連載:山本祐布子の「子どものいる風景」 山本祐布子の「子どものいる風景」 当時の記憶が鮮明によみがえる。娘たちを描いた絵
Vol.12 なにをしても可愛いよ
長女が生まれてから、ふとこの子の絵を描いてみよう、そう思って以来、心に残った娘たちの姿を、絵の中に閉じ込める作業を続けています。
はじめは、まだベッドに寝転んでいるころの娘に可愛い服を着せた時、コーディネートの参考になんて感覚で描いていましたが、ある日から、ちょっとした表情、しぐさ、そんなことからはじまり、動き出してからはもう、目が離せなくなりました。カメラマンで言うところの「シャッターチャンス」がいっぱいで、描くのが追いつかないほどです。
見ながら描くひまはありません。なので、いつも、頭の記憶にとどめておき、時間のある時に思い出しながら、その姿を紙に描きます。
次女が生まれてからしばらくは気持ちに余裕がなく、絵を描く時間が取れずに悔しい思いをしました。
それでも、どうにかほそぼそと続けて、今ではだいぶたくさんの数の娘たちの姿が絵に残っています。それは写真とは全く違って情報量も少ないはずなのに、当時の記憶が鮮明に、そのシンプルな画面の中に閉じ込められているのです。
いっぽう子どもたちも、私が自分たちの絵を描いているとなんだか嬉しそうで、見せてあげるととても喜びます。これはいついつの、こういう時だよね!と、自分でも思い出して楽しそうにしていたり、可愛いーなどと、不思議な自画自賛をしていたりします。
「我が子は目に入れてもいたくない」という例えは本当で、私自身は、なにをしていても、なにをされても、ああ、可愛いなあ。と思ってしまいます。あれも描きたい、これも描きたい、という気持ちが先行して、なかなか少しづつしか描けないのが、はがゆい限り。
長女は冷静に「じゃあ、これ絵に描けば?」
ある日、いつものように二人の喧嘩がはじまります。ストーブの前のあったかいところを独り占めしたいがために、足を相手の上にのせたり、はたまた追い出してみようとしたり、もう、なんだかもう、もみくちゃのご様子。
本人たちは本気です。叫びながら半泣きでお互いにお互いを罵り合っています。
それを見ている私には、可笑しい姿そのもの。
「ああ、可愛いなあ」
と私がもらすと、すかさず長女が冷静に言います。
「じゃあ、これ絵に描けば?」
ですって!!
ここでは、仲良しのところを残しておきましょう。
机の下の秘密基地。
将来、あなたたちにも見てもらいたいな。