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「私、コロナになった」。モスクワ在住日本人ママからの告白

「私、コロナになった」。モスクワ在住日本人ママからの告白

2020年9月半ば、モスクワにいる古い友人の田中さんから「実は私、コロナになった」と突然告げられました。

ロシア駐在を楽しむ家族に、コロナが……

私の身辺でコロナに感染したと知らせてくれたのは、彼女が初めてでした。つい、「え、マジ?!」と素で反応する私。そして、月並みに「大丈夫?」くらいしか言ってあげられませんでした。正直、驚きました。彼女は、3歳と8カ月の子ども達の母であり、普段から慎重に感染予防に努めていたからです。

これから、田中さんの協力を得て、その経過をたどります。彼女は5カ国語を話し、夫婦ともにロシア語に堪能です。ロシアへの理解が深いので、話していて面白いです。夫婦共々モスクワ駐在が長くなればいいのに、と願っています。娘さんは、ロシア人ばかりのローカルの幼稚園に通い、ロシア語で独りごとをつぶやくようになりました。

モスクワ市内のロシア正教寺院(以下、すべて田中さん撮影)

モスクワ市のロックダウン

モスクワ市は、4月~6月にかけて2カ月間、厳しいロックダウンを行いました。当時、その渦中にいた田中さんはいつになくしんどそうでした。

4月中旬。「犬の散歩は認められているのに、子どもの散歩はダメ」

「それは、プーチン大統領が愛犬家だから? 秋田犬飼っていたよね」

「モスクワは、ネットスーパーが充実しているから、頼めば2時間後には宅配してくれる。結局、家から一歩も出なくても生活できるんだよね」

「それは私が住んでいた中国でも同じだわ。日本では、買い物はこうはいかないので、厳格な隔離はできないんだよね」

「家から出ないから、お風呂にも入らないし、食べてばっかりで太るわ~。子どもはバルコニーでシャボン玉くらいしかやることない。公園がすぐそこに見えているのに、行ってはいけないと3歳に説明するのは難しい。うちは、駐在員向けで借りているので、それなりの広さと部屋数があるから、まだいい。モスクワの一般住居は狭いのに、皆どうしてるんだろう?」

3歳と0歳、缶づめ生活は厳しいよね。海外生活に慣れており、心身共にストレスに強そうに見える田中さんですが、このロックダウンの厳しさが家族にどのように影響するのか心配になりました。

統計上、ロシアではコロナの外出制限下でDV(ドメスティックバイオレンス・家庭内暴力)件数が、倍増しました。結果、3月は6000件程度、4月は13000件を上回りました。*1

マンション敷地内の公園

突然のロックダウン終了とその後

6月。

「モスクワ市長が切れて、突然ロックダウンが終わった!」と、田中さん。

そう、前日に突如ロックダウン解除を発表したのです。経済がまわらなくなったからでしょう。この頃、ロシア全土の一日の新規感染者数は8000~9000人。モスクワ市内だけでも、1000~2000人で推移していました。

8月には、田舎へ旅行に出かけた一家。ロシアの夏は最高です。そして、9月、田中さん自身がコロナに感染。

ここで、ロシアの最近(2020年12月)の推移を説明しましょう。全土の一日の新規感染者数が2万人の大台に乗り、モスクワ市では11月から約2カ月間にわたりバーやレストラン等の深夜営業禁止されています。ロックダウン中の4月~6月でも、一日の新規感染者数は最大11000人を超えなかったのに、10月後半からは急増したことが分かります。

12月5日、モスクワ市では、ロシアで開発された新型コロナウイルスのワクチンの接種が始まりました。この前日、私は田中さんとLINE通話をしてこのニュースを知りました。

「最終段階の試験が終わってないのに、明日からいきなりワクチン接種はじめるってプーチン言い出した。イギリスで週明けに、ワクチン接種開始のニュースが出たから、ロシアが世界初ってことにしたいんだろうね」

さすがプーチン大統領、相変わらずツッコミどころ満載です。旧共産圏の独裁的なリーダーによる政策転換……。他でも覚えがあります。

こんな指導者、どう思う? 田中さんはワクチン受けるの?

「プーチンは人気あるよ。経済立て直したから。私? 外国人に対するワクチン接種方針が出てないから、分からないなあ。そもそも、ロシア人の医療従事者や教育機関に勤める人への接種が優先されるから」

外国人向けのセレブ病院などでは、お金とコネでなんとかなりそうな気もしますが……。この日の新規感染者数は28000人。日々、記録を更新しています。

12月のモスクワ。マンション敷地内の公園にクリスマスツリー登場。

抗原調査で陽性だと判明しても、報告義務は無。感染者数にも入らない

―どういう経緯で、コロナと判明したの?

「鼻水が出て、軽い風邪って感じだったけど、念のためと病院に行ったら、検査を勧められた。外国人向けのセレブ病院に行ったから3万円かかった。治療なら旅行保険でカバーされるけど、今回は検査だったから、後で自費だといわれてびっくりした。この時は、私だけ検査を受けた。

 症状が出てからの日数で、受ける検査が決まる。私はPCR検査ではなく、抗原検査を受けるように言われて受けたら陽性、抗体検査は陰性。鼻のスプレーをもらって、鼻づまりはすぐ治り、他には軽い頭痛と乾いた咳が少しあるくらい。息苦しさもまったくなかった。熱も、36.8℃を超えることはなかったよ」

―保健所などには報告したの?

「驚くことに、報告するか否かは個人の裁量に任せますと言われた。抗原検査は、国や行政への報告義務はないんだって! PCR検査は、報告義務があり、感染者数に含まれるけどね。私は、善良なモスクワ市民だからさ(笑)、会社や幼稚園にはすぐ報告した。2週間は、厳しく自主隔離する予定。でも……、私と同じ境遇なら、誰にも言わずに出勤・通学を続ける人はけっこういるだろうね、ロシアでは」

こうして、彼女は家族4人で真面目に自主隔離生活を始めました。この時点では、陽性が確定しているのは、田中さん本人のみ。もしかしたら、家族4人全員がコロナに感染しているのでは、という不安を抱えながら…‥。

PCR検査を行う施設

*1

参考:AFP通信記事

https://www.afpbb.com/articles/-/3282281

(この記事は、2020年12月5日現在の情報を元にしています)

岡本 聡子

岡本 聡子ライター・経営学修士・防災士

戦略系経営コンサルティング会社を経て、上海にMBA(経営学修士)留学。その経験をもとに『中国のビジネスリーダーの価値観を探る』(『上海のMBAで出会った中国の若きエリートたちの素顔』を加筆・改題)を株式会社アルクより出版。幼稚園児の母。分析・事業開発支援、NPO運営なども行う。facebook.com/okamotosatokochina

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