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Column 子育てエッセイ

坂上みきの「君はどこから来たの?」・1ハッと気づいた、息子の言葉の意味すること【新連載・坂上みきの「君はどこから来たの?」】

2017.05.05

ラジオパーソナリティ・坂上みきさんの新連載がスタート!

ひょんなことからニュージーランドの男性と出会い、
紆余曲折を経て、息子が生まれた!
日々雑事に追われつつ、その感慨をかみしめる新米ママの
一喜一憂を大公開。

この連載は……

結婚後、大きな決心をして、子どもを授かるに至ったラジオパーソナリティ・坂上みきさんが、一人息子との触れ合いや友人たちとの会話を通して遭遇するさまざまな感情をストレートに伝えていきます!


第1回 母親教室では教えない、たった一度のミッションとは?

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「君はどこから来たの?」って、言葉を覚え始めのころ、この子に聞いてごらん。

――出産祝いに来た友人が、傍らのバウンサーですやすや眠る、生まれたてのわが子を横目で見ながら意味ありげにほほ笑んだ。

「なんで?」と聞くと、たいていの子がその質問に対して、神がかった回答をし、それはちょっと鳥肌ものだよ、というのだ。

いくつか例を挙げて語ってくれた話を要約すると、
「どこからきたの?」
「う~んと、神様がね、あそこの2人はとても君に会いたがっているから、行っておいで。それがパパとママってわけ」的な話だ。

「またまたぁ~」とこの手の話を受け付けない人は、スルーしてもらってかまわない。

私もどちらかというと猜疑心が強いほうだから、その気持ちもわかる。

試しに、身近にいた5歳の子を持つシングルマザーのヘアメイクさんに、聞いてみた。と、彼女は当然と言わんばかりに、「そうそう、それね!」。ええっ「それね」ってくらいポピュラーにその質問事項はとらえられていたのか?

こっちはそんなこと、母親教室でも教えてもらってないゾ。

「『とっても苦しいお部屋にいて、早く出たかったんだ』って答えたんですよ。私、妊娠中に離婚したので、それも、結構、修羅場だったので、もう、びっくり。悪いことしたな、って泣いちゃいました」と言うではないか。

子どもはどこまで知っている?
想定外のミラクル回答に…

それから、待った。待ちましたとも。

その質問をぶつけられる「言葉を覚え始めのころ」、って時期を。

友人によると、何度も聞いてはダメ。子供が何かを察してそのことには口を閉ざしてしまうから、だそう。それほどナイーブでデリケートな、後にも先にも1回こっきりの覚悟のミッションらしい。

3歳前後だったろうか、片言の会話が成立するようになってきたなと確信できたある夕食の折、緊張しつつも何気なさを装って「ねぇねぇ、う~ちゃんはさぁ、どこからきたの?」とほうり投げてみた。「えっ?」手転がしで遊んでいた息子はトミカの手を止め、顔をあげ、一瞬みつめ「駐車場」と短く答えた。

エエッーーーー! なんじゃそれ! 君は、駐車場から来たのか!

神がかりとは対極にあるこの現実的な回答はなんだ!

車がらみを連想させた、トミカのせいかッ!と逆恨みもした。やけくそになり、「どこの駐車場よ?」と畳みかけたら、「う~んとね、角を曲がってすぐの」。とさらに卑近なお答え。完全にミッションは失敗である。

諦めきれなかった私は、たった1度の、というお告げを無視して、その数か月後に再度同じ質問をトライしてみた。するとどうだ、またしても「駐車場」。

う~ん。我が家の目に付く至るところにトミカがあるからなぁ。惨敗である。

ま、この子にそんな神がかりな回答を期待するほうが、間違っていた。

そんなことを忘れていたある日、仕事仲間がわいわいと家に集まった。

ネタとして、例の話を「もう、現実的な回答でがっかりよ」などと語り、ひとしきりみんなで笑った後に、霊感の強そうな女性プロデューサーがポツリと真顔で言った。「駐車場に意味があるんじゃないですか?心当たりはありませんか?」

皆がしんと静まり返った数秒間に頭をぐるぐると巡らせ、ハッと気づいた。

そして、次の瞬間、私はハラハラと涙を流していた。

封印していたあのこと。
息子は見ていた!?

この子が産まれる少し前に子を授かったことがある。たった数週間の命だった。

超高齢ゆえ、「できた」と聞いた時は、天にも、宇宙にも上る気持ちで狂喜乱舞、浮足立った。それが2回目の診察の際に「心音が聞こえませんね」という申し訳なさそうなドクターの声で奈落に突き落とされた。いや正確に言うと、頭が真っ白になり、顔なじみのドクターや看護婦さんに向かって「そっか。仕方がないですね」と自分でもびっくりするくらい冷静に答え、その場を辞したのだった。

そしてまさに病院の「角を曲がってすぐの駐車場」にたどり着いた途端、まるで映画のシーンか何かのようにアスファルトに膝から崩れ、道行く人目もはばからず、ウォ~ンウォ~ンと泣きじゃくった。

今思い出してもヒリヒリと心が痛い。

おとなたちの輪から離れひとり遊んでいた息子を呼んで、「あれって病院の駐車場だったの?」と聞くと、こともなげに「そうだよ。ワンワンと一緒にママのこと見ていたんだよ」と答えるではないか!? ワンワンは問いただすまでもない、数年前に亡くなった愛犬ココのことだ、きっと。息子にはもちろん、犬がいたことを話したこともない。皆が鳥肌った。そして私は、ギュッと息子を抱きしめた。

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仔犬の頃のココ。人間でいうと今の息子くらいか?
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坂上みき(さかじょう・みき)

ナレーター、イベント司会、ラジオパーソナリティを務める傍ら、映画コラムやエッセイを執筆。東京マラソンでは、自己ベスト3時間58分で完走。
2006年に12歳下のニュージーランド人と結婚、2012年に男児出産。
現在は、日本テレビ「暇人ラヂオ」に出演、ラジオ日本「坂上みきのエンタメgo!go!」ではパーソナリティを務めるなどして活躍中。
「最近インスタを始めました! 子どもの撮った写真をアップしていきますので、ぜひフォローしてくださいね!」 @mikisakajo

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