3歳までに味覚が決まるって本当? お子さんの味覚を育てよう
3歳頃までにその子の味覚の基礎ができる、というのを耳にしたことはありますか?
この時期は味覚にとても敏感で、何より経験が大事。その経験の積み重ねが将来の味覚につながります。とはいえ好き嫌いも多く思ったように食べてくれないというのもこの時期。3歳まで!? と聞くとちょっと焦りますよね。今回は、どんなことに気をつけて味覚を育んでいけばいいのかを考えていきます。
そもそも子どもの味覚とは?
私たちの舌には味蕾という味を感じるセンサーがついています。その数が多いほど味覚を強く感じることができますが、ある時期を過ぎると減少していき、30~40代になると子どもの頃より約3分の1まで減ってしまうと言われています!
子どもの頃に食べられなかったものが大人になってから好きになったという経験はありませんか? これは味蕾の関係で大人になってから味に鈍感になったからというのも理由の1つ。そもそもお子さんに好き嫌いが多いというのは自然なことです。
なぜ3歳までにと言われるかというと、味蕾からの情報が届き味を記憶する脳の器官が3歳頃に完成すると考えられているから。味覚は3歳頃にベースができ、10歳ころまでの積み重ねがその後の人生の基礎になると言われています。
子どもの味覚はいつから始まる?
味覚形成という意味では、実はママの妊娠期から始まっています! お腹の中にいる時にママの食べたものが羊水に多少なりとも影響し、赤ちゃんは何となくママの好みの味を感じるようになると言われています。先ほど説明した味のセンサーである味蕾は、お腹の中にいる頃から増え続け、生まれたばかりの赤ちゃんには約1万個という非常に多い数を持っています。
とはいえ本格的な味覚形成が始まるのは離乳食が始まる生後5~6ヶ月頃から。この時期は生まれたばかりの頃よりもやや味に鈍感になっているので、母乳やミルク以外の味も受け入れられるという意味でも離乳食開始の時期というわけです。
この時期は本能で味覚を感じる!
味は基本的に「甘味」「旨味」「塩味」「酸味」「苦味」の5つに分類されます。
大人であれば、何かを食べる時に「おいしい」と思う基準は、その食材が持つ「味そのもの」もありますが、食事の背景もあります。例えば誰かと一緒に食べているといつもよりおいしく感じたり「この食材はヘルシー」と聞くと、それ自体の味がおいしく感じるかどうかは別として、頭の中で「ヘルシー=おいしい」とインプットしたりしますよね。
こういった連想や物事の背景から味を感じるというのは、小さなお子さんにはまだ難しいです!
この時期はとにかく本能で味覚を感じ取る時。
甘味=エネルギー源
旨味=たんぱく質(アミノ酸)
塩味=ミネラル
これら3つは赤ちゃんの体にとって必要不可欠なものなので、本能的に欲するとされています。その一方、
酸味=腐ったもの
苦味=毒
といった味を連想させるこの2つは赤ちゃんは本能的に嫌がるもの。「食べても大丈夫か」「体に必要か」という基準で味を判断する時期なので、酸っぱいものや苦みのある野菜などが苦手というのは、この時期においてはごく自然なことです。
味覚はどのように形成されていく?
お子さんの味覚形成に関係することは、味だけではなくその見た目、色や形、匂い、舌触り、食べる環境などさまざま。小さい子だからといって盛り付けを適当にするのではなく、少し盛り付けをかわいくするだけで食べてくれるなんてことはありませんか? 茶色ばかりが目立つ食事よりも明るい色を取り入れたり、できたてのふわっと良い香りを感じてもらったり、いつもと違った場所やお友達と一緒にしたら食べてくれた、なんてことも。お子さんは五感をフルに使って味覚を育てています!
また、味蕾は舌だけではなく口内の他の部分にもあるので、よく噛むことでおいしさをより感じやすくなります。噛むことも味覚形成においては大事なポイントです。
ママが心掛けたいこと
1.たくさんの素材の味を知る
0~3歳の頃は知らないことが多く、何事も新しい発見の連続。この時期にいろんな味を教えてあげましょう。とはいえとにかくレパートリーを増やそうとするのはママにとっては大変。無理のない範囲で新しい食材にトライしてみたり、「あ、最近あれ食べていないな」と思ったらまた出してみたり。毎食違った食材を、と考える必要はないので少しずついろんな味を経験させましょう。
2. 旨味を生かして薄味に
この時期に大切なのが、できるだけ「素材のうまみ」をいかしてあげること。濃い調味料で食材をマスキングしてしまうと、その調味料の味を感じてしまうのでうまく味覚が育ちません。また、砂糖や塩分の濃い味というのは中毒性があるので一度覚えてしまうと病みつきになってしまいます。
できるだけ薄味に、そしていくら病みつきになっても良い「旨味」を最大限生かしましょう! 旨味は本能的にも受け入れられやすいですし、体にも良く素材の味を邪魔することがありません。ふだんから出汁を食事に取り入れたり、旨味を感じやすいたんぱく質の食材を苦手食材とうまく組み合わせるなどの工夫がおすすめです。
3. 経験によって「安心の味」を増やす
お子さんの味覚を育てたい! と思ったらママがしたいことはとにかく何度も経験させる、これに尽きます。先ほど説明したように、お子さんは自分が知らない、危険だと感じる味を嫌がる傾向にあります。それを「食べて大丈夫なんだ」と安心してもらうには、何度も何度も味を経験して「知っている味」に定着させたり、ママやパパがおいしそうに食べる姿を見せてあげること。食べなかった=嫌いな食べ物と決めつけてしまうのはまだ早いです。苦手そうだからといって食卓に出さないままでいると、その味を覚えない=危険だと感じたまま大きくなってしまい本当に苦手になってしまいます。嫌がらない程度に定期的に食卓に出し、味を経験させてあげましょう。
4.「おふくろの味」を作ろう
大人になってから感じるなつかしい味というものはありませんか? 「あ、この料理、昔良く食べたなぁ」なんてなつかしさを感じる味、これこそがおふくろの味です! 小さな頃に沢山経験したママの味というのは、大人になっても親しみやすく感じるもの。ぜひこのおふくろの味をたくさん感じる経験を作ってくださいね。
何も完璧においしい食事を作る必要はありません。家庭の味というのは、その日によって味が変わりますよね。レストランのように毎回同じ味付けで完璧なメニューを作るというのは難しいもの。でもそれがお子さんにとっては良くて、「あれ、今日はママの味がいつもより薄味だな」「今日は柔らかいな」と日々少しずつ違うことが、お子さんの味覚を育てる上で「沢山の経験をさせる」ことにつながるのです。料理が得意不得意は関係なく、お子さんにとってはママの味が全て。ぜひこの時間を大切にしてください。
味覚は生涯大切なもの。お子さんの味覚を日々の食事で楽しく育んでいきましょう。