
連載:山本祐布子の「子どものいる風景」 我が家にお風呂がつきました!【山本祐布子の「子どものいる風景」】
この連載は……
イラストレーター・山本祐布子さんのエッセイ。ふたりのお子さんと暮らす、家族の日々を綴ります。
vol.34 お風呂っていいね

我が家にお風呂がつきました。
といいますのもこの約二年間、引っ越してきたこの薬草園の中にはお風呂というものがありませんでしたので、住宅にしている棟からすこし離れた場所にある、宿直用のシャワーを使用して、なんとか日々をやり過ごしていたのです。
寒い日など、真っ暗な中大きな籠をかかえてお風呂に向かうこの心細さといったら、手探りで電気のスイッチをつける、この不安といったら。
そんな我が家でしたので、お風呂の設置は急務でもありました。
自宅の改装にやっと着手できるようになったこの年末、お父さんは張り切っています。
「年内には!お風呂つけるぞ!!」
研修棟であったこの建物には、一階部分に大きなスペースをしめて4つもトイレがあり、そこの一部をお風呂にするという計画でした。
もとトイレということに若干ひっかかりをもってしまうネガティブ思考の私。だけどお父さんの張り切りを遮るわけにはいきません。
年末の大掃除もそこそこに、お風呂制作に励みます。クリスマスイブには、二人して不織布のつなぎ着て、壁と床のペンキ塗りです。泣けました。
そうこうして、年末には間に合わなかったものの、お正月のうちに、ようやく、湯船が付きましたー!
以上。
広く冷えた室内に、湯船がポツン。シャワーもまだついていず、他の洗面台的なものも、まだついていません。とにかく、湯船は付きました。
内心、えーーー。。。と思う私の脇から大喜びで飛んできたのは、
「わーい!!お風呂だお風呂だーーー!」
お二人の娘さんたちです。
「さっそくはいるぞーー!」
ペンキ塗りたての床をぴたぴたと湯船にまっしぐら。湯船にはいったたっぷりの熱いお湯に、狂喜乱舞です。
翌日には念願だったバスソルトも買ってきて、きれいな緑色のお湯に元気な2つの真っ赤な顔が浮かびます。
なぜかはじまるアニメ劇。お風呂の中の二人は役者になります。
「行かないで!」
「行かなくちゃいけないんだ!」
がし!と抱き合う、このシーンを、この数日で何回か目撃しています。
お菓子の入っていたおもちゃのマイクがいつの間にか導入されていて、順番にそれを握り、ちょっと響きのよい浴室で、朗々と歌いあげます。
いつまでもいつまでも、入っています。
目線を引いて眺めると、やっぱり、広い部屋に、ポツンと湯船。
ああ、変だなあ。家って、変わってるなあ。。
とにもかくにも新年は、こんな嬉しいニュースではじまった一家です。
今年も、頑張ろう!