子育てママのお悩み解決メディア
【フランスからの報告】フランスの国際教育②

【フランスからの報告】フランスの国際教育②

前回は、主に幼稚園&小学校での英語教育についてリポート。今回はそれに続く中学&高校&大学での外国語教育。そして語学教育だけではない、子どもの目線を世界に向けられる本や試みについて報告します♬


第21回 中学2年から第2外国語も必修。でも、まだ問題もあるフランスの外国語教育

前回の村の英語教師Joの説「外国語習得には“オウム返し“が得意な3歳児からのスタートが最適。耳や口など身体で覚えたものは、自転車や水泳と同じで、一生忘れずにいられる」には、たくさんの反響をいただいた。

©️Jo Parker

Joは黒板もノートも使わない。口と目、耳で単語やフレーズを覚え、「つまらない」や「退屈」をできるだけ抱かせず「遊び心」で学ばせることをモットーにしている。

「本当は中学でもまだそれを続行すべき。読解や文法は高校からで充分。でもフランスの中学は文法と読み書き中心。たちまち『つまらない』『退屈』『難しい』を進行させてしまい、せっかくの『一生忘れない、身体で覚える仕上げ時期』を逃していて、とても残念」

その中学&高校の語学教育について見てみよう。

公立中学でも2年目(12歳)から第2外国語スタート

中学1年(11歳)は英語のみ。2年から第2外国語も加わり、主にスペイン語、イタリア語、ドイツ語から選択。大都市になるとロシア語、中国語、日本語、アラビア語、ポルトガル語など多種にわたる学校もある。

そしてフランスには中学卒業資格試験が全国一律にあり、それを取得できないと高校にも進めず、就職時にも中学卒業証書を提示できない。その試験に英語と第2外国語はどちらも必修。

さらに希望によりラテン語も選択できるので、公立中学でも(つまり無償で)母国語と合わせれば4カ国語を学んでいる10代前半も珍しくない。

また、中学在学中に1週間イギリスへ、さらに第2外国語の国に1週間、修学旅行をする学校も多い。
現地では昼間は団体で観光をするが、夜は2、3人ごとで一般家庭にステイし、ネイティブの人達やそのライフスタイルと接する機会をもつ。それら費用は、家の事情による不参加がないように、各家庭の収入に応じて国がサポートしている。

そして公立高校(普通科)でも引き続き英語と第2外国語は必修。追加でラテン語の履修も可能。
その際「中学ではスペイン語を選択したけれど、高校ではドイツ語」など変更も自由で、新たな言語を学び始めることも可能。
また理数系科目をすべて英語で学ぶコースなどが設置されている公立高校も多い。

大学では1年間、他国の大学に留学する学生も多数。薬学部(フランスの医学部・薬学部は全て国立。私学はない)に在籍する次女も、3年目はカナダの大学の薬学部で学んだ。同期の約100人中10人が北欧、英国、スコットランド、スペイン、ドイツなどで3年目を学び、留学中の単位も認められるため留年することなく母国の4年目に進めるシステム。国費による給付型奨学金(返済不要)も整っているため、留学費用として余分にかかるのは、ほぼ往復の飛行機代のみ。ここでも「できるだけ若者に国際経験を」「家庭の事情による不平等を生まない」という理念が強い。

一方、問題点もある。

外国語教師にフランス人を優先採用しているので、明らかにネイティブの教師達よりも文法中心、実践力に欠ける授業になってしまっている。
しかし給付型奨学金などで留学を奨励し育成した、外国語を得意とするフランス人達を失業させるわけにもいかず、それが国のジレンマ。フランスの語学教育の足かせになっている。

中学から大学院まで英語とスペイン語を学んだ長女は、卒業後、世界各国でプレゼンする際、英語圏とスペイン語圏での通訳は不要。留学経験はないが、学校での語学教育が優れていたわけでもないという。「以前、フランスの外国映画はすべて吹き替えだったのが問題でもあった。でも今はネットで映画から海外ドラマまで自在に観られる便利な時代。それらを活用すれば、実践力は充分につけられる。ただし字幕を読まないことが肝心」近年はそういう若者が増えている。

言語教育だけではない。「異国への興味&好奇心」も、大切な早期国際教育のひとつ

©️David Regent

幼少期に「異国への興味&好奇心」を育てるのに最も効果的なのは、外国への家族旅行とも言われている(2018 Université Lyon2より)。

まったく異なる言語を耳にし、見たことのない景色や街並みを観て、食べたことのない料理を口にし、寝具も違う風習を親子で体験、一緒に驚き楽しむ。
そうして世界には様々な言葉、土地、食べ物、風習があることを体感すると、自然と視野は広がり、知的好奇心も強い子どもに育つ傾向が強いという。
また「ここで上手くいかないのならば、別のところで生きればいい」と思考の転換力や柔軟性もつき、鬱病や自殺防止など精神的な早期教育への効果も唱えられている。

世界中を旅できる漫画『タンタンの冒険』

とはいえ、経済的には難しい。しかも今はコロナで国内旅行ですら規制されている。

でもこんな時期だからこそ、子ども達の目を外界に向けさせたい。窮屈さから開放させてあげられるような時間や機会を与えたい。そう考える親も増えていて、そこで改めて注目、活用され始めているのが「本」だ。

『タンタンの冒険』は、少年記者タンタンと相棒の犬が世界中を旅し、各国で事件に巻き込まれる物語。今も世界中で約3億円の売り上げを誇るベストセラー。
ベルギーの漫画家エルジェ(1907〜1983年)がフランス語で書いたため、「フランスが生んだ傑作」と思っているフランス人も多いほどフランスでも昔から人気で、どの小学校の図書室にも必ずある。
高齢者には昔、ファンになり全巻24冊を揃えた人も多く、今、孫達に読み聞かせしたりもしている。たやすく異国に行けない時代でも想像で世界を旅することができ、人気となったアドベンチャー本だ。

若い世代が創った、新しい「世界発見アドベンチャー本」

「でもタンタンは古臭いからか、ちょっと難しくて楽しめない」「若者や子ども達には時代のギャップが強すぎるかも」という声もよく聞く。
そんななか生まれたのが、シールや塗り絵などふろく付きの「Les Mini Mondes(ル・ミニ・モンド)」という季刊誌。

まだコロナの予兆もない2019年、
「オモチャの80%は中国製で、しかもフランスでは毎年75トンが捨てられている。長く愛用され、リサイクルも可能。ストーリー性など想像力も育め、100%フランス産。そんなオモチャを作りたい!」
と考えたのが発端。
200人の親達にリサーチしながら、キャンピングカーとヨットのオモチャを作成。それにマスコットを乗せ、遊びながら子ども達が想像の世界旅行を楽しめる季刊誌「Les Mini Mondes」が生まれた。
単独でも購入できるが、定期購読を申し込めば2ヶ月ごとに新しい国が送られてくる。(https://lesminimondes.fr/la-mini-boutique/

作り手は自分達も幼児の親という若い世代。2〜3歳用と4〜7歳用の2種があり、例えば3歳と5歳の子どもがいる家庭では2ヶ月ごとに新しい国についての2冊が送られてくるのを、3歳児と5歳児がそれぞれ楽しみに待つことになる。
行く国によってマスコットの服や帽子の色を変えたり、サーフィンやスキーなど積むものも変えたり、シールも貼り替えたりを子ども達は楽しむ。
世界地図で国の場所を探し、キャンピングカーで行くか、ヨットで行くか、そのルートも考える。
マップゲームなどもあり、料理レシピで各国の料理を作って味わったりも。
例えばイタリアにはこんなページも。ベニスに行きたくなるし、スパゲッティ・ボロネーズ(ミートソース)はイタリアのボローニャという町から、その名前がついたことも学べる。

私が住んでいる処はスイスにもイタリアにも車で1時間ほど。つまり一歩、国境を越えるだけでドイツ語とイタリア語が飛び交っている場所に行くことができる。
ところがこの1年は、そんな陸続きが魅力のヨーロッパ生活も日本と同様。まるで島国のように各国が封鎖され、それぞれ単独で暮らしている。
でも、そういう時こそ夢や希望は膨らむもの。隣人や同僚達も「解禁となったら、まずはどの国に行こうか?」そればかりを口にしている。

もしかしたら子どもや自分の国際教育も、今が夢や希望を抱きながら、のんびりと始められる、絶好の充電&準備時期なのかもしれませんね♬

祐天寺りえ

祐天寺りえライター

1994年フランスのスキー場(メリベル)に移住。小学校勤務(給食、教室清掃、スクールバス添乗など)、執筆業、鍼灸&指圧&アロママッサージなどを生業とする3子(20&21&26歳)のシングルマザー。著書「フランスの田舎暮らしとおいしい子育て(小学館)」「食いしん坊の旅(パラダイム出版)」「フランスだったら産めると思った(原書房)」facebook.com/rie.yutenjiosaki

祐天寺りえさんの記事一覧 →