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Column 子育てエッセイ

坂上みきの「君はどこから来たの?」・22彼との結婚を決意した理由【坂上みきの「君はどこから来たの?」】

2017.12.25

ラジオパーソナリティ・坂上みきさんの人気連載!

ひょんなことからニュージーランドの男性と出会い、
紆余曲折を経て、息子が生まれた!
日々雑事に追われつつ、その感慨をかみしめる新米ママの
一喜一憂を大公開。

この連載は……

結婚後、大きな決心をして、子どもを授かるに至ったラジオパーソナリティ・坂上みきさんが、一人息子との触れ合いや友人たちとの会話を通して遭遇するさまざまな感情をストレートに伝えていきます!


彼との結婚を決意したのは・・・

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真っ赤な花を咲かせる「ポフツカワ」。別名クリスマスツリー。   
(photo by Adobe Stock)

言うまでもないが、南半球のクリスマスは、夏だ!

ここ数年、クリスマスから年末年始にかけて、夫の国・ニュージーランドで過ごしてきた。

サンタが、水着にサングラス、サーフボードに乗ってやってくるご機嫌なクリスマスは、あくまでポストカードの世界で、実際にはイヴの夜も25日の朝も、家族で近所の教会のミサに出かけて行き、顔見知りの人たちと談笑、そして祈り、讃美歌を歌い、また家族で、ぞろぞろ家路につく。

クリスマスと言えば、NZではこの時期(12月~1月)、「ポフツカワ」の木に真っ赤な花が咲く。メイク用の頬ブラシのような形をした南国を思わせる鮮やかな赤い花は、高く広がる青い夏空によく映える。NZ原産。別名クリスマスツリー。

この花を目にすると「ああ、今年もこの季節がやってきた」と、私の中に「夏のクリスマス」がゆるゆると刷り込まれていく。

息子が初めてNZで過ごしたクリスマスは、1歳半のこと。何事につけてもおぼつかない年齢で、今振り返れば、可愛さマックスの時期だった。

夫の両親の住む町は、オークランド空港から南に車で1時間。家に到着する5分前に、レンタカーを路肩に停めて、後ろに積んだスーツケースの中をまさぐり、子供用サンタの衣装を引っ張り出した。「暑いけど、ちょっと我慢ね」と言い聞かせ、傍らにはプレゼントをギュギュッと詰め込んだ白い袋も用意。準備OK!

夫が玄関のベルを鳴らし、木の陰に隠れる。玄関の前には、重くて白い袋を肩に担げず、引きずったままの小さなサンタクロースが、ひとり立っていた。

ドアが開く。ママの「オオオ!」という感嘆の声が響き、続いて「ウォホッホ」とサンタのおじさんのようなパパの笑い声が聞こえてきた。そして、2人にハグされ、抱きかかえられながら、息子はドアの中へと消えていった。

よっしゃ、大成功!

どちらかというと、記念日に演出をするタイプではない。でも、なぜか夫の父&母に対しては、彼らを喜ばせたい、その喜ぶ顔がみたい、と張り切る自分がいる。

日本人と違って、「オオ!」だの「ワォ!」だの涙を流さんばかりのオーバーリアクションなので、喜ばせがいがあるからか? もちろんそれもある。

実の親では、距離が近すぎて、こっぱずかしくて、そんなこと出来なかったな、ってことが、「夫の」というワンクッション置くことで、ワンクッションあるからこそ、出来てしまえることもある。自分の親に十分してあげられなかった親孝行を、ここで果たす、というような。

十数年前、結婚するつもりもなくて、ただ男友達の家に遊びに行く、そんな気分で夫の両親に初めて会った時、同じあの玄関ドアの前で、2人は満面の笑みを浮かべながら、すでに待ち構えていた。そして近づくと、大きな翼を広げるように、その豊かな胸にムギュッと私を包み込み、「待っていたのよ」「うんうん、待っていたんだよ」と耳元でささやいた。

その時、「ああ、私はこの人たちに会いに来たのだ。そのためにここにいるのだ」と、少々陳腐な懐かしい言い回しをするならば、この両親に「ビビっと来て」結婚を決めたようなところがある。

ずーっと前から知っているような、デジャヴ感。

そんなこともあって、彼らを喜ばせたいと過剰に思い入れてしまうのだ。

結婚に関して言えば、確かにビビッと来るものがあったが、結婚するとも何とも言ってないのに母は、その訪問の旅の最終日の前日に、
「あ、結婚式の教会、候補を2~3予約しといたから」
「日本に帰るまでに下見に行きましょうね」
「日取りはいつにする?」
「3月くらいがいいんじゃない?」
と畳みかけるように仕切って、こちらがアワアワしている間に、どんどん決まっていった。
 う~ん、してやられたのかもしれんな。

母の心、子知らず!

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プレゼントを配るミニサンタ。皆が写真を撮ってくれようとするのに、逃げてしまうので、私が、後から押さえてました。

サンタの格好をした息子が吸い込まれていったドアに、我々も続いて入っていくと、家では、兄弟の家族や親戚、知人が集まって、ワイワイとすでにイヴのパーティが始まっていた。挨拶がてら息子と一緒に、皆にプレゼントを配って回る。

ゴルフ好きの父のためには、ゴルフボールを1ダース!(旅の荷物は、軽く!が鉄則なのにね)。ボール1個1個に、ピンクの豚の顔のイラストが描かれたものだ。手渡しながら、「ママとケンカした時は、この豚をママだと思って思いっきりスイングしてね」と耳打ちした。この時も父は「ウォホッホ」とサンタのように笑い、すぐさま、傍らの母に告げ口した。

お姑さんによっては、「すると何ですか? 私が太ってるとでも言いたいのかしら? 失礼なっ、プンプン」、となってしまいかねない場面である。

が、母は、目を丸くし、ゴルフボールを手にして、BBQに興じるゲストひとりひとりに、「嫁が、この豚は私で、思いっきりぶっ飛ばせ!って言ったのよ」とグラマラスな胸とおしりを豪快に揺らしながら、カンツォーネでも歌いあげるように、それはそれは愉快そうに話して回った(もともとはイタリア人で、イタリアのマンマを絵に描いたような人なので)。

場がパッと華やぐ明るさは、真っ赤なポフツカワの花のよう。

夕刻には、夜のミサに参加するため、近くの教会へと、そぞろ歩いた。父と並んで歩いていると、ふいに目の前の木を指さし父が話しかけてきた。

「この花を知っているかい? 私の大好きな花でね。ジャカランダと言って、日本の桜のようじゃないか?」

見上げるとジャカランダの淡い紫の花が満開だった。その花の色から垂れ下がっていない藤の花のようでもあり、でもその幻想的な美しさは、確かに桜に通じるものがある。ポフツカワほど押しが強くなく、静かに柔らかくほほ笑むように咲く。それは、スコットラント人の父そのものでもある。

「ポフツカワとジャカランダ」童話のタイトルか呪文のようでもあるが、イタリアとスコットランドと日本の血を引く息子は、いつか、どんな花を咲かせるのだろう。

今年の、保育園のクリスマス会で、息子はクラスのみんなと「花は咲く」を歌った。しかも、小さな手で、手話をつけながら。難しくて長いこの楽曲を、見事にやり終えた時、ママたちは顔を見合わせ「泣ける~」と口々に言いあい、全員、涙した。

父が母が、「何を残し」てくれて、自分は、「何を残し」てあげられるのかってことを、どのママも、お腹にいるころから「いつか生まれる君に」たくさんたくさん話しかけてきたに違いない。父と母がいて、自分がいて、そして子へと繋がる、そんな当たり前のことが、ジーンと心に響く歌声だった。

「クリスマスプレゼント、何がいい?」
「怒らないママ!」

今、誰よりも喜ぶ顔が見たいのは君だけど、それはちょっと出来ない相談だな。

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教会近くの、ジャガランダの樹。薄紫の花は、優しくもあり、力強くもあり。
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坂上みき(さかじょう・みき)

ナレーター、イベント司会、ラジオパーソナリティを務める傍ら、映画コラムやエッセイを執筆。東京マラソンでは、自己ベスト3時間58分で完走。
2006年に12歳下のニュージーランド人と結婚、2012年に男児出産。
現在は、日本テレビ「暇人ラヂオ」に出演、ラジオ日本「坂上みきのエンタメgo!go!」ではパーソナリティを務めるなどして活躍中。
「最近インスタを始めました! 子どもの撮った写真をアップしていきますので、ぜひフォローしてくださいね!」 @mikisakajo

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