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Column オーガニック子育て@ベルリン

まさか自分の子供が不登校になるなんて。そんな時に足を運んだベルリンのカウンセリング【日登美のオーガニック子育て@ベルリン】

2019.09.20

この連載は……

モデルの日登美(ひとみ)さんは、ドイツ人数学者の夫とともにベルリン在住、2歳から17歳まで、6人の子どもを持つお母さん。いっぽうで、マクロビオティック料理教室や日本の伝統食を手作りするワークショップを開催するなど、マクロビオティックインストラクターとしても活躍。この連載では、ベルリンでのオーガニックライフを、食、子育て、そして暮らしを通して、綴っていきます。


ベルリンでの不登校とカウンセリング

まさか自分の子供が不登校になるなんて思ってもいなかった。しかもベルリンで。
予想がつかないことが起こるのが子育て。そうはいっても、ベルリンでまだ生まれたての赤ちゃんを抱えてのあの日々は確かに親子で大変だったなぁというのを思い出します。
ブラジルからベルリンに引っ越して半年が過ぎ、赤ちゃんも無事に生まれ、子供たちの学校も決まり色々落ち着いてきたと思われたころ、それは突然やってきました。

双子の片方がなぜか毎朝お腹をこわしてしまう。トイレからでれなくなってしまう。もちろんそんな様子だから学校には行きたくない。初めは風邪かな、と思っていました。ベルリンはブラジルより寒いし、気候も違うし、食べ物もまた違います。だから安易に風邪かな、ですませていたのです。そして子供も「風邪」を装っていたのだと思います。そうすればとりあえず親は自然と学校を休ませてくれるから。けれどさすがにそれが二日、三日と続くことが多くなり、学校には行きたくない、としか言わなくなり、いよいよこれが噂の登校拒否、不登校か。と気づいたのです。
こういう不測の事態って、気がつくのが遅くなるのは、実は自分がそんなこと起こってほしくない、起こるわけないと思っているからだったりもして。ただでさえ、生まれたての赤ちゃんはいるし、子供はたくさんいるし、その上問題など起こってほしくない!という私の無意識の願いが見たくないものは見ないようにしていたのかもしれません。それでもやっぱり、起こるべきはきちんと起こります。大変だったけど結局は必要なプロセスだったと、今となって言えるのは良かったなぁと思うのですが。

実際思ってみれば、この子の不登校には理由がありました。
引っ越して来た当初、公園で一人の男の子と友達になったのですが、その子が双子の片方と同じクラスになり、この学校を休みたい子のほうは全くの転入生として新しい仲間と学校生活を送らなければならなかったのです。特に多感になり始めた小学五年生。ブラジルを経てのドイツ引っ越し。国の雰囲気も学校のあり方も全く違うわけです。ドイツ語はまだその頃はほとんど上手に話せませんでした。その上誰も知っている人がいない。しかもブラジルでは双子は同じクラスにしてもらっていたのですが、ドイツに来てからクラスを別にしてもらっていたのです。ただでさえ二人で一つと同一視されてしまいがちな双子をいつも同じ環境においておくのでなく、違う環境で一人一人の人間として育っていってほしい、とそういう風に考えて以前日本でそうしていたように違うクラスに入れるように学校にお願いしていました。きっと二人なら大丈夫だろうと思っていたのが甘かったのです。

とても陽気だけど繊細な性格の双子の傍、不安と恐れ、慣れない学校で一人という環境の中でそれでもよく頑張っていたと思います。だけどとうとう限界で学校に行かなくなってしまいました。お腹を壊していったように、心がちょっとづつ壊れていったのだと思うととてもショックでもありました。それとも反対に、心が壊れたからお腹も壊れたのかもしれません。ともあれ、実際自分の子供が困難な状況にあるというのを目の前に見せつけられることがどれだけ親にとって苦しいことかとそのとき改めて感じたわけです。
子供が自信をなくし、やる気をなくし、困っているところで、親としての私も自分の子育てを振り返り「なぜ気づいてやれなかったか?」と自分の子育てに自信をなくしていきます。親子共々負のスパイラルの中でどうやって立ち上がり、どうやってポジティブになっていったらよいのかと考えた日々でありました。

それでもはじめは、「もうちょっと頑張ったら?」とプレッシャーをかけてみたり、自分が焦っているもんだから子供をもっと頑張る方向にひっぱたりもしました。もちろんよくなるわけありません。
かといって、そのままにしておくと学校に行かないまま寝ている、ということになっている。これはどうしたもんか。
しかもドイツでは学校を無断で休むことが硬く禁じられているのです。三日以上休むときは医者の処方が必要。ですからそう長く休ませるわけにもいきません。

そうこうしているうちに、そもそもの原因は何かというのがわかってきました。友達とまだうまくいかない、馴染めない、言葉も難しい、表現できない、でも頑張りたい、輪に入りたい。一方で双子のもう一人は新しい友達とうまくやってる。だから余計自分もそうならなきゃいけない、そうなりたいって気持ちもある。でもできない。そのジレンマの中で糸口を見つけられずにいたのでした。そう言われてみれば本当に当たり前のことだと思います。もし自分が同じ環境ならきっと同じように滅入っただろうなぁ、あまりにも乗り越えねばならない壁が大きすぎる。それを「がんばれ!」の一言ですませてしまうのはあまりに酷。

不登校と一言にいうとまるで突然の難病みたいな気持ちがするのですが、やっぱりそこには何かメッセージがあり、プロセスがあるのです。少なくとも私の子供の場合はそうで、それに早く気づいてあげれなくて悪かったなぁと自分を責める気持ちもありました。そして「がんばれ!」という言葉の重みにも思い至りました。頑張ればいいってもんじゃない。なんでも頑張れば乗り越えられるもんでもない。こちらが応援しているつもりでもこの一言がプレッシャーになることもあるんだって。
次第に私にもこどもの心境を共感できる余裕ができ、状況を理解したのですが、それでもこの状況を変えることができるのはやっぱり本人なのです。さて、どうやって乗り越える力を見つけるのか。

そんなとき、夫が言ったのはなんと「心理療法(Psychotherapie)に行ったら?」だったのです。

なんでも家族で解決するのが一番。と思っていた私、まして日本人からするとまだまだ敷居の高い精神科的な分野。ですからその答えはとても意外だったのですが、ドイツではとてもポピュラーなことだそうで。ちょっと内科に行くような感じで、多くの人がごく自然に心理療法のカウンセリングを受けているんです。「ちょっと夫婦がうまく行かない」とか、「落ち込みやすい」とか、いろいろと自分で解決できない心の不調を話にいく、または体の不調の原因となっているストレスや心の問題の解決をサポートしてもらう。専門家に全ての信頼を預ける必要はないのですが、やはり専門的に心の仕組みをわかっている人と話すことで何かの解決に繋がることがある。
とりあえず、私たちもアポイントを取り子供を連れていってきました。

初めは心理療法という言葉にさらに緊張と不安を見せていた我が子。けれど中に入るとイメージしていたそれとは違い、それこそ内科の受診を待っているような雰囲気、そして来ている人も同じ年齢のクラスメイトのような子供達ばかり。それでほっとしたのか、カウンセリングも安心して行えました。そして途中でI.Qテストのようなものもしたのですが、その結果がとても良かったこともあり、そこでぐっと自信を取り戻した様子もありました。
カウンセリングの内容は特筆すべきなことはなかったのですが、先生も双子を一つのクラスに戻した方がいいとおっしゃていたのに、意外にも子供は同じクラスになりたいとは言いませんでした。双子の彼にとってこれはいつか乗り越えねばならない壁だということがわかっていたのでしょうか。憶測でしかありませんが、一卵性双生児の彼らにしかわからない何かもあるのだろうと思うと、この不登校の持つ意味は私が思っていたより彼にとってうんと大きく意味深いものではないかと思うようになりました。

ともあれ何回かカウンセリングに通って、一人一人でじっくりと向き合って話をしているうちに「もう俺このカウンセリングに行きたくないから学校に行く。」と言い出して、あっという間に登校するようになったのでした。

悩んだ割にはあっけにとられるほど、解決は早かったのですが、実際何が決定打になったのかはわかりません。精神科医に通うのがめんどくさくなり、それより学校に行く方がいいじゃんと思ったのかもしれません(笑)先生と普通に話をするうちに、自分自身の問題もそれとなく解決してしまったのかもしれません。ただわからないまま親子であっちこっちに行き、話をして、一緒にいて、気持ちを寄せて、たくさんの人のなかで専門家の意見も聞いたり、他に悩みを抱える人を見たりもして、そういうひとつひとつが「なにか」になったのかもしれません。

ともあれ終わらない冬はない。と心の隅っこで親子揃ってまたいつもの日常を取り戻せた喜びを感じたこの一件。

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いつも一緒に育ってきた双子達。ドイツにきていよいよ違う道を歩み始めています。

当時はとっても大変だったのに今となっては「そんなこともあったよね~」という我が家の笑い話に。こういう一つ一つを経験しながら子供がたくましく育っていく力を見せてもらい、私も親として更に一つ成長させてもらったように感じています。そしてまだまだその旅は続いています。

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日登美(ひとみ)

10代よりファッションモデルとして雑誌、広告等で活躍。その後4人の子供を授かり自身の子育てから学んだ、シュタイナー教育、マクロビオティック、ヨガなどを取り入れた自然な暮らしと子育てを提案した書籍を多数出版。食についてもクシマクロビオティックアドバイザー修了後よりマクロビオティック料理を教え始め、オーガニックな家庭料理を提案したレシピ本を出版する。2013年ドイツ人数学者と再婚しブラジルを経てドイツ、ベルリンに移住。ベルリンではドイツ発祥の自然療法である国際ヒルデガルト協会認定ホリスティック医療コース修了しヒルデガルドヘルスケアドバイザーを取得。現在はオーガニック、ナチュラル、ヘルシーをモットーに台所からの食と暮らしと子育てのWSなど行っている。三男三女6児の母でもある。


instagram:https://www.instagram.com/hitomiskuche/

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