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Column 子育てエッセイ

坂上みきの「君はどこから来たの?」・8「53歳 超高齢出産!」の文字が踊った、あの夏のこと【坂上みきの「君はどこから来たの?」】

2017.07.15

ラジオパーソナリティ・坂上みきさんの人気連載!

ひょんなことからニュージーランドの男性と出会い、
紆余曲折を経て、息子が生まれた!
日々雑事に追われつつ、その感慨をかみしめる新米ママの
一喜一憂を大公開。

この連載は……

結婚後、大きな決心をして、子どもを授かるに至ったラジオパーソナリティ・坂上みきさんが、一人息子との触れ合いや友人たちとの会話を通して遭遇するさまざまな感情をストレートに伝えていきます!


週刊誌がやってきた!~超高齢出産前狂騒曲1

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真夏の太陽がジリジリ照りつける、ちょうどこの時期になると思い出す。

5年前のあの日は、海辺にある、週末の家で過ごしていた。

出産まであと2か月、スイカのようにパンパンにふくれあがった重いお腹を抱え、「普段ならもう少しスタスタ歩けるのになぁ」と一人ごちながら、家に続く急な坂道をふ~はぁ~ふ~はぁ~休み休み上って、やっとたどり着いたと思ったら、ピンポ~ンとインターホンが鳴った。

見ず知らずの男性の声で「このあたりに、ゼーゼー坂上みきさんのお宅がゼーゼーあると聞いたのですが・・・」息が上がっている。あの坂を上がってきたんだ。しかし、どこか怪しい。返事を躊躇する。少し間をとって、
「えーっと、ワタクシですが・・・」と答えると
「エエエ! ご本人ですかぁ?・・・・困っちゃったなぁ」
何を困るというのか?
「どういったご用件で?」とたずねると、
「単刀直入に伺います。妊娠していますか?」
「へッ?」不意打ちだった。

そっか、女性週刊誌の取材ってこんな風に突然にやってくるのか。

その記者さんは、どこかで情報をキャッチし、「行って来い!」と言われ、こんな海辺までやってきて、近所の方に聞き込みをしてみよう、と手始めにインターホンを鳴らしたら、それが当事者だった。まさに、「ピンポ~ン!大当たりぃ~」で慌てっちゃったのだった。

そこからは腹をくくったのか、「いつご出産ですか?」だの、「高齢出産になりますが、そのあたりはどのようにお考えですか?」だの矢継ぎ早に質問されて、こちらはこちらで、寝耳に水なもんだから、「そうですが、なにか?!」と構えてみたり、ごにょごにょと曖昧に濁したりして、どうにかこうにかやり過ごした。

インターホン越しのままお帰りいただいたので、どんな方なのかわからずじまいだが、困惑した。自分の中では、超の付く高齢で産むことは十分承知していたけれど、「やっと授かった」という思いの方が強くて、年齢のことはどこかに追いやってしまっていたのだ。

また、ラジオやナレーションという、タレントとしては比較的地味なポジションで生きてきたので、話題にも上らないと思い込んでいた。

いやはや、どうしたものか?

すると今度は、あるスポーツ紙から「妊娠なさってますよね。明日の朝刊に出ますんで、よろしく」的な電話が直接かかってきて、面食らった。

どこで番号を調べた?

慌てて、当時出演していた朝の情報番組のプロデューサーに、「自分のレギュラーの番組で、まずご報告するのが筋ではないか?」と相談をし、スポーツ紙の朝刊にデカデカと「53歳 超高齢出産!」の文字が踊ってしまった後だったけれど、それを受ける形で、その日の番組内で報告する時間を作ってもらった。

SNS時代の宿命?「おめでとう」の嵐と・・・

そこからが凄まじかった。

電話とメールが鳴りっぱなし。親しい友人・知人はもちろんのこと、中学・高校・大学の古い友人、仕事で知り合った方々、親戚、海外に暮らす友人まで、「念願かなったね」「やるなぁ」など「おめでとう」の嵐。

さらには、マスコミのコメント・出演依頼、気の早いところでは、「本にいたしましょう」などオファーが殺到。

2~3日は続いただろうか。

こんなこと、後にも先にも一生に一度しかないだろう。有難いことだと感謝しつつも、怖かった。SNS時代の宿命で、心無い中傷も、ごくごくわずかだが、あった。その文言が重くのしかかり、ホルモンのせいもあり、「気にするな!」ったって、涙が出てくる。

こんな大事な時期にストレスだけはため込みたくなかったので、「申し訳ございません」と謝りながらオファーはすべて断り、メールの返信もままならぬまま、ただただ嵐がすぎるのを、静かに部屋で膝を抱えながら待っている(お腹がせり出してるから、実際には抱えられないけど)・・・そんな心境だった。

見知らぬ人に声をかけられることも多くなった。

そのほとんどが女性で、まるで家族かなにかのように「頑張ったねぇ」と、手を取り合って喜んでくださる。おおむね好意的だったが、中にはすれ違いざまに、「産んでからが大変なのにね」と、吐き捨てるおばさまもいらした。

「それも覚悟の上」と喉元まで出かかったが、今、子育ての真っ只中にあって、「おっしゃる通り!」と痛感している。

でも「大変だけじゃないですね。うれしい、たのしい、もいっぱいありますね」と、今なら追いかけてって、言えるかもしれない。

レストランで友人と会食をしている折に、隣の席の方がさめざめ泣きだすということもあった。年齢は40歳前後だろうか。聞くと、ずーっと子供が欲しくて、不妊治療をしてきたが、最近、諦めたばかりだったという。

「本当に良かったですね。おめでとうございます」と絞り出すように声をかけてくださりながら、みるみる大粒の涙があふれ出てきて、嗚咽に変わった。

複雑な心境だったと思う。
そのすべての感情が、痛いほどよくわかる。
自分もそうだったから。何度も何度も、そうだったから。

その後も、週刊誌にいくつか取り上げられたりしたようだが、出産前に心が乱れるのはもうイヤと、一切目にしなかった。やがて「超高齢出産前(まえ)狂騒曲」ともいえる大騒動は、急速に幕を下ろし、比較的穏やかな気持ちで出産まで過ごすことができた。

あ、そうそう、スポーツ紙の第1報のおかげで、別の盛り上がりがもう一つあった。大見出しに「伝説の美人DJ」と書かれてしまったことだ。

以前、飲み会の席で、イタリアから帰ってきたばかりのある女子が、スリだか痴漢だかちょっとした被害に旅先であって「もう殺されるかと思ったんだからね」などと武勇伝を語っていたら、誰かが
「そしたらさぁ、見出しは『ミラノ美人OL殺人事件』とかだよね?」
「そうそう。新聞って、なんだって女だったら「美人」付けとけ!みたいな?」
「そうそう。9割がた美人にしてもらえる。写真見たら???だよね」
ハハハハハハ・・・と皆で大いに盛り上がったことを思い出し、大苦笑だった。

案の定、仲の良い女友達は、メールの頭に必ず「伝説の美人DJ さま」と付けてくるし、電話すれば、おっ、その声は「伝説の美人DJじゃないの?」とからかわれ放題! こちらの終息の方が、速やかに願いたかった。

潮が引いて、いよいよ出産まで1か月。「出産準備」という別の狂騒曲がこれまたあるのだが、それはまた別の機会にでも。

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たくさんのメッセージをいただいて、勇気りんりん
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坂上みき(さかじょう・みき)

ナレーター、イベント司会、ラジオパーソナリティを務める傍ら、映画コラムやエッセイを執筆。東京マラソンでは、自己ベスト3時間58分で完走。
2006年に12歳下のニュージーランド人と結婚、2012年に男児出産。
現在は、日本テレビ「暇人ラヂオ」に出演、ラジオ日本「坂上みきのエンタメgo!go!」ではパーソナリティを務めるなどして活躍中。
「最近インスタを始めました! 子どもの撮った写真をアップしていきますので、ぜひフォローしてくださいね!」 @mikisakajo

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