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【フランスからの報告】フランスでは、学校教育でケンカの仲裁法も学ぶ?

【フランスからの報告】フランスでは、学校教育でケンカの仲裁法も学ぶ?

「プライドが高く、絶対に謝らない」と、世界でも悪名高きフランス人達。
でも「絶対に」は、ちょっと言い過ぎ。本当に悪いと思えば、彼らもちゃんと謝る。
ただ、「とりあえず謝っておこう」や「負けるが勝ち」的な考えや教育はないので、私達日本人に比べると謝る頻度はとても少なく、それで「滅多に謝らない」ように思われるのかもしれない。
そして子ども達には「パルドン(ごめんなさい)は?」と幼少期から謝ることを教えるので、その辺は日本と同じ。

そんなフランスが、2020年、初等&中等教育で新しく「ケンカ仲裁法」プロジェクトをスタートさせた。
小学校勤務の私も習い、実践する度に「ナルホド。これって効果あるかも」と感じることが多いので、今回はそれについてリポート。
家庭での兄弟喧嘩にも効果あるかどうか、ご興味ある方は是非、試してみてください♬

第39回 イジメ(ハラスメント)が46%減少! 新「ケンカ仲裁法」プロジェクト

Nonviolent Communication「非暴力コミュニケーション」

新しい「ケンカ仲裁法」プロジェクト作成の前に、まずフランスが参考にしたのは、1960年にアメリカが導入したという「非暴力コミュニケーション・メソッド」。子どもに限らず、大人でも、人間関係にトラブルが生じた時、

①まずは何が起こったのか、状況を把握しなおそう。
②自分の気持ち(怒りや悲しみ、嘆きや憤りなどの感情)に気づき、見つめよう。
③相手のせいにする前に、まずは自分がそれら感情を抱いたという事実を確認、認めよう。
④その上で、その感情を抑え込んだり我慢するのではなく、解消するために、相手にして欲しいことを率直に、ただし訴えたり非難するのではなく、できるだけポジティブに、クリアに伝えられるように言葉を選んで表現しよう。

というもの。
要は「覚えていること(起こったこと)の明確化」そして「できるだけ乱暴ではないポジティブな言葉に言い換える」その訓練を奨励するメソッドだ。

とはいえ「こんなことができれば世話は要らない」「綺麗ごとだよね」というのが、辛辣なフランス人達による見解。
そこでフランス教育界は、これを参考に独自の新たなプロジェクトを2019年に作成。
それが「Médiateur à l’Ecole(学校での仲介者)」メソッドだ。

「Médiateur à l’Ecole(学校での仲介者)」メソッド

(写真上)日本の小学校同様、フランスでもクラスの日直制度(「朝、黒板に日時を書く」係、「出席の点呼」係、「プリントの配布&回収」係など)がある。(写真下)そこに2020年から「ケンカの仲介」係も加わった。

SNSの普及により、近年、フランスでも中高生の間でのハラスメント(いじめ)が増えていて、社会問題になっている(いじめの90%はSNSによるもの。 France Mediation2021)。

その対策として2020年、全国255の中学に、プロとして養成されたMédiateur (調停者。仲介者)130人が派遣され、7万7000人の中学生を対象に活動。

とりわけ、中学では最年少学年という弱い立場であり、小学校とは異なる大規模な集団生活にもまだ不慣れな中学1年生の男子を対象にアンケートをとったところ、「身の回りでのハラスメント(いじめ)が明らかに減ったように感じる」と43%が回答。わずか1年で好成果が得られたという(France Mediation2021)。

国の予算上、小学校へのプロ派遣はされていないが、教師&補助職員の希望者は研修を受けられるので、私も受けてみた。
「非暴力コミュニケーション」よりも、実際に何をどうしたらいいかが明確。実用的なメソッドだ。

「ケンカ仲介者」メソッド

例えば、2人の子どもがケンカをしたとする。
その場合、写真のように2人を背中合わせに座らせ、間に「仲介者」を立たせる(「仲介者」は教師や補助職員、家では親でもいい)。
そして

①「仲介者」はあくまでも「聴き役」であること。善悪のジャッジ(判断)はせず、例えば「1人が一方的に殴った」など、明らかにどちらかが間違っている時でも、それを責めず、まずはひたすら双方の話を聴くことから始めることを肝に銘じる。

②そして最初に「何があったか」。状況を双方から聴く。食い違いがあってもいい。(それぞれ言い分があるので、ほとんどの場合、食い違う)
できるだけ詳細を述べさせ、何度でも、双方、言い尽くすまで発言させる。
そうすることにより、どこが食い違っているのかを言っている当人達も次第に把握していく。(しかし自分が正しいと思っているので、把握はするが理解はせず、自分の非は認めない。それでも構わず、双方、事情説明について言い尽くしたら、食い違いはそのままにして③に進む)

③次に怒りや悲しみ、憤り、不満など、抱いている感情も、それぞれから聴く。

④「そっちが悪い!」「嘘だ!」「私はそんなこと言っていない(していない)」など言い合いにもなるが、それを極力、激しい口論にさせず、どちらからも交互に述べさせるのが仲介者の役目。とにかく宥めながら、しかし押さえ込まず、それぞれの不満をすべて言葉で表現させる。
相手が喋っている時には、それを中断させず、1人ずつに順次喋らせることも仲介者の重要な役目。
続けているうちに次第にトーンダウンしていくはず。激しさが残っているうちは「まだ言い尽くしていない。不満を出しきれていない」と仲介者は解釈。根気強く聞き出し続ける。

⑤もう言い尽くし、言うことがなくなった状態まで来たところで
「では、どうしたらいいと思う?」
と、これも仲介者の意見は一切入れずに、それぞれに希望や願望、あるいは仲直りへのアイデアなど、各自の考えを尋ねる。

「とにかく、どちらからも言い分をすべて聴く。思っていることをすべて言ってみて!」と説得し、どちらの言葉にもきちんと耳を傾ける「仲介者の態度」が最も重要。
最初の頃は激して叫んだり、罵声を発している子どもも、思いを外に放出し続けてるうちに次第に落ち着いてきて、⑤の頃には、当人達がもうくたびれていたり、面倒くさい様相になったりしてくる。

「くたびれたり、面倒くさかったりするからもういいや、となるのなら、解決にならないのでは?」と思われるかもしれないが、小学生の日々の小さなケンカは「他愛のない」「どちらにも非がある」ものがほとんど。

解決よりも大切なのは「後腐れ」や「わだかまり」「ヒガミ」や「ねたみ」などを内心に宿させないこと。

解決のためにジャッジされれば「どうして自分ばかりが責められたり、叱られなければいけないのか?」など納得がいかず、恨んだり根にもったりしてしまいがち。不満の根を心の深い部分に残してしまう。

この方法は親の呼び出しにまで発展したケンカの場合も採用。

教師と親達が「仲介者」となり、決して意見を挟まずジャッジもせず、当事者である子ども達の聴き役に徹するのだが、親達にも「事情や感情の詳細を知ることができる」と好評。親が謝る必要がないことでも、「滅多に謝りたくないフランス人」にとっては好ましいやり方なのかもしれない。

近年の「叱り方」メソッド

補助職員用に教わった「叱り方」の新メソッドというのもあるので触れてみますね。

「それ、やっちゃダメ!」と叱ったり、集合の時「すぐ来なさい! 急いで!」と召集したり、「3数えるまでにやらなかったら、罰を与える!」などは、これまで教師も職員も親達も口にしてきた叱り方。
しかし近年「それらは逆効果」とされ、フランスの小学校では、新メソッドが提唱されている。

まず、やってはいけないことを子どもがしている時、「ノン!」や「ダメ!」は口にせず、遠方からでも上の写真のように手で「ストップ!」を明示。同時にその子どもの名前を呼ぶ。
そうした後で子どもに近寄り、「〇〇してはいけない」「それは危険」などと説明する。

名前を呼ばれることで、叱られている対象が自分であることを「即座に耳で」、そして手のジェスチャーで「ノン!」や「ダメ!」を「瞬時に目で」、子どもは察知。

従来のようにまず「ノン!」を言えば、名前を呼ぶのは、その後になるので、誰に向かっての注意なのかの伝達がその分、遅れる。

いち早く、行為をストップさせたければ、まず名前とジェスチャーで伝えることが先決。実践してみると、確かにその通り! と実感。
シンプルで簡単なことなのに、私にとってはかなり「目からウロコ」の新メソッドだった♬

小学校のポスターも変化

そういった叱り方への変化は、小学校の校内の壁に貼られるポスターにもあらわれ始めている。

例えば

「電気のつけっ放し禁止!」だったポスターは
「ここの電気は消さなければいけないって、知ってる?」になった。

ゴミの分別用ポスターも「ここに紙を捨ててはダメ!」が
「僕(←ゴミ箱)は紙以外を食べるよ。リサイクルするんだ♬」に。

祐天寺りえ

祐天寺りえライター

1994年フランスのスキー場(メリベル)に移住。小学校勤務(給食、教室清掃、スクールバス添乗など)、執筆業、鍼灸&指圧&アロママッサージなどを生業とする3子(20&21&26歳)のシングルマザー。著書「フランスの田舎暮らしとおいしい子育て(小学館)」「食いしん坊の旅(パラダイム出版)」「フランスだったら産めると思った(原書房)」facebook.com/rie.yutenjiosaki

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