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Column イラストエッセイ

おそろいのピンクのオーバーオール。それゆけ、キッズ警備隊!【山本祐布子の「子どものいる風景」】

2018.10.27

この連載は……
イラストレーター・山本祐布子さんのエッセイ。ふたりのお子さんと暮らす、家族の日々を綴ります。

vol.32 それゆけキッズ警備員

kids

我が家には、来客が多い。とにかく多い。面白いほど、多いのです。
遊びに、打ち合わせに、見学に、なにかここでしたいアイデアを抱えて、見たいもの、知りたいもの、いろんなことを楽しみにしてたくさんの人がいろんな場所からここにやってきます。

子どもたちはお客様が大好き。どんな立場の人であろうが、子どもたちにとってはお客であるというところではみんな同じ。みんなが話を聞いてくれ、相手にしてくれるから、大好きなのです。
特にこの人は仲良くなれそうだぞ、、、しめしめ、と目星をつけられた(お兄さんが多い・笑)人には、こちらまで焦るほどの積極性で近づいていきます。

子どものお客さんがくれば、長女のみーちゃんはお世話のまとめ役。みんなを引き連れて、忍者ごっこやお家ごっこ、本格的なレストランごっこまで、大々的に遊びを展開させていきます。
けっこうきれいな格好をしてくる女の子なんかもみな、みーちゃんのペースに巻き込まれ、どろんこになって大声を出して張り切ります。

そんな中、この3年間を通して決まってやってくるお友達ができました。「家族と一年」という雑誌を作る中村家のたねちゃん。生まれ年も同じ、なんと誕生日も一日しか違わないという偶然もあいまってか、お互いに、ちょっと独特な性格を持ち合わせているためか、なんだか、ぴったりと、息があうようで。たねちゃんが来る3ヶ月くらい前から、指折り(指ではとてもかぞえられません)楽しみにしています。別れの言葉は「次はいつ会える?」と、もう、即座に指を折って数えたくなるくらいに大好き。取材の度にたねちゃんもこの場所で一緒に数日を過ごすことになりました。

今回も、ようやくたねちゃんがやってくる!
なぜならば、中村家のパパが準備を担ったお友達の結婚式をこの場所ですることが決まり、家族そろって来てくれることになったのです。
ふたたび「家族」の取材の日々がもどってきたようで、みんなで楽しみにしていました。

みーちゃんはもう、もう張り切って張り切って、、、その日に着る服も、もう何週間も前から決めて、袋にまとめてドアにかけていました。
みーちゃんの楽しみは、総勢60人いらっしゃるお客さんのために、キッズ警備員をすること。
みんなを案内したり、困ったことがあれば助けてあげる、大事な任務を勝手に自分に課し、そのための準備に余念がありませんでした。

当日。まずは、みーちゃんが他のキッズたちにおにぎりを作ってお弁当にしてあげること!
しかし!その時に限ってお米が切れていて、みーちゃんはじめっから出鼻をくじかれます。
でもまけない隊長は、お菓子をお弁当箱に詰めて他の子たちに配りました。お菓子の詰まった箱を持って庭をうろうろするキッズ警備員たち。ふと見やる度に木陰で小さく円陣を組んでお菓子を食べています(笑)
そしてなによりも大事なミッションは、なんと新郎新婦の歩くヴァージンロードに敷くロール状の白い絨毯を、ころころすること!!

これはメールで数日前にお達しがあり、もうみーちゃんもさーちゃんも張り切りまくっていました。
「ころころは、押すのか?引くのか?」という議論にもなり、まだ無きロールをエアでころころする練習までしていました。

実はこれには、決められた衣装まで用意されていたのです。
ピンクのオーバーオール。キッズチームはこのオーバーオールを着てね。
みーちゃんはしかし、もう着る服は決めていました。黒いズボンに黒いシャツ。綿入りの紺色のベストを着る予定だったのです。しかも、みーちゃんが後生絶対に好みはしない、ピンクという色。。。

いつものみーちゃんなら、断固として断ったことでしょう。

しかし、忙しく走り回っている私の目の端に、見えたではありませんか!みんなと一緒に、ピンクのオーバーオールを着るみーちゃんが!
これには驚きました。サイズもそれぞれ、大きい子から小さい子まで揃いのピンクのオーバーオールを着た、キッズ警備員の完成です。

いよいよ式のはじまりです。子どもたちは列になってやってくる綺麗なお客様たちに声を張り上げ、会場への道を案内します。

お庭に巨大なテーブルを設置した、ウェディングの会場。昨日まで降っていた雨も奇跡的にあがり、気持ちの良い風が吹いています。
席についたお客さんの待つ、ヴァージンロード、さあ、今です!
横一列に並んだ子どもたち。絨毯を後ろ向きに転がして広げていきます。その向こうから、新郎新婦がそこを踏みしめながら入場します。
「ころころころころ。」
みんなで小さく揃えた声が、なんとも可愛らしくって、そこを歩く、新郎新婦も可愛くって、、、。
途中、次女のさーちゃんがこんなお式にサンダルをはいてきていたことを誰にも指摘されないまま、絨毯にサンダルが巻き込まれるという珍事件が起こりましたが、なんとかミッションを終えた子どもたち。なんだかとっても得意げです。

楽しい時間はあっという間です。

一人一人とお客さんは帰っていきます。しばらく続いた誰かとの共同生活、最後の一人も、やっと、帰りました。

気づくと、また、4人です。気づけば、久しぶりの家族だけのこの場所。

後に残った片付けや、今までの疲れでぐったりする大人を横目に子どもたちは満足げにまた言うのです。

「次は誰がくるの?!」

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山本 祐布子(やまもと・ゆうこ)

イラストレーター。切り絵作品、ドローイング作品を中心に、雑誌、装丁はもちろん広告・エディトリアル・プロダクトと、ジャンルを超えた活動を行う。ブログやインスタグラムでは、2人の娘たちの姿や、日々の小さな出来事等を綴っている。夫の蒸留家修行を見守るため、2015年にドイツ滞在。現在は千葉在住。 yukoyamamoto.jp https://www.instagram.com/yukoyamamotomitosaya/



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