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ノーマスク率高めの街のワクチン事情と、コロナ経験者のワクチン接種体験記(ロシア・モスクワより)

ノーマスク率高めの街のワクチン事情と、コロナ経験者のワクチン接種体験記(ロシア・モスクワより)

「子どもが1歳になったし、考えるところもあり断乳してコロナワクチンを受けようと決めた」

モスクワで駐在帯同中の田中さんから決意のメールが届きました。
モスクワ駐在3年目、4歳と1歳の子ども達を育てるママです。
彼女自身は2020年9月、親子で新型コロナウイルス感染症にかかりました。

彼女のコロナ闘病記と、2020年のモスクワの様子はこちら。
「私、コロナになった」。モスクワ在住日本人ママからの告白
異国でコロナ陽性発覚。家族間感染との闘い

(筆者注:検査・ワクチン接種についてまだデータが十分存在しておらず、記事内容は一個人の経験であることをご理解ください)

2021年5月、モスクワ中心部の公園。寒さが緩み、人出が増えた。

コロナ感染経験があっても、ワクチン接種を!

コロナにかかったことがあれば、すでに抗体を持っているはず。わざわざ断乳してまでワクチンを打たなくてもよかったのでは?

「病院で同じ質問をしたら、感染による抗体よりもワクチン接種による抗体のほうが圧倒的に多いからと、接種を強く勧められた。
接種を検討している時、抗体検査をしてみたら、私は1.01しかなかった。これは、数値1.4以上で抗体があると認められる検査。
ワクチン接種3週間後に夫が抗体検査をしたら数値は250。病院の説明通り、大きな差があった」
(筆者注:ご主人の抗体検査は、田中さん受けた「普通の」抗体検査に加えて、Sタンパク質という別の物質も調べた結果です。同じ条件での比較ではありませんが、ワクチン接種により十分な抗体ができた、とご理解ください)

医院によりますが、ワクチン接種とその前後の抗体検査をセットにしてサービスするところも多いそうです。目に見えてワクチンの効果が分かり、安心ですね。

ワクチン接種会場の病院では、さすがに全員マスク着用。

娘の誕生日会がきっかけで、ワクチン接種を考え始めた

田中さんがワクチン接種を真剣に検討しはじめたきっかけは、長女の誕生日会。仲良しのロシア人親子を自宅に招待しました。
「夫、アンナ(仮名)のパパ、子ども達だけで自宅パーティをしたのだけど、私以外の二人の大人がワクチン接種済。室内で一緒にお菓子を食べて、マスク無しで密におしゃべりをして、なんて気持ちが楽なのだろうとつくづく感じた。私もワクチンを受けて、もっと安心した生活を送りたいって思った」

公園で子どもを遊ばせる親達。マスクはしない。

コロナ感染経験者がワクチンを受けると……こんな変化が

ワクチン接種後、副反応はあった?
「4月末から5月初めにかけて2回打ったんだけど、翌日に微熱が出て激しく運動したかのような関節痛を感じた。でも、たいしたことはない。それよりも驚いたことが! 実は、2020年9月にコロナにかかってから、ずっと嗅覚障害が続いていて、以前の10%くらいしか匂いが分からなくなっていた。コーヒーも花もすべて、焦げたような匂いがする。
でも、スプートニクVを打って1週間後に、いきなり30~40%嗅覚が戻ってきた。ワクチンの影響か、単に回復したのか理由は分からないけど、びっくりした!」

ロシアのワクチン接種証明書(個人ID部分を除く)

ロシアのワクチン2回接種率は10%と低調

希望すれば、ロシア人は誰でも無料でワクチンを受けられます。接種会場として、病院以外にもデパートやショッピングモールなどが使用されています。しかし、ロシア全土の1回目接種率はいまだに6.9%、2回接種済10.1%と低調です。

「私の周りでは、もっとたくさんの人がワクチン済ませた印象。幼稚園ですれ違うパパママはだいたい皆受けている」と田中さん。

モスクワのみの接種率は公表されていません。もしかすると、都市部に限ると接種済みの人の割合はもっと高いのかもしれません。

ロシアでは、2020年12月初旬、国産ワクチン「スプートニクV」を世界最速で接種開始しました。当初は不十分な治験データだと不安視されましたが、権威ある英医学誌「ランセット」で、その予防効果は91%超と認められました(注1)。
「ランセット」に基づく政府発表によると、「スプートニクV」の副反応による死亡はゼロです(注2)(治験中の死亡例はあったものの、ワクチンとは無関係)。

それでも、ワクチンを受けるべきかロシア世論は真っ二つに分かれています。「様子見」「陰謀」という人達もちらほら。政府の呼びかけはそれほど強くはないとのことで、接種はなかなか進みません。もともと、政府をあまり信用しないという事情もありますが、第3段階の治験が終わらないうちに世界に先がけて接種開始し、国民に恐怖心を与えたからかもしれません。

そんな中、「スプートニクライト」という1回接種だけで十分な効果を発揮するワクチンが2021年5月6日に使用承認されました。有効性は80%弱、費用は10ドル以下。主に輸出向けに割り当てられるそうです(注3)。

屋外では、ほぼノーマスク。

道を歩く人は、ほぼノーマスク、屋内も半数はノーマスク

ロシア全土の感染は、2020年12月の1日あたり3万人弱から、現在は9000人弱に落ち着いています。

今でも、結構な数の新規感染者がいます。

「それでも、もともとマスク文化ではないからだろうけど本当に皆マスクをしない! 外を歩いている人は、ほぼノーマスクか、あごマスク。お店に入って店の人に注意されたらマスクするけど……」

日本では、幼稚園でも室内はマスクをしますが、ロシアでは幼稚園でマスクを着用させることはないそうです。

新規感染者数がやや増加傾向になり、2021年5月10日頃から、モスクワの地下鉄構内は「マスクと手袋必須」に戻りました。しかし、改札を通り抜けたら、マスクは適当、手袋にいたっては誰もしないそうです。

改札を通り抜けると、地下鉄車内ではマスクや手袋をしない人が多数。

人の動きは活発に。日本人旅行者は隔離無しでロシア入国も

2020年4月は厳しいロックダウンが敷かれていましたが、コロナによる国内規制は緩やかになってきました。原則、劇場等での50%定員、美術館等での人数制限、公共機関や人混みでのマスク着用とソーシャルディスタンスの確保、リモートワーク推奨が現在も続いています。

国境を越える往来は、長期滞在者やロシア国民には厳しいものの、観光客などの短期滞在者には緩和措置がとられています。2020年11月から、短期滞在目的の日本人は隔離なくロシアに入国できます。

国内の人の動きは戻ってきた?
「今年5月の連休は地方のホテルも交通機関も満員で、大混雑だった。私達もロシアを構成する共和国の一つ、タタルスタン共和国の首都カザンに旅行したら、街は大道芸やイベントに大群衆。なのに、誰もマスクをしてなくてコロナの存在を忘れた。
でも、往復の飛行機の中だけはマスク着用は絶対。鼻が少し出ていても、厳重注意された」

あきらめたように語る田中さん。
「私達は日本人だから、まじめにマスクをする。でも、ワクチンもマスクもしない人が大半の街で、ワクチンを接種できない人達は不安な気持ちで過ごしているんだろうな。妊娠・授乳中はワクチンは無理だから。自分が最近までその立場だったから、身にしみる」

ショッピングモール内のスケートリンク。2020年5月の光景だが、やはりノーマスクが一般的。

(注1)https://www.jiji.com/jc/article?k=2021020300220&g=int 時事ドットコム
(注2)https://www.youtube.com/watch?v=q_IGelAreIg TBSニュース
(注3)https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-russia-vaccine-idJPKBN2CN2KA
ロイターweb版

(写真はすべて田中さん提供)
(この記事は、2021年5月20日時点のデータに基づいて執筆しました)

岡本 聡子

岡本 聡子ライター・経営学修士・防災士

戦略系経営コンサルティング会社を経て、上海にMBA(経営学修士)留学。その経験をもとに『中国のビジネスリーダーの価値観を探る』(『上海のMBAで出会った中国の若きエリートたちの素顔』を加筆・改題)を株式会社アルクより出版。幼稚園児の母。分析・事業開発支援、NPO運営なども行う。facebook.com/okamotosatokochina

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