連載:オーガニック子育て@ベルリン ドイツで見た、数学的思考を助ける習い事と子育て
ある時、夫が勤める大学教授の自宅パーティーに呼ばれて子どもを連れて行ってきました。そこは数学部の教授、ドクター、修士の生徒たちが集まっていて、彼らを眺めていると、そこにはあるスタンダードが存在していました。
先生の家には大きなグランドピアノ、そしてたくさんのバイオリン、チェロがリビングにあり、5人の子どものうち19歳と16歳の男の子がいました。二人はピアノとチェロを演奏すると言う話。私たちの子どものために自分が使っていたというおもちゃを貸してくれました。それはカプラという木の積木と騎士の人形のようなもの、そして様々な形のピースをした幾何学模様などあらゆる形を作ることができる色付きの木製ピース。リビングにテレビはなく、お兄ちゃんたちは携帯をいじるでも、ゲームをやるでもなく、暇になるとピアノを弾き、ボードゲームを持ってきて一緒にやったりしていました。
そしてしばらくすると、一人、また一人、とパーティのゲストは「ちょっとピアノ弾いてもいい?」とかなんとか言ってぽろぽろっと即席で綺麗な音楽を奏で、なんなら二台あるピアノで連弾を始め、なんならコーラスをやっている人が歌い出す始末。そう、数学部生徒たちはほぼ全員音楽を嗜むのがスタンダード。そして勉強だけやってる無趣味の生徒って一人もいなかったの! 特別裕福な家庭の人だけでなく、ドイツでは楽器を弾くのがとてもポピュラーな習い事。特にピアノやバイオリン、コーラスを習う率はかなり多く(サッカー習う率も高い)、ドイツでは音楽は数学的思考を助けるとしても知られているそう。
教授のお宅の奥様がおっしゃっていたけれど、勉強を詰め込んだり幼い頃から機械やテレビで時間を過ごすよりも、自然に触れながら、木片や積木などストーリーを自分で作れるおもちゃや、ボードゲームなど機械を通さず遊ぶこと、そして良い音楽や芸術に触れることが数学脳だけでなく、考える力を育むのに大切ね、と。
確かにドイツの夏休み、子供達は学校からの宿題がなかったな。机を離れて遊ぶことも大事な勉強の一つなのね。
今では街にはあらゆる音があふれ、パソコン、オンラインメインの遊び、バーチャルの学びが多いのだけど、どうやら本当に思考する力はそこからよりも、幼い頃に手足を使って遊び、あらゆる芸術活動など暮らしの中の余白を通して育まれるのではないかしら。と絵に描いたように、数学者たちが美しく楽器を奏でる光景を眺めながら思ったのでした。