
連載:山本祐布子の「子どものいる風景」 山本祐布子の「子どものいる風景」 さやちゃんには、勝てないんだなあ
この連載は……
イラストレーター・山本祐布子さんのエッセイ。ふたりのお子さんと暮らす、家族の日々を綴ります。
vol.21 さやちゃん

ある日の車の中での長女との会話。
アリとキリギリスの物語に自分たち家族をなぞらえて、誰がアリで、誰がキリギリスか。という、どうでも良い話。
「パパは、いつも楽しいことを優先するからキリギリス、だよね~」
「みっちゃんとおかあさんは、絶対にアリ。特におかあさんは、完全にアリ(強調)」
「じゃあ、さやちゃんは?」
うーん。なんだかどっちでもないような気がする。。。アリではないけど、キリギリスでもない。。。
そうそう、さやちゃんは、
チョウチョ!
ひらひらと、可愛くて美味しいものにめがなくて、楽しいことにしか興味がない。
いつもリズムに合わせて踊りだし、鼻歌を歌いながらお絵描きのうさぎには必ず♡のマーク。アイドルの塗り絵、ビーズやクリスタルの積み木などに興じる。
そうなのです。我が家ナンバーワンのラブリーガールは、紛れもなく4歳になる、次女のさやちゃんです。
はっきり言って、さやちゃんの髪はまだ薄く、赤ちゃんの頃はつるつるのタイプでした。
ようやく生えてきたひよひよの髪の毛を愛おしく触りながら、
「髪、結んで!」
無理やり小さな輪ゴムで結んでやると、大喜び。それはそれはネズミの尻尾のようなホッソイ、ほっそい2つ結びです。それに飽き足らず、最近は三つ編みをして欲しいとせがむので大変です。
「◯◯ちゃんは、一回頭の上で三つ編みして、それを2つに三つ編みしてたよ?」
。。。無理です。
大好きなキャラクターやアイドル系の塗り絵。引っ越しのごたごたで色鉛筆などが霧散してしまい、なぜか活用している油性のマッキーで塗りたくります。
肌がどピンクになったマカロンちゃんを見て、「うーん、可愛くて、あこがれちゃうーーー!!」
と満足げ。
コピー用紙を蛇腹に折って、真ん中でギュッと縛り、輪ゴムをつけ、それを頭に巻き付けたら、
「りぼん」
まるで鉢巻のようにおでこにくっついた大きな大きなリボン。目にかかる程垂れ下がるも本人は全く気にすることなく、プチプチで作ったエプロンをつけてお家ごっこ。
ふわふわもちもちのさやちゃんの体。美味しそうだなあ、、、と触ると
「さやちゃんの体の中は、わたあめで出来てるから。」ときっぱり。
さらに「パカっ!はいどうぞ」と、体の中身をおしげもなく、人に差し出すさやちゃん。
とまあ、上げるときりがないくらいで、大笑いの連続です。
笑えるどころか、最近は笑わせるほうにも才能を持ち始め、変な顔をしたり、歌ったり踊ったり、さやちゃんがいるだけで、毎日がぱっと花が咲いたみたいに、明るくなります。
シールのシートを床に貼り付けてしまい、怒られて「もう、こんなことする子にはシールは買ってあげないよ!」おかあさんの叱咤に火が付くように泣くさやちゃん。
もうしない?と怖い顔で抱きしめると、その胸のすき間から、もう、変顔をしているさやちゃんがいるではないですか!
思わず吹き出して、二人で大笑い。これで、おしまい。
さやちゃんには、勝てないんだなあ。