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Column イラストエッセイ

5歳のさやちゃん。真夜中にひとりで起きてとった行動に、じーん。【山本祐布子の「子どものいる風景」】

2018.09.12

この連載は……
イラストレーター・山本祐布子さんのエッセイ。ふたりのお子さんと暮らす、家族の日々を綴ります。

vol.31 がんばれトイレ

頑張れトイレ

自慢ではございませんが私は、娘二人の、トイレに行きたいという気持ちを、たとえそれがとても微妙なものであってもすぱっと言い当てる、そんな能力があります。

いえ、きっとその子の母ならば、誰しもが生まれてからずっと、そのことに感覚を研ぎ澄まし、そのことに悩み、泣き(笑)たまに叱ったり舌打ちしたりと、たくさんの経験値を重ねてきた母ならば、当然の察知能力なのではないかとは思いますがね。

その時の状況や、姉と妹では各自個体差がありまして、長女なんかはとってもわかりやすかった。
というのも、足をばたばたと上下に上げ下げ、いかにも、我慢してますーー!!て感じだから。
トイレのトレーニングもわりとすんなりと、人生の階段を軽々と一歩あがってくれたので、あ、子どもってこんなものか。と思っていました。

妹は、違いました。
さーちゃんは5歳になっても、なかなか夜お布団に行くのにはおむつをとることができませんでした。もう大丈夫かなーっと、外してみた日に限って、朝はびしょ濡れのお布団を、駆け足で干しにいく始末。

それどころか、前述で自慢していた察知能力を持ってしても心底びっくりするようなタイミングと場所で、やってしまうことも多々ありまして。
今まで大声で熱唱していたかと思えば、だーー。@ソファ。
涙も一緒にだーー。にもかかわらず口は達者な5歳だから「ママが気づいてくれなかったからでしょ_!!!」と逆に怒られたりして、その場はもう、騒然。

我が家のトイレにも問題があります。二階にリビングがあり、トイレは階段を降りた一階。
面倒くさいし、一階に誰もいないと、怖いのです。

そんなハードルを超えられず、階段の途中で失敗することも、トイレの目前でやってしまうことも……
書き出すと、涙なしでは語れないほどの失敗事例を出しておりました。

いけないと思いつつ、私の口癖はこのように決まってきてしまっていました。

「もう5歳なんだから!」「どうして言わなかったの!!」

お姉ちゃんも火に油を注ぎます。
「みーちゃんは2歳のころに、おむつが取れたんだよね?ママ、そうだよね?」といらん確認をしたりするものだから、さーちゃんは派手に奔放にやりつつも、それなりにコンプレックスを抱えていたようで。

憧れは絵の中に出てくるような可愛いプリンセス。
お姉さんらしい振る舞いがしたいのに。もう大きいのに。なんでなんで。

ある夜中。かすかな物音で目が覚めた私。
真っ暗な中にむっくりといるのはさやちゃん。

「あのね。気づいたらほんのちょっとだけ、おもらししちゃったの。だから、パンツとパジャマを変えてるの。」

と、濡れたパンツとズボンをていねいに畳んでいます。部屋のすみっこにそれをちんまりと置き、新しいとパンツとズボンにはきかえて、とんでもなくちぐはぐな柄のパジャマ姿で

「じゃ、おやすみない」

と眠る姿になんだかじーんときてしまいました。ママを起こすでなく、泣くでなく、なんとか自分で事態を収拾して再び眠りについたさーちゃん。また怒られないように、とか、気づかれないように、ということよりも、自分で、この赤ちゃんみたいなことをしてしまう自分をなんとかしようとしている5歳のさーちゃん。

すこし、責めすぎたかな。ごめんね。反省の母。

そうこう言いつつもこのことを書こうと構想していた頃から、今はさやちゃんは、すっかりおむつをはかなくても、夜をなんとか過ごせるようになりました。

そう、時がくれば、すっと、一歩、進んでいくものなのですね。

気長に待つしか、方法はなかった。今ではそういうふうに思えます。

我が家のトイレはだいたい遠いし怖いから、娘たちは極限までそわそわ、もじもじ。でも一人で行くのは怖いから、

「一緒に行って–!!!」

は未だに続きます。

もう階段を上がったり下がったりは辛い年齢のパパとママは(笑)どうにか一人で行かせたい。

「じゃあ、階段の上から、応援してるよ!」
「本当に?! 本当に上から応援していてくれる?!」
振り向き振り向き階段を泣きべそかきながら降りていく。

「フレー!フレー!さ、あ、ちゃ、ん! フレ、フレ、さあちゃん!おおおおーー!」

親も楽じゃありません。

でも、これも、また。いつかはね。

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山本 祐布子(やまもと・ゆうこ)

イラストレーター。切り絵作品、ドローイング作品を中心に、雑誌、装丁はもちろん広告・エディトリアル・プロダクトと、ジャンルを超えた活動を行う。ブログやインスタグラムでは、2人の娘たちの姿や、日々の小さな出来事等を綴っている。夫の蒸留家修行を見守るため、2015年にドイツ滞在。現在は千葉在住。 yukoyamamoto.jp https://www.instagram.com/yukoyamamotomitosaya/



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