
連載:山本祐布子の「子どものいる風景」 教えてなんか、ないのにな。自分の世界を切り開いていく娘たち【山本祐布子の「子どものいる風景」】
この連載は……
イラストレーター・山本祐布子さんのエッセイ。ふたりのお子さんと暮らす、家族の日々を綴ります。
vol.35 わたしはおしえていません

毎日を必死で、カレンダーに追いかけられながら生きているとふと、このままあっという間に
時が過ぎてしまうんだな。。。なんて、思ったりしませんか。
子供を見ていると、月並みですがどんどん成長していく姿に、
こんなことができるの?!教えてもいないのに!?と、目を丸くしてすごーい!って
これまた単純な言葉で驚く毎日です。
クラスで流行りの言葉から遊びや歌、手品、テレビのキャラクター、お友達のお家にある、手にとったこともないような本や漫画。
私が教えなくても子どもたちはあらゆる情報源からぐんぐんいろんなことを吸収していきます。
上のみーちゃんは今トランプの手品に夢中。いとこのおねえちゃんのそれはそれは鮮やかな
手さばきによる手品をお正月に見せつけられ、それはすべて「YouTube」からの知識であることも
教えてもらい、毎週一日だけ、決まった時間にパパのパソコンで「YouTube」を食いつくように
見ながら特訓中です。
新ネタをマスターしたら、家族の誰かに披露します。
それがまた、結構なものなのです。おぼつかなかったシャッフルもだんだん上手くなり、
時々不思議な顔であらぬ方向に隠れたりごまかし笑いが気持ち悪かったりしますが、大成功した時は大人も「えーー!なんでーー!」と
叫びたくなる仕上がりです。
教えてなんか、ないのにな。
下のさーちゃんは毎日おしゃれや手作りに夢中で、いかにかわいい夢の世界にいられるかが一番大事。
平日の朝は時間がないから私が洋服を選んで着せているのですが、週末は自分で決めて好きなように
服を着ます。
「おはよー・」
ふと振り向くとなんともまあ。。。!
長袖の上に半袖にさらにカーディガン、スパッツにスカート二枚、スカートも腰の下の方までずらして上のスカートとのレイヤーを調整しています。
良く言えば絵本の中の女の子。悪く、、、、はいいません(笑)
とまあ、二人は性格ばらばら、のりもちぐはぐ、ではありますが、どんどん自分の世界を切り開いているご様子。わたしの入るスキなどどうやらなさそうです。
私たち親が、たくさんのことを子どもたちから教えてもらって、新しい世界を見せてもらっているようにも思えるのです。
ある日。お友達のいる熊本でのこと。カフェで席を待つ間、スツールにお友達と三人並んで本を読んでいました。
ふとさやちゃんがわたしにむかって
「ねえ、さやちゃんて、びぼでぃそれともおぶすぼでぃ?」
一瞬何語をしゃべっているのかわからなくなりましたが、それは
「美ボディ、それとも、おぶすボディ?」
だったのです!!
だいぶ間が空きましたが一同それがわかった途端に大笑い!!真剣な顔で「素敵な女の子になれる本」の中で、それがとても気になってしまったようです。
親が教えなくてもこうして、いろんなことを、いろんなものが教えてくれる。
時に、それが偏ったりしたら、良くないな、って思うけど、ね。
みんなでもちろんこう答えました。
「さやちゃんはとっても美ボディだよ!」と。
あなたたちが、最高だ!ということは、常に、教えてあげよう。
そう心に誓ったのでありました。