連載:気になる! 教育ニュース 逆境でも折れないしなやかな心を育てるには【気になる! 教育ニュース】
第22回 逆境でも折れないしなやかな心を育てるには
混迷の時代だからこそ、求められるレジリエンス
「仲良しの友達と喧嘩しちゃった!」
「かけっこでビリだった……」
「作ったおもちゃが壊れちゃったよ!」
子どもたちの世界は小さなつまずきでいっぱい。けれど、その反応はさまざま。つまずきを物ともしない子。落ち込んでもやがて前を向く子。つまずきを長く引きずってしまう子。
その違いはどこから来るのでしょう? 生まれ持った性格?
「レジリエンス」という言葉をご存じですか? 逆境や困難、ストレスなどに適応し、しなやかに回復する力のこと。コロナ禍、長引く自粛生活や休校で不安を感じることの多い生活を送る子どもたちに、今、最も求められる力がこのレジリエンス、と言われています。
レジリエンスを持っている子どもは主に
・自己肯定感が高い
・物事に一喜一憂せず、感情をコントロールできる
・「これなら自分でもできそう」と物事を楽観的に見ることができる
という特徴を備えていることが多いそうです。
では、どうすればレジリエンスを育てることができるのでしょうか。
レジリエンスを育てる親の関わり方とは?
レジリエンス研究の第一人者である東京学芸大学の深谷和子名誉教授によると(2020年3月6日朝日エデュア掲載)、レジリエンスの育成には、幼少期の親の接し方が非常に大切であることがわかります。
例えば、お子さんが積み木で遊んでいる様子を想像してください。
どうやら家を作っている様子。でも、なんともバランスが悪いですね。それに1階部分に三角形の積み木を置いてあります……。ああ、やっぱり! ガラガラっ、と崩れてしまいました。顔を見ると、今にも泣きだしそう。
さあ、そこでどう対応しますか?
「ほら、もっとバランスよく置かないとダメじゃない。それに、三角形の積み木の上に他の積み木は乗らないでしょ。次はもっと考えて上手に積まないと」
私ならこう言うかも。しかも、数字や言葉も教えよう、なんて下心まで出てしまいそう。でも、これでは子どもの自己肯定感「自分にもできる」という思いは育たないのだそう。遊びに夢中になっている子どもは、実は小さな失敗を繰り返しているのです。失敗の繰り返しの果てに、ようやく、小さな成功を掴むのです。
「できた!」この感情こそ、まさにレジリエンス! (積み木のほか、ブロックや砂場遊びはレジリエンスを育む遊びとしてピッタリだそうですよ)
恐れることなく失敗と向き合おう!
でも親はどう関わればよいのでしょう?
深谷教授によれば、親がすべきは先回りの過保護ではなく、子どもを信頼して根気強く見守り続けること。そして、夢中に遊びに浸る機会を多く用意すること。失敗と向き合うことで初めて発揮されるのがレジリエンス。失敗の機会を奪わずに、いつかは上手に積み木の家を作る我が子を信じる。
また、多くの失敗と向き合う中で、子どもは周囲に助けを求めることも覚えていくのだそうです。いじめなど一人では解決できない問題と向き合ったとき、抱え込まずにSOSを出すことができるのは、困難を生き抜くためのレジリエンスの力。
もう我が子はあまり小さくないから、レジリエンスは育たない? そんな心配は杞憂です。深谷教授によれば、どんな時でも自分を支えてくれる、信頼できる存在を感じることができれば、人は何歳になっても立ち直れる、レジリエンスは育つのだそうです。
「1回失敗して、もうダメだ、と思ったらダメ。これが必ず役に立つ、と信じて研究を続けることが大事。成功した人は、人の2倍も3倍も失敗している。失敗を恐れないように」
2015年、ノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智北里大学特別栄誉教授が記者会見で語った言葉です。レジリエンスに溢れ、力強い! 我が子を信じることは、育てる自分を信じること。レジリエンスは私たちを支える力にもなるはず。そう、教えてくれる言葉です。
参照:
https://www.asahi.com/edua/article/13185749
https://dual.nikkei.com/atcl/column/17/070500106/051200013/