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Column イラストエッセイ

山本祐布子の「子どものいる風景」ときに不条理、ときに単純。子どもの「いいわけ」って深い

2017.07.31

この連載は……
イラストレーター・山本祐布子さんのエッセイ。ふたりのお子さんと暮らす、家族の日々を綴ります。

vol.19 いいわけ

少し寒くなると、次女はいつも鼻をたらしている。いつも。いつも。豪快に鼻からつつつとたれた鼻水を、そのままなにも気にすることもなく、平気で過ごしている。私もそんなにまめなほうではないが、とくに人前などでは気をつけて鼻を拭いてあげようとするのだが、いつも次女はそれを激しく拒否するのだ。

どうして? 鼻の下がいつもたらたらでは、あまりにも気持ち悪いでしょう?

という私の問いに、次女はニンマリと答える。

「鼻水(時にそれは、鼻くそでもあったりします、はい)は、さーちゃんの大切なお友達なのー。それでね、お腹がすいたら、いつでもそれを食べるの!」

あいた口が塞がらぬとは、こういう時に使う言葉なのでしょう。

お友達!? それなのに、お腹がすいたら、食べる、ですとー!?

長女の髪の毛が、目にかかるくらい鬱陶しく伸びてきた。美容院には行きたがらないので、私が自己流で時々切るのだが、首に髪の毛がつくとかゆくて痛くて、とても気持ちがよいものではないらしい。

なので、今回も、切る?と言っても、いやだの返事。

でもそろそろ限界。もう、切ろうよーと声をかけると、このいいわけ。

「みーちゃんの学校の帽子、ちょっと大きいから、とれちゃわないように、頭をふくらませておかなくちゃいけないの。」

これには私も大笑い。

子どもたちは、よくもまあ、たくみにいろんないいわけを考えます。それは時にずるかったり、親にとっては不条理だったり、でも、なんだかおかしくて、とっぴょうしもなくて、後になって思い出してはくくくと笑ってしまう私なのでした。

本当にばつの悪い時のいいわけは……

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でもね、こればかりはなぜなのか、聞きたいことがあります。

ある日、学校から電話があり、
「みとちゃんは、いつも先生にもお話をしてくれなくて、友達ともほとんどしゃべりません」

それ、知ってます。幼稚園の頃は年中の後半まで、ほとんど誰ともおしゃべりができず、ずっとだまったまま、いつも友達の様子を離れたところで見守るような子でした。またですね。

授業参観で私がそばにいても、うつろな顔をして、先生にはおどおどとした態度でなにも話すこともできず、下をむいているばかりです。

いつも、家や、庭で見せてくれる生き生きとしたみとちゃんが、どこにもいない。

おしゃべりだって、気遣いだって、こんなに得意で明るい性格なのに、学校ではそれをどうして見せられないのかな。

わけを聞いても、

「はずかしいから」

と言うだけ。

子どもは、本当にばつの悪い時のいいわけは、単純。本当は、そんな言葉では表せないような、いろんな心のことを、処理しきれないのかもしれない。そんな時のいいわけは、単純で、一般的。

だから、私たちは待っているよ。いつかこんなことがあったと振り返る時、私たちがひざを打って大笑いして、「なーーんだ、そうだったのー」と、納得できる、独創的ないいわけを。

でたらめでもいいから、待っているよ。

見守るほうも、大変です。

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山本 祐布子(やまもと・ゆうこ)

イラストレーター。切り絵作品、ドローイング作品を中心に、雑誌、装丁はもちろん広告・エディトリアル・プロダクトと、ジャンルを超えた活動を行う。ブログやインスタグラムでは、2人の娘たちの姿や、日々の小さな出来事等を綴っている。夫の蒸留家修行を見守るため、2015年にドイツ滞在。現在は千葉在住。

yukoyamamoto.jp instagram.com/funnnyup


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