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りんごが赤く塗られていなくて、むしろいい。息子の絵に思うこと。
2020.08.11 by Asaco Asaco

連載:4回目の育児 - fourth time around りんごが赤く塗られていなくて、むしろいい。息子の絵に思うこと。

4人きょうだいの上から2番目、小学校5年生になった息子(通称ざいざい)は、ちいさな頃からちょっと風変わりな感性を持っていました。そのことに気づいたのは、まだまだ彼が保育園児だった2、3歳くらいの頃。当時通っていた園では、子どもたちが描いた作品をよく廊下に貼り出してくれていて、あるときカラフルな絵にまぎれて、まっくろな物体が書かれた一枚を見つけたのでした。それがまさに、わが子ざいざいの作品。みんなが色あざやかに描くなかで黒一色というのはなかなかパンチがあって、すごく衝撃的だった。

しかも、黒という色のイメージだけで「この子、なんか心が病んでたりしないよね」と勝手に不安になったり…(笑)。そしたらそのあと急に、ざいざいの描く絵がカラフルになったり、なんならリンゴが赤じゃなかったり、人の顔が肌色じゃなかったり。とにかくその色づかいに、ハッとすることが多い子でした。

ざいざいが年長さんのときに描いた絵。右はなんと自画像!

小学生になっても、自ら黙々と絵を書いたりぬり絵をする姿をよく目にしていました。そして、気づけばみるみる、色の「塗り方」が進化して、たとえば塗るためのガイドにもなり得る「線」は、彼のなかでは色を切り替えるための「境目」として捉えられることはなく、いつしか独自のルールで、まるで虹のように色づけをするスタイルを確立していたのでした。

人は歳をかさねていくうちに自然と固定概念というものが身についてしまって、大人になればなるほどイメージが「無難」な方へと流れがち。わたしも子どもの頃、ざいざいと同じく描くことも工作することもだいすきでしたが、年々自分の中でできあがったイメージを壊すことが難しくなって、うまくオリジナリティーを出せずに悩んだ経験がありました。だからこそ、そこに捕われることなく自由に作品を生み出しつづけられるざいざいを、親ながらにうらやましく思っていました。

さて、それからしばらくして、彼が小学校2、3年生くらいになったある日のこと。授業参観で学校に行く機会があって、教室に貼られていたクラスみんなの絵の中にざいざいの一枚を見つけて「あれ?」と思うことがありました。その理由は「全然ざいざいっぽくない」。まるで、眠りながら描いたのかと思うくらいに、その絵から一切いつものパワーが感じられなかったのです。

人は人のように描かないのに、人っぽく描かれているし、その描かれた人はいつもは使わない肌色で塗られている。まるで、自分の色づかいが人とちがうことにハッと気づいて「みんなと同じように描かなきゃ」、そんな焦りとも取れる彼の声が聞こえてくるようでした。となりにいた夫もその一枚を見てまったく同じように感じたようで、夫婦で口数少なく帰宅した日のことをなつかしく思い出します。

ちなみに、そのとき感じたきもちは、正直に彼に伝えました。「なんか、全然ざいざいっぽくなかったけど、いつものざいざいの絵でいいんだよ?」。その後も、家で描く絵は虹のようなグラデーションで構成されているのに、学校で描いてくる絵は地味な上にさっぱりオーラがない。自分っぽさを極力失くすことに注力しているかのようでした。

すごくもどかしかったけれど、こればっかりは、彼自身が自分の世界観に自信を持つことでしか解決しない。だから、わたしにできるのはただ一つ、彼が思うままに描く絵が“だいすきだ”と伝えつづけることだと思い、しばらくそっと見守ることにしました。

コロナ自粛中は、フリーダウンロードのぬり絵を見つけては、ざいざい色に染める日々でした。

去年の秋、学校で2年に1度企画されるおおきな展覧会が開催されました。1年生から6年生まで、全校生徒の作品がひろ~い体育館いっぱいに集結するのだから見応えたっぷり。とても楽しみな行事のひとつで、かぞくみんなではりきって観にでかけました。まずはその年に卒業だった長女の作品を探して、小学校生活6年間の集大成を目の当たりにして胸を熱くし、さて、お次はざいざい。

「あ…!」

彼の絵を見つけた瞬間、思わず笑みがこぼれました。そこには、いつもの彼らしい色づかいの絵が一枚。「きっと、すごく楽しく描いたんだろうな」そんなざいざいのきもちがズシンと伝わってくる作品でした。

もしかしたら、いままで自由気ままに表現をつづけていた彼が、突然「テーマ」を与えられたことに戸惑いもあったのかもしれません。だから、何を描けば分からなくなって手が止まり、それとなく周りを見渡して、見よう見まねで描いていたのかもしれない。いずれにせよ、彼なりに表現に悩んで、ひとりしずかに葛藤したんだろうな。息子のそんな姿を想像して目の前の作品を見据えると、さらに胸がいっぱいに…。思いがけず、心に残る忘れられない瞬間になりました。

2年に1度の展覧会は、子どもたちの作品のみならず、先生方が手がける装飾がまたすばらしいのです!

そんなわが子たちの成長を、まるでかぞくのように見守ってくれる友人たちがいる。ファッションデザイナー桑原さんもその一人で、ある日「すごくいい絵だねぇ~」、うちに遊びに来てくれたときに、ざいざいの作品を眺めてしみじみと呟く彼の姿がありました。そしたらなんと、ちょっと信じられないことが起こりました。「ざいざいの絵を、2020SSコレクションのTシャツにしたい」。そう聞いたときは完全に耳を疑いましたが、本当に、本当に、それは実現したのでした! 本人はそれがどれほどすごいことなのかイマイチ分かっていない様子ですが…、それでも完成したTシャツは自分でもすっごく気に入って、この夏で着倒すんじゃないかと思うほどにしょっちゅう着ています。

自分に自信を持つ。それって大人のわたしだってなかなか難しく、いまだについ卑屈になってしまうことが多々あるけれど、そんな時、なにより救われるのは、だれかに「いいじゃん」って認めてもらえることなんじゃないかと感じます。だから親であるわたしは、いつだって全力でわが子たちのファンでありたいと思う。

そして、そんなふうに思ってくれる人が今、わたしたち夫婦以外にも彼らの周りに居てくれることが、とってもありがたいと思うのでした。先述したとおり、桑原さんはもちろん、仲間のような、同士のような大人たちが、実はわが子たちの周りにはたくさんいます。そんなみんなが、なにげない日常から個々の良さを見つけて、認めてくれる。その積み重ねがきっと、知らぬ間に彼らを一回りも二回りも、大きく成長させてくれるのだとあらためて実感するのでした。

Tシャツになった絵は、ステキに額装して桑原さんがプレゼントしてくれました。大切な宝物。
Asaco

Asacoモデル

モデル・4児の母。1978年静岡県浜松市生まれ。2018年5月に4人目を出産し現在、2男2女のママ(12歳、10歳、6歳、2歳)。モデルとして、ファッション&ママ雑誌や家族でCMに出演。夫婦でケータリング業「マフィオ」を展開、最近はキャンプ好きが高じてママキャンパーとしても活動。さらに、母目線でこどもにまつわるコラムを執筆したりと、子育てをしながら多方面で活躍中。instagram.com/hiratoko_asaco

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