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本物を見ることの大切さ
2020.11.13 by 田尾沙織 田尾沙織

連載:『Step and a Step』500gで生まれた赤ちゃん 本物を見ることの大切さ

はじめまして。

11月から連載を書かせて頂くことになりました、写真家の田尾沙織です。

私には500gで生まれて、軽度の知的障害とADHDだと言われている息子の奏ちゃんがいます。産まれた時に、あと何日生きられるのかと心配した奏ちゃんも先日無事5歳になりました。

そんな奏ちゃんの子育てと日常について綴っていこうと思っています。

奏ちゃんが生まれて、子どもを通しての新しい出会いも増えました。そのひとつに、長野のぶどうとりんごを育てている果樹園があります。

ひょんなことから知り合った果樹園は、ご夫婦と小学生の娘さんと奏ちゃんと同い年の男の子がいて、会いに行くのは今年でもう3年目になりました。果樹園ではその季節に合わせて、木になったままのぶどうをもいで食べさせてもらったり、りんご狩りをさせてもらったりしています。

広い果樹園を走り回る子どもたちは、何度見てもとても幸せな光景でした。

今年はご自宅の家庭菜園で育った立派な落花生の収穫も体験させてもらいました。私も落花生の収穫は初めてで、大人の私の方が興奮しました。東京生まれの私と奏ちゃんにとって、土に触れるそんな機会はとても貴重です。

私は多くの経験を、特に自然と触れる経験を奏ちゃんにさせたいなと思っています。平均より発達がゆっくりな奏ちゃんも、自分で経験して学べたら記憶に深く残り、そこから様々な好奇心へと繋がっていくのではと考えているからです。

食べ物は、スーパーで売っているよりもずっと前に、大切に育ててくれている人がいると気がついてくれたらいいなと思っています。

なので、気軽に体験しやすい〇〇狩というものに目がなく、この5年でぶどう狩り、りんご狩り、いちご狩り、みかん狩り、ブルーベリー狩り、梨狩りに行きました。もう狩りまくりです。(笑)

本物を見ることは大切だと思っています。

例えば、パイナップルが木からぶら下がっていると思っている日本人は結構いると聞いたことがあります。それは少し納得できます。沖縄以外でパイナップルは育ってないと思うし。

フランス人の知り合いは、帆立の貝柱はあのまま海で泳いでいると思っていたし(もはやそれは貝ではないのでは…)、イギリス人の友人は、マグロはツナ缶の中に収まるくらいの大きさの魚だと思っていました。見たことがないのだから仕方ないですが、日本人が聞いたら「嘘でしょ?なんのジョーク?」と笑ってしまう話です。

20代の時にハマったイギリスのTVシリーズで、当時若手で大人気だった料理家のジェイミー・オリバーさんが、ピザやフライドポテトなど添加物いっぱいのイギリスの給食を改革するという番組がありました。何が私の記憶に深く残っているのかと言うと、ジェイミーが教室で小学生に野菜を見せて野菜の名前を聞くと、子供たちはじゃがいもがどれか分からない。まさかのキャベツを見て「ねぎ!」と言うし、人参を見て「きゅうり!」と答える。開いた口がふさがりませんでした。日本人なら3歳児でもわかる野菜ばかりでした。彼らは加工された状態しか見たことがないので、わからなくて当たり前と言えば当たり前。

他にも最近、日本の子供がスーパーで売っている柿は「おいしそう」と思うのに、木になっている柿を見ても「おいしそう」とは思わなくなったという話を聞きました。なんだかちょっと淋しいな、と思いました。ちなみに、奏ちゃんは水族館で泳いでいる魚を見て「おいしそう」と言いました。(笑)

子どもが生まれて「子どもが、りんごが地面になっていると思っても仕方がないかもな」と思いました。だって、木に実っているりんごの姿を見たことがないから。

そんな事をふと思っていた時に「果樹園に遊びに来ませんか?」というお誘いを受けたのです。そしてありがたいことに、毎年果樹園でおいしいりんごをいただいています。

なんだか”思っている”っていう話ばかりになってしまいましたが、そんな事を思いながら子育てをしています。

田尾沙織

田尾沙織写真家

東京都出身。写真家。2001年第18回『ひとつぼ展』グランプリ受賞。写真集『通学路 東京都 田尾沙織』『ビルに泳ぐ』PLANCTON刊行。雑誌、広告、CMの撮影などでも活動。500gで生まれた息子のNICU.GCUを退院するまでの256日間を写真とともにつづった書籍「大丈夫。今日も生きている」(赤ちゃんとママ社)が好評発売中。

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