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Column 子育てエッセイ

坂上みきの「君はどこから来たの?」・12自分のこの目で確かめたい、立ち会いたい。初めての〇〇【坂上みきの「君はどこから来たの?」】

2017.08.25

ラジオパーソナリティ・坂上みきさんの人気連載!

ひょんなことからニュージーランドの男性と出会い、
紆余曲折を経て、息子が生まれた!
日々雑事に追われつつ、その感慨をかみしめる新米ママの
一喜一憂を大公開。

この連載は……

結婚後、大きな決心をして、子どもを授かるに至ったラジオパーソナリティ・坂上みきさんが、一人息子との触れ合いや友人たちとの会話を通して遭遇するさまざまな感情をストレートに伝えていきます!


「初めて」の魔力に敵う者なし!?

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アナログな私は、紙のスケジュール帳をいまだに使っている。

4月始まり、見開き1週間、縦に時間割の付いた、高橋の手帳。

これに馴染んでしまってからというもの、ずっと、使い続けている。息子が生まれた年からなので、自分のデスクの上の見上げた先、1番手に取りやすい棚に、息子の年齢分、2012、2013・・・と金文字で西暦が書かれた赤い背表紙が並ぶ。

一度、タクシーの中で仕事の電話をしながら、「あ、ちょっと待ってくださいね。今、手帳で確かめてみますから」と取り出し、書き込み、電話を切ったその直後に、運転手さんに「スケジュール管理、まだ、手帳をお使いなんですか?」と石器時代の人間に出くわしたくらいの驚きをもって、言われたことがあった。それが、デジタル世代の若者ならまだしも、年配のドライバーさんだったので、こちらが逆に驚いた。

そっか、タクシーの乗客の多くが、携帯でスケジュール管理しているのを目の当たりにされているのですね。ふむ、それならそれで、開き直った。あまのじゃく気質全開で、私はアナログを貫き通す!

だからってここで、紙の手帳の良さを、あれこれ力説するつもりはない。

が、一つだけ言うと、きちんと書き記した自分のスケジュールとは別の余白部分、例えば日付けの数字の周りのちょっとした空きスペースに、その日、子供のことで気づいたことや、「初めての○○」といったことを、思いつくがままに、乱雑にメモしておけることが、メリットだ。

乱雑なほうは、子供に関することなのね、と一目でわかるし、慌てて書いた感や、ちょっとしたシミに、その当時の育児の大変さ具合も刻まれている気がして、愛おしい。

「初めての○○」。

この子が初めて体験する事柄なのだ、と思うと、親ってのは必要以上に感動するものでね。それは、うるうると涙した記録でもある。

お宮参り、お食い初め、初節句はもちろんのこと、初めての寝返り、歯の生えはじめ、初めて立った日・歩いた日、初めての発熱、初めてのヒエピタ!? 初めての入院、初めての温泉、初めて友達に噛まれた日?などなど、多種多様。

当然、生まれたての1年目、2年目は「初めて」が目白押し。4歳の今や次第に少なくはなってきているが、近いところでは、「初めての吉牛(吉野家の牛丼)」なんてことまで記している。

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保育園にお迎えに行き、その足で夕飯をどこかで食べ『ミニオンズ』を映画館で観よう!と計画したが、時間があまりなく、まずチケットを買って座席を確保し、少しの時間で腹ごなしができる場所はないかなぁと、ぐるりと見渡せば、映画館のすぐ隣にお馴染みの「吉野家」のオレンジの看板!

「急げ~」と飛びこんでみたものの、繁華街の夕食どき、小さな店舗の壁沿いにずらりと並ぶお客さん。それがどんどん回転していく様子。カウンターの中のお兄さんたちの、システマチックな動き。そのすべてを、息子はやや興奮気味に興味深く観察しているのがわかる。

たちまち目の前のハイチェアが2人分空き、足の届かない丸椅子が嬉しかったのか、左右にグルングルン揺らしていると、あっという間に目の前に牛丼が運ばれてきた。

「早いねぇ~」と感心しながら一口ほお張り「うん、おいしい」と述べた後、普段は食が細くてだらだら食べてるくせに、せっせといただいていた。

大人の分量なので、流石に丼の底のご飯を残していて、「ツユダク」を頼んであげればよかった、と母はちょっぴりだけ後悔した。

まぁ、なんてささやかな話。

他人様にはどうでもいい些末な話で恐縮だが、「初めての」と付け加えておくだけで、どこか祝祭感を伴い、記憶に強さが加わり、光景がまざまざと浮かんできたりするから不思議だ。言葉の魔力。言霊である。

サラ、お前もか。映画の中の彼女に共感!

先日、テレビ収録の前日にネイルサロンに出かけた。息子が生まれて5年近く、爪にオシャレすることを封印してきた。乳幼児に触れる手先が華美であることに、なんとなく違和感があったからだ。手のかかる時期に、サロンに行く時間を捻出するのも難しかったしね。

節くれだった短めの指に、血管が青く走る甲。若いころ「働いてきた手だねぇ」と少し思いを寄せている男性に言われて、その武骨っぷりを恥じたこともあったが、大地を握りしめるような力強さは、母の誠実の証のようにも見えてきて、手入れの行き届かない手も、それはそれで好きだった。

が、4月からのテレビのレギュラー番組は、テレビなのにラジオブースからの放送で、必然的に上半身しか映らない。となると手の動きが目に付いて、今度は武骨な指が似合わなくなり、息子も乳児ではなくなったことだし、と、またサロン通いが始まった。

そのネイルサロンでは、爪のお手入れ中のサービスとして、壁に備えつけられたモニターに、映画のDVDが流される。ラインナップは女性の好きそうなラブコメ中心で、仕事柄、すでに1度は観たことのあるものも多いが、お気楽な分、観返すのも楽しい。『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』や『マイ・インターン』といった具合。

そんな中、観のがしていて初めてだったのは、『ケイト・レディが完璧な理由』。サラ・ジェシカ・パーカーが結婚・子供・仕事、すべてを完璧にこなそうと悪戦苦闘するコメディだ。

NYに単身仕事で出かけ、帰ってきて息子を抱き上げた時に、息子の何かが違うぞ!と異変に気づき、ベビーシッターの若い女性のもとに駆け寄り、険しい顔で「行っちゃったの?」と問う。

シッターさんは平然と「ええ。伸びてきてましたからね」と答える。

ショックを隠せないサラは、泣き顔で「うぇ~ん、この子の『初めての美容院』に、立ち会えなかったぁ」とひどく嘆くシーンに、笑った。

コメディだからデフォルメしてあるが、気持ちはわかる。そうなのだ。「初めての○○」は、自分のこの目で確かめたい、立ち会いたい、のが母心。わが子のことなのに、他人に先を越され、後で報告されるほど悔しいことはない。

生後6ヶ月から保育園にお世話になっている息子も、おそらく保育園で「初めて」を経験してしまっていることも多々あるはずだが、そこんところをおもんぱかってか、先生方は、ことさらに報告しないでいてくれているような気がしないでもない。

「初めての寝返り記念日」などと、手帳に赤の花丸付きで派手に記しているが、実際はもう少し前に経験済みなのかもしれない。ま、でも、それは、目をつぶろう。
 

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年輪をかさねてきた手。仕事の手であり。母の手でもあり。
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この5年間の“私”が詰まっている、と言っても過言ではない、アナログなスケジュール帳。
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坂上みき(さかじょう・みき)

ナレーター、イベント司会、ラジオパーソナリティを務める傍ら、映画コラムやエッセイを執筆。東京マラソンでは、自己ベスト3時間58分で完走。
2006年に12歳下のニュージーランド人と結婚、2012年に男児出産。
現在は、日本テレビ「暇人ラヂオ」に出演、ラジオ日本「坂上みきのエンタメgo!go!」ではパーソナリティを務めるなどして活躍中。
「最近インスタを始めました! 子どもの撮った写真をアップしていきますので、ぜひフォローしてくださいね!」 @mikisakajo

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