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Column 子育てエッセイ

坂上みきの「君はどこから来たの?」・16私が母親になることを見抜いてた人のこと【坂上みきの「君はどこから来たの?」】

2017.10.05

ラジオパーソナリティ・坂上みきさんの人気連載!

ひょんなことからニュージーランドの男性と出会い、
紆余曲折を経て、息子が生まれた!
日々雑事に追われつつ、その感慨をかみしめる新米ママの
一喜一憂を大公開。

この連載は……

結婚後、大きな決心をして、子どもを授かるに至ったラジオパーソナリティ・坂上みきさんが、一人息子との触れ合いや友人たちとの会話を通して遭遇するさまざまな感情をストレートに伝えていきます!


母親になる私をずばり見抜いた人がいた!

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母になる私を見抜いた人がいる。

まだ、安定期に入っておらず、家族と20年来の親友以外には誰にも告げていなかった妊娠。

お腹が少し張ってきて、若干、体重も増えつつあったが、「メタボかな?」くらいの感じで、「太ったんじゃない?」と口にする人すらいなかった。

つまり、見た目には、全く変わらない状態だったってことだ。ましてや、妊娠するには超高齢である。まさか妊娠しているとは、私が母になるとは、誰も思いもよらない、桜が満開のころのこと。

久しぶりに小暮徹・こぐれひでこ夫妻と、共通の友人と4人で、外苑前の「ル・ゴロワ」で会食することになっていた。

試写会の帰りに渋滞にはまって、やや遅れて到着した私が、「ごめんなさい、ごめんなさい、花見の人で混んじゃって」などと言い訳しながら奥の席に座るなり、ワインですでにほんのりの徹さんが、一瞬、時間にすれば1秒か、0.5秒のこと、こちらを見たな、と思ったらニッコリほほ笑んだ。

「ちょっと見ないうちに、何ていうか、変わったねぇ」と言うではないか。

ドキッ。しらばっくれながら、「エエ? そうですか? 何だろう、何か変わりました?」

再び、徹さんはじーとこちらを見据え「う~ん、何ていうか、母親の顔」と言い切ったのだ。

ワワワワワ。

「あら、そうですか?」とさらりと受け流したものの(受け流すしかないだろう)、内心は、心臓バクバク、そして、すさまじく感心していた。

“写真家の眼”の確かさ、というか、鋭さに。

「妊娠してるよね」というベタな見抜き方より、妊娠してるかどうか、なんて知らん、でも、君は見まごうことなく、今、母の顔をしているのだよ、と言われているようで、ドギマギしながらも何だかとても嬉しかった。

凡百の、あるいは若造の写真家では、こうはいかなかったろう。

長年、被写体と向き合って、フォルムや表層だけではなく、その向こうにあるもの、そのうちにあるもの、その奥にあるもの、を瞬時に読み取る培われた“眼”が、見抜いていたのだ。日常のすべてのものが、きっと、違って見えているんだろうなぁ。

子供が生まれてから会いに行くと「あの時、徹くん、見抜いてたよね」と、ひでこさんは愉快そうに笑い、傍らで徹さんは、確信犯のようにニヤリとほくそ笑む。

安定期に入り、ぐんと急にお腹も大きくせり出し、いつまでも誤魔化しているわけにもいかなくなったころ、仕事のスタッフや、ご一緒していた出演者のみなさん、親しい友人たちに、順次、妊娠している旨を報告した。

皆一様にびっくりして、でも、すぐさま、「わぁ、オメデトウ」と喜んでくれる。高齢ゆえのうしろめたさというか、気後れなど、取り越し苦労だった。

あ、一人だけというか、一組だけ、共演していた双子のオネエだけが、声を揃えて「あら、やだ、姐さん、いくつよ?」と言ったが、黙殺!

20代・30代の女性たちに「実は……」と話すと、ほとんどがパッと目を輝かせ、やがてウルウルと涙目に変わり、中には号泣、嗚咽の人もいて、「泣かんでええ、泣かんでええ」と、こちらがなだめる一幕もあるほどだった。

私が長らく子供を欲していたことを知っていようといまいと、感性がみずみずしいのか、女性としてのシンパシーなのか、「出来ました」という言葉を聞いた途端に、ぐわーっと押し寄せてくるような「祝福モード」(「祝福オーラ」と言ってもいい)に切り替わる、その瞬間が好きだ。そしてその瞬間の彼女たちの表情が、とても素敵なのだった。

けど、「希望の星です」と言われるたびに、毎回、恐縮してしまう。そこには、お教えするような奇策も、飛び道具もない。粛々と歩む長い長い険しい道のりを、「あなたもどうぞ」とは、とても言えないからだ。

スピリチュアルな何かを越えて

自分が20代・30代の若いころ、多くの若い女性がそうであるように、占いやスピリチュアルに興味を持っていた。

未来は「可能性」と「未知数」に満ち満ちており、選択肢が山のようにあるうちは、自分の意志とは別のものに、ヒントをもらったり、背中を押してもらいたくなるものだ。

もともと疑り深いほうなので、それにどっぷりハマるとか、傾倒するということは一切ないのだが、職業柄も手伝って、取材と称し、東にいい占い師がいると聞けば出かけていき、西にいい“気”の神社があれば参拝する。そしてそれを、ラジオで楽しく報告するという日々があった。

当たる人もいたし、まったく持って、トンチンカンな胡散臭い人もいて、結局は、そこに頼っての人生ではないことに気づいて、その熱も冷めた。

長らくそういうことから遠ざかって、現実的に営々と暮らしていたある時、仕事の悩みを抱え相談した知人から、Nさんを紹介された。

彼女は、何と言えばいいのだろう、占い師でも、祈祷師でも、精神分析医でもない。

ヒーラーに近いと言えばいいのだろうか? 初めて会った時に、まず人として信用できると、ストンと胸のあたりにきた。

「あなたは何者ですか?」的な私の好奇心からくるぶしつけな質問に、「あなたは楽器だとして、私は、チューニングをする人だと思ってください」と静かに返答されて、腑に落ちた。

結局は、こうゆう人と接する時に重要なのは、その人の発する言葉が、どれだけ自分の中に溶け込むかってことだ。彼女の持つボキャブラリーが私の何かをくすぐり、私にうまくフィットするっていう感覚。

それから、悩んでいてもいなくても、半年に1度、彼女と話すようになった。

半年後の次回の日取りを決めるのは、彼女のスケジュールに合わせてという現実的なものではなく、目に見えない“何か”も総動員して「この人と会うのはこの日」と決めているようだ。

子供が欲しい思いも話はしたが、産めるとも、難しいとも、彼女は答えを出したりなんかしない。

そして私も何か、明確な答えを求めているわけではない。話すうちに、真ん中に戻されていく、正しい音が出る位置に戻されていけばそれでいいし、それが心地よかった。

そして子供が生まれて3ヶ月目に、ちょうど彼女と会う日が設定されていたので、エルゴベビー(抱っこ紐ですね)に入れて、自邸まで出かけていった。

エルゴから解き放たれた息子の顔をしばらく覗き込んだ彼女は、次に、私のほうに向きを変え、「もう、あなたはこれで大丈夫ね」とニッコリほほ笑んだ。

そしてなんということもない話をしながら、ゆるんゆるんと心地よくなって、「じゃあ」と玄関を出た時に、ふと、「あ、次回の日取りを聞いていない」ことに気づいた。

すぐさま戻り「次回は?」と玄関先で尋ねると「う~ん、もう、いいでしょ」とやわらかく言った。

突き放されたわけではない。何かを見抜いたような、この人の「もう、いいでしょ」は、自信をもって自分の道を、自分の思うように行けばいい、とお墨付きをもらったようで、力が湧いてきた。

が、ほどなくして、彼女の訃報が届いた。

「もう、いいでしょ」の言葉が、サヨナラの意味も含んでいたのだとしたら不思議な気持ちになる。淋しい、けれど、彼女にもらった言葉の数々が、私の心の中の小さな引き出しに、凛と並んでいる。

子供を宿してから、つくづく、いろんな人に、いろんな次元で、守られているんだなぁと、感ぜずにはいられない日々なんである。
 

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坂上みき(さかじょう・みき)

ナレーター、イベント司会、ラジオパーソナリティを務める傍ら、映画コラムやエッセイを執筆。東京マラソンでは、自己ベスト3時間58分で完走。
2006年に12歳下のニュージーランド人と結婚、2012年に男児出産。
現在は、日本テレビ「暇人ラヂオ」に出演、ラジオ日本「坂上みきのエンタメgo!go!」ではパーソナリティを務めるなどして活躍中。
「最近インスタを始めました! 子どもの撮った写真をアップしていきますので、ぜひフォローしてくださいね!」 @mikisakajo

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