
連載:山本祐布子の「子どものいる風景」 山本祐布子の「子どものいる風景」 想像力を育むために、どんなきっかけを作ったらよいだろう
Vol.4 DRAW WITH CHILDREN

子どもの絵を描く姿が大好きです。
ペンをおもむろに持ち、白い紙にふわふわと線を走らせはじめる。
と思ったら握るように持って白い紙を青のぐちゃぐちゃに塗りつぶしてしまう。
ただの丸がいくつか並んだ紙を喜んで見せてきて、これはリンゴ、これはおミカン。などと説明してくれる。
ほめると嬉しい顔で、またぱたぱたと走って紙にむかう。
そんな姿にいつもわくわくしてしまいます。
子どもの頭の、もっともっと柔らかい部分を刺激したい
時々、幼稚園のお友達のママに頼まれてお絵かき会なることをさせてもらっています。最近はちょっとした有名な会となり(!?)、人数も親と子どもを合わせるとお家でやるにしては相当な数になってしまうのですが、みんな、小さな机に集まって、わいわいと賑やかに楽しみます。
先日のテーマは「見たこともないような動物を想像して描いてみよう!」というものでした。
きっかけはこうです。
常々、5歳の娘を見ていて、絵を描く時に、目に見たものをそれに似せようとして描こうとします。成長の過程の一つだと思うのですが、何を描ける、描けない、動物だったらくま、うさぎ、魚が描きたい。あとは、電車?お家?まま?ぱぱ? 描くものがアイコン化しているように思えてしまった。
もちろん観察力、既存のものを描く、描けることも大事なのですが、これは別、なんか、そこにちょっと不自由を感じた瞬間がありました。もっと自由でいいじゃない!と。子どもの頭の、もっともっと柔らかい部分を刺激したいな、と。目が5つついてたり、なが~いながーい動物が、いたら楽しくない?
でもそこは5歳です。ちょっとした言葉のヒントを与えて、それを組み合わせるという、頭のパズルのようなことも組み合わせました。言葉のカードを3枚引き、そのカードに描かれた言葉をヒントに、頭でこね合わせて、形を想像します。
まっすぐに紙にむかって色鉛筆を走らせる子もいれば、頭を抱えて悩む子もいます。その悩む子の姿の素晴らしいこと。がんばって、頭の想像力を働かせている。できないよ。と諦めかけるんだけど、そこを、粘ってっごらん。頭に浮かんだものをつかむんだよ。と諦めさせない。
不器用に、紙に色を塗り始めます。
できた、ふしぎな生き物たち。
それを、はさみできれいに、その子の描いたほんの細いはみだした線も大事に活かしながら、切り抜きます。
子どもって、絵を切り抜くと、すごく喜ぶんですね、立体的になったようで、この空間に、紙から飛び出したみたいで。
ボードにはって、へんてこ動物園の出来上がり。
言葉の軸に支えられながら、自分なりのイメージを組み立てていく。見えないものを、頭でつかむ。こんな頭の体操。たまには大人にも必要かもしれませんね。
今回は親にも同じ条件で描いてもらいました。いつもは紙を渡してさあ描きなさいと言うだけのお母さんが、一緒に、一生懸命絵を描いていたことが、子どもには嬉しかったみたい。とは後日談です。
子どもの想像力を育むためにできること
子どもには、想像力豊かに育ってほしいときっとどの親も思うことだと思います。
でも、子どもの想像力の部屋は、もしかしたら一方通行の情報や、既成のものにどんどん塗り替えられいき、子どものその素晴らしい吸収力で、それらはいっぱいになってしまうかもしれない。
何を見せてあげ、またその逆はなにか、想像力を育むためにどんなきっかけを作ったらよいか、親としていろんなことを考えてしまいます。
私も全然わかりません。迷っているところです。
でも、私の心をしっかり掴んでいるのは、子どもの絵を描く姿の素晴らしさ!
子どもと一緒に、手から生まれる新しい世界を見ることに、すっかりと興味を奪われてしまいました。
次つぎとテーマが浮かびます。日々の生活の中に、面白いと思うヒントがたくさん隠れています。
いつか、子どもがみんなで絵をかいたり、ものを作ったりできるような教室を作りたいなと、今、ちいさな夢がふくらんでいるところです。