたちにも、無理のない学習の機会を提供できる、というもう一つの力も教育の多様性を広げます。
葉一さんは無料のオンライン授業を、公教育、塾と並ぶ、第3の教育の柱にして、多様な背景を持つ子どもたちを支えたい、と言います。
ただし、注意も必要。YouTubeには内容の正確さをチェックする仕組みがなく、間違った内容の動画がアップされていることもあり得ます。やはり、親が時々、一緒に動画を見たり、動画で内容の誤りが指摘されていないかをチェックする必要はありそう。
小学校低学年であれば、できれば動画の冒頭部分くらいは親が一緒に見てあげると、勉強の習慣づけに理想的な導入になる、とは葉一さんの言葉。
時代の進度は加速度的にスピードを増している感があり、YouTubeの10年後は私などにはとても予測できません。でも、葉一さんの言葉を読んでいると、人に何かを伝えたい、つながっていきたい、という思いは、いつの時代でも社会を動かす原動力なのだろう。そんな爽やかな風を感じました。
参照:https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/news/20200709-OYT1T50257/