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タブー視しないで! 子どもに伝えたい性の話

タブー視しないで! 子どもに伝えたい性の話

工作教室? いいえ、これは性教育!

裸の男女の絵が描かれた絵本の表紙。

「こっちはオッパイが大きい!」「ちんちんがある人とない人」「毛があるから大人だね」。集まった未就学児~小学校中学年までの子どもたち。ポンポンと楽しげな声が上がります。ページをめくっていくと、子宮や卵巣、精巣の絵。男女の臓器の違いを教えてもらいながら、

卵子シールを卵巣にペタ。(山盛り!) 精子シールを精巣にペタ。(こちらも山盛り!) 「おたまじゃくしみたい」。その次に性行為の話、受精卵が育っていく話を聞いて、また、胎児のシールをペタ!

ご夫婦ともに医師という立場から、性教育に関する活動をされているアクロストンのお二人。上記は、そのワークショップの様子です(https://acrosstone.jimdofree.com/)。

「これって性教育!?」「自分もこんな風にできたら……」「かなり難しそう」。そう感じている方、多いのでは?

子どもの「知りたい」を大切に

―ご夫婦ともに医師。お忙しい中でも、この活動を始めようと思ったきっかけは?

アクロストン(以下A):何気なく見ているネット情報。全然関係のない事柄を検索したのに、容易にアダルトコンテンツに辿り着く。自分の子どもに、こんな暴力的で間違った性情報に触れてほしくはない。子どもが最初に出会う性の情報は正しいものであってほしい。そんな思いで、活動を始めました。

―我が家の息子たちは中高生。ここまで大きくなってしまうと正直、性の話は難しい! アクロストンのワークショップも、テーマによって対象年齢が少しずつ異なりますが、年齢や性別で教え方や内容に変化はあるのでしょうか?

A:年齢や性別が異なっても伝えたい内容そのものは同じです。ただ、子どもの発達や理解の程度に合わせることが大切。私たちのワークショップも、テーマは同じでも、内容は毎回違います。参加している子どもの興味や理解がいつも異なるので、それに合わせて話を進めます。コツは、子どもが「知りたい」と思うことを、興味の尽きるまで話してあげること。

­­―それにしても、工作教室のように楽し気なワークショップですが、未就学児が参加するようなテーマでも、性行為の話はもちろん、受精の仕組みも、胎児が育つ様子も、とにかく全部、細かく教えている! 未就学の子どもたちが、臓器の話や、精子と卵子が卵管の中で出会い、受精卵となるんだよ、なんて話を理解できるの? と驚きます。大人でも、ちょっと……。

A:子ども、って案外細かい話が好きなんですよ。それに、完全に理解してくれなくてよいんです。「へえ、そうなんだ」「体の中ってすごい!」そんな気付きが大切だと思っています。

―コロナ休校が長引いたとき、中高生からの妊娠相談が急増した、というニュースがありました。「予期しない妊娠」を我が事として背負うのはやはり女子が中心。男子は「逃げられる」という現実。男子に対する性教育の重要性を実感しました。アクロストンのワークショップでは、性行為の仕組みや避妊まで包み隠さず、特にコンドームは、実際に手に取り、使い方まで教えています。これにはかなり衝撃を受けたのですが、子どもたちは興味を持って真剣に練習しています。

A:日本性教育協会が高校生に対して行った「性交についての知識の入手方法」に関する2018年の調査があります。結果は「友人や先輩」「学校」「インターネットやアプリ、SNSなど」が上位3つ。学校はともかく、入手した知識が間違っていることがとても多い。それに、コンドームは使い方が難しく、成功率は80%ぐらい。練習が必要なんですよ。

答えにくい質問にはどう答える?

―生理に関するワークショップに男の子やお父さんも参加しています。これは素晴らしいと感じました。ナプキンだけでなく、タンポンや月経カップにも実際に触れ、使い方を学ぶ。男の子の反応もとても自然。「こんなに色々な生理用品が選べるのなら、なんだか楽しそう。うらやましい」という感想は意外でもあり、子どもってこんなに普通に吸収していくんだ、という気づきもあります。性教育ってこれで良いんだ! という。

でも、子どもからのあまりにも直球で答えにくい質問もありますよね。「子どもから、お父さんとお母さんは何回セックスして、私が産まれたの? と聞かれて、本当に困ってしまった」と戸惑いを漏らした友人がいました。

A:ワークショップでのこと。性交渉の話をしたとき、小3の子どもが後ろにいたお母さんに、突然質問したのです。「お母さんも、したの?」。子どもも保護者も参加者全員の注目が集まる中、このお母さんは落ち着いて穏やかにこう答えました。「そう。だから、あなたがここにいるのよ」と。とても素敵な伝え方だなと感じました。

―そんな風に自然に答えが出てきたら理想的。でも「ちょっと、これはお手上げ!」という場合もありそうです。やはり、子どもの疑問にはきちんと答えるべきなんでしょうか?

A:子どもの質問はとてもストレート。「何回で?」という問いに答えにくかったら、必ずしも正しい回数を答える必要はありません。でも、例えば「1回であなたができたんだよ」と伝えれば「1回で赤ちゃんができるのなら、避妊をしないといけないな」という気付きにつながるかもしれません。正解は1つではないんです。すぐに答えがわからなかったら「日曜日までに調べておくね」と、後で答えればよいし、子どもと一緒に考えるのも素敵です。大切なのは、子どもからの質問をはぐらかさないことではないでしょうか?

自分の体は自分のもの

―お話を伺っていると「性教育」って単に「生殖に関する知識を教えること」だけでなく、ジェンダー観や性の多様性、人間関係。より大きな概念を含むものなんだと感じます。

A:そう、性教育って特別なことではないんです。自分の体は自分のものなんだということを知り、自分の人生をしっかりコントロールすること。そしてそれはまた、相手も同じであることを知ることが大切だと思っています。

―それは、相手に対する思いやりということでしょうか?

A:例えば、性暴力の原因は性欲だけではなく、むしろ支配、征服、所有といった心理的欲望が性行為の形をとったものだといわれます。性教育を「思いやりを育てる」という観点でのみ捉えてしまうと、こういった行為は抑制できない。思いやりというのは非常に曖昧で、相手や場面によって変化するものだからです。

―曖昧な倫理観を前提とするのではなく、境遇や状況によって左右されないメッセージが性教育の根幹にあるべきということ?

A:権利だと思っています。自分の体のことは自分で決めてよい。それはあなたの権利。そしてその権利は、あなたと同じように相手も持っている。だから自分の体も相手の体もきちんと知り、お互いを尊重することが大切なんだよと伝えたいですね。

ご家庭でお子さんに性について語るとしたら、きっかけとしては

・「赤ちゃんはどこから来るの?」などの子どもからの質問に答える形で話を進める

・絵本を一緒に読んでみたり、親からのアプローチで進める

などが良いですよ。楽しく親子で話をすることが一番大切です。

学校での性教育の必要性

「寝た子を起こすな」という理由で学校で性行為を教えることに反対する声があります。けれど、アクロストンのワークショップでの子どもたちは、実に素直に驚いたり、真剣に考えたり。その様子に、子どもは正しい情報を求めていて、自分で選択したいと思っているのに、阻んでいるのは性をタブー視する大人の方なのだと痛感します。

正しい情報は正しい判断を、間違った情報は間違った判断を導きます。そして、正しい情報を子どもに届けるのは大人の責任のはず。

とはいえ、家庭には様々な背景があり、性に関する話題をどこの家庭でも普通にというのは現実には難しそう。すべての子どもたちに適切な性教育を届けるためには、やはり学校教育が重要だと今回あらためてその必要性を強く感じました。

性教育の遅れが指摘される日本。文部科学省は今年度から、一部の学校で「生命の安全教育」を試験的にスタート。プライベートゾーン(水着で隠れる部分)は他人に見せてはいけないと教えるなど、今までより一歩進んだ感がありますが、性犯罪対策としての側面が強く、性行為にも避妊具の使用方法にも相変わらず触れていません。

アクロストンをはじめ、性教育本の出版が相次ぎ、世間的な関心が高まっているといわれています。この活動がより大きな波となり、学校教育という巨大な「山」を動かせたら。本を買うのも良し、ネットで調べるのも良し。あなたも一緒にこの波に乗ってみませんか?

アクロストン監修の絵本『おうちせいきょういくえほん』も、お勧めの波です。

(写真提供:アクロストン)

●教えてくれた人

アクロストン

妻・夫である2人の医師による性教育コンテンツ制作ユニット。公立小の保健の授業や楽しく性について学べるワークショップを日本各地で開催。家庭ではじめられる性教育のヒントや性に関する社会問題についてなどを発信している。

監修:『シールでぺたぺた おうちせいきょういくえほん』(主婦の友社) 

著書:『3~9歳ではじめるアクロストン式 「赤ちゃんってどうやってできるの?」、いま、子どもに伝えたい性のQ&A』『思春期の性と恋愛 子どもたちの頭の中がこんなことになってるなんて!』(ともに主婦の友社)

参照

アクロストン・ホームページ

https://acrosstone.jimdofree.com/

2020年5月12日・朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASN5D4J68N5DTLVB006.html

大修館書店・ホームページ

https://www.taishukan.co.jp/hotai/media/blog/?act=detail&id=185

文部科学省・生命(いのち)の安全教育について

https://www.mext.go.jp/content/20210527-mxt_kyousei02-000014005_2.pdf

おうちせいきょういくえほん (アクロストン監修)

https://www.amazon.co.jp/dp/4074488582/ref=cm_sw_r_tw_dp_MWE3424GEME1T90FRGDM

中村 亮子

中村 亮子ライター

1971年東京都出身。中央大学法学部法律学科卒。転勤族と結婚し、全国を転々と旅するような生活を送る中、偶然の出会いに導かれ、フリーライターの道へ。家族は夫と息子が二人。趣味はピアノ

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