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Column 子育てエッセイ

坂上みきの「君はどこから来たの?」・2可愛くて仕方ない。息子の言いまちがい【坂上みきの「君はどこから来たの?」】

2017.05.15

ラジオパーソナリティ・坂上みきさんの新連載がスタート!

ひょんなことからニュージーランドの男性と出会い、
紆余曲折を経て、息子が生まれた!
日々雑事に追われつつ、その感慨をかみしめる新米ママの
一喜一憂を大公開。

この連載は……

結婚後、大きな決心をして、子どもを授かるに至ったラジオパーソナリティ・坂上みきさんが、一人息子との触れ合いや友人たちとの会話を通して遭遇するさまざまな感情をストレートに伝えていきます!


第2回 母の心を鷲づかみにする 超天然の言いまちがい!

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子供の言いまちがいほど、愛おしいものはない。

4歳の息子は「エレベーター」を「エベレーター」という。母はそれを決して言い直したりなんかしない。言いまちがってる様が可愛くて仕方がないからだ。

マンションの近所の仲良しおじさん小野さんが、「エレベーターだよ」と必ず正してくれる。「エベ、あれ? エレベーター?」と2人が向き合う姿は、何とも微笑ましい。その1秒後には、「じゃあね、小野さん。ママ! エベレーターが来たよ」と元の木阿弥で、小野さんの調教は果てしなく続く。

高島屋は「タカシヤマ」と言いまちがえる。

月に1度、高島屋のキッズヘアサロンに髪を切りに行く際、必ず保育園の先生に「今日ね、タカシヤマに行くんだ」と自慢げに言う。先生はそんな事例には慣れたもので、「ハイハイ、たかしマや ね」とマを強調しながら訂正し貫禄であしらう。

息子は全くその意図を汲み取れず、相変わらず「タカシヤマ」で、その度に母は、琴欧州のような端正な顔立ちの、でも体はでっぷりあんこ型のお相撲さんを想像して、ぷぷっと笑ってしまう。

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近所の子供服屋さんの、花メガネがお気に入りの息子

本屋で、tupera tupera の『やさいさん』という絵本を見ていた時のことだ。それは、葉っぱの形から根菜を当てるしかけ絵本で、大人でもややハードルが高い。なので、例えば、ニンジンの葉っぱの場合「オレンジ色でぇ、ウサギさんが好きな…」と母がヒントを出し、「ニンジン!」と答えさせて遊んでいた。ごぼうの番になって、ヒントに窮した母は、「お弁当の時にニンジンと炒めたりなんかして…ほら、ほら」

「ああ、金ぴら五郎!」。

誰だよ、それ?

悪徳金融のヘらへらしたお兄さんか!? それとも、三度笠の旅がらすか!? 横で雑誌を立ち読みしていたお姉さんの肩が、クククと震えていた。

記憶の引き出しに眠る
極上の言いまちがい

遠い昔の夏の日。学生時代最後の夏休みを、祖父母の家で過ごしていた。耳の遠くなってきていた祖父母のリビングでは、いつも、テレビの音量が少し大きい。昼ご飯をいただきながら耳に入ってきたNHKニュースに、箸が止まった。それまで耳元をざわつかせていたセミの鳴き声も止まった、ように感じられた。

向田邦子さんの訃報だった。

小説も、随筆も、テレビドラマも、黒いワンピースの水着写真も、すべてが好きだった。あの名文が、もう生み出されることがないのかと思うと、とてつもなく悲しい。

『眠る盃』は、歌曲「荒城の月」の「めぐる盃 かげさして」を「眠る盃 かげさして」と歌ってしまう向田さんの覚え違いの話から、家での酒宴の話にうつり、昭和の家庭の原風景を見せてくれる、名エッセイだ。

息子が、言いまちがうたびに、私のどこかで「眠る盃」がうずく。

10年ほど前の同じように夏の暑い日、愛犬ココが死んだ。

ココは少々変則的な飼われ方をしていて、その当時、千駄ヶ谷の路地を挟んでお向かいに住んでいたスタイリストのyaccoさんと2人で一匹を飼っていた。路地を行ったり来たりしながら、ココにとって、それはそれで充実した日々だったのではないかと推察する。

小さくなった遺骨を、海辺の我が家の庭に埋めることにした。

海風が通る一番の場所に、スコップで穴を掘り、ココを埋葬し、その上にサクランボの樹を植えた。Yaccoさんと、息子のゆうじ君と、私の3人でその作業をしている最中、一匹のアゲハチョウが、我々にずーっとまとわりついていた。

人を怖れることなく、肩に、髪に、腕に、足に、ヒラヒラと羽を動かしながら、3人を確認するかのように、3人の間を行き来した。明らかに普通ではなかった。

「ココですかね?」「うん、ココだね」

蝶々には、そんな不思議なところがあると、のちに多くの人から聞いた。

ちょうちょ ちょうちょ
菜の葉に とまれ

息子は「菜の葉」の個所を「はのな にとまれ」と覚えまちがって、大声で歌う。
母は、「菜の葉 じゃない?」と言ってみる。

「違うよ。はのな だよ」。
「へぇぇ、じゃぁ、はのなって何?」
「う~ん、よくわかんないけど、葉っぱなんじゃない?」とうそぶく。

子供と暮らすと、景色が変わる。

幼いころから慣れ親しんだ童謡も、春の菜の花の黄色や葉の淡い黄緑から、夏の木々のむせるような深くて濃い緑色に変わった。少しばかりのセンチメンタルをともなって。

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坂上みき(さかじょう・みき)

ナレーター、イベント司会、ラジオパーソナリティを務める傍ら、映画コラムやエッセイを執筆。東京マラソンでは、自己ベスト3時間58分で完走。
2006年に12歳下のニュージーランド人と結婚、2012年に男児出産。
現在は、日本テレビ「暇人ラヂオ」に出演、ラジオ日本「坂上みきのエンタメgo!go!」ではパーソナリティを務めるなどして活躍中。
「最近インスタを始めました! 子どもの撮った写真をアップしていきますので、ぜひフォローしてくださいね!」 @mikisakajo