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【ロシアの最新コロナ事情】世界最速でコロナワクチン接種を開始したロシア、その後……

【ロシアの最新コロナ事情】世界最速でコロナワクチン接種を開始したロシア、その後……

「ロシア人は、コロナをただの風邪だととらえているらしい」

乳幼児2名を育てながら、駐在員のご主人とモスクワに住む田中ひとみさん(仮名)。ロシア人が大好きという彼女は、とても残念そうです。


ワクチン接種開始から半年経過、2回接種率は10%強にとどまる

ロシアのコロナ感染は、急激に再拡大しています。ノーマスクな人々、いっこうに進まないワクチン接種、という記事を今年6月に書いたばかりですが(前回の記事:ノーマスク率高めの街のワクチン事情と、コロナ経験者のワクチン接種体験記(ロシア・モスクワより))、やはり感染が再拡大しました。デルタ株です。

2021年7月1日のロシア全土の新規感染者数は、1日だけで約2.4万人。ロシアでの新規感染者数の90%をデルタ株が占めています(注1)。

2020年12月、世界最速で自国製コロナワクチン接種を開始したロシア。すでに自国製ワクチンは4種類開発されました。しかし、国民は「データを操作しているのではないか」「得体が知れない」「とにかく怖い」とワクチンを打ちたがりません。

困った政府は、様々な接種推奨キャンペーンや呼びかけを行っています。
「ワクチン接種者に、抽選で車やアパートをプレゼント!」
「ワクチン接種したら、アイスクリーム無料!」

「ワクチン接種者に抽選で100万円程度の車を20名にプレゼント」のお知らせ。モスクワ市ウェブサイトより。

そこまでしないとだめ? でも、これでもだめでした。もともと政府を信用しないという国民性が根底にあるからです。

2021年6月30日、ロシア大統領府は、秋までに人口の60%に新型コロナウィルスワクチンを接種の完了計画を断念しました(注1)。

業を煮やしたモスクワ市長の強制措置「外食するなら、ワクチンを」

怒ったモスクワ市長は、2021年6月半ばより、サービス業従事者へのワクチン接種を義務付けました。飲食店では、その店の60%の従業員が接種していないと営業できません。他には幼稚園教諭なども、強制接種の対象となりました。

2021年6月28日からは利用する客側も、ワクチン証明がないと店内飲食禁止。テイクアウトは可能ですが、2021年8月1日以降はワクチン接種証明であるQRコードがないと、屋外テラス席も利用できなくなります。もしくは、72時間以内にPCR検査を受け、陰性証明を提示しなければ入店できません。

実は、過去6か月以内に新型コロナウィルスに感染した人達も、店内飲食ができます。500人以上を収容する劇場等でも、このワクチン証明制度が実施されます。

モスクワ市長が、少しでもワクチン接種を進めようという意向で始めた措置ですが、果たしてどんな結果が出るのでしょうか?

モスクワのスターバックス。入店できないように入口を椅子でブロック。ショッピングモール内なのでマスクを着用する人達。
同じスターバックスでの掲示。「入店にはワクチン証明QRコードやパスポート、もしくは72時間以内のPCR検査結果が必要」
モスクワのクリスピークリームドーナツ。同じくテイクアウトのみ。

ロシア人にとって「コロナは、ただの風邪」

田中さんの印象では、ロシア人のコロナに対する言動は、
「コロナをあまり深刻にとらえていない」
「人にうつしたら申し訳ないからマスクをしようという発想がない」
「そもそもマスクは意味がない、くらいに考えている」
だそうです。

メディアがコロナへの恐怖心を強調しても響かず、基本的にメディアを信用しません。英国の権威ある医学雑誌「ランセット」に掲載された「ロシア製ワクチンスプートニクV」のデータについても、「いくらでも操作できる」と疑います。

地下鉄の入り口では、警察が見張っているので手袋とマスクを着用しますが、改札を抜けると脱ぎます。
ショッピングモールや劇場では、係員に注意されてしぶしぶマスクをします。

「子どもやお年寄りには本当に優しく、子育てしやすい。ロシア人大好き」と常々語っていた田中さん。
「でも、子どもや高齢者を皆で守ろう、一丸となって早くコロナを終息させようという気がまったくない。残念すぎる」

ロシア人幼稚園で一緒の保護者達は、ワクチンを済ませている率が国民平均の10%よりは高そうで、それが救いです。

PCR・抗原検査ができる会場入り口。並ぶ間も、屋外ではノーマスク。

ワクチン証明は、闇で買う?

外食を制限されても、ワクチンを受けないロシア人は多数存在しています。

しかし「公的に接種せずに、闇でワクチン証明を買う」という人がいると、田中さんから衝撃的な情報が!

実はロシアでは、会社に提出する健康診断書、小児科の治癒証明書、パスポート、運転免許証など、だいたいのものが闇で買えるとのこと。具体的には、ウェブサイト等で偽造書類を入手するということです。会社や手続きの場面で、これら偽造書類が本物として通用するのです。

田中さんは、欧州各国で暮らした経験がありますが
「他の国々では、一般人が闇で偽装書類を買うという話は聞いたことがない」そうです。
確かに、一部の人達が闇取引をするのはどこの国でもありうることですが、ここまで広く浸透しているとは!

ワクチン証明も同じように、闇で買えるのでしょうか? モスクワでの店舗入店時には、パスポートとワクチン証明QRコードの両方の提示を求められたという人もいて、それだと切り抜けるのは厳しい気がしますが……。

アメリカでも偽造ワクチン証明の売買が報告されています(注2)。日本で暮らす私達からすると驚きの発想ですが、ある意味、世界は進化し続けています。

ワクチン接種証明QRコードがない場合、テラス席も2021年8月1日から使用禁止の予定。

(注1)https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-russia-vaccine-kremli-idJPKCN2E60A2 ロイターweb版

(注2)https://www.cnn.co.jp/tech/35168252.html CNNweb版

(写真はすべて、田中さん提供)

(この記事は、2021年7月1日時点のデータに基づいて執筆しました)

岡本 聡子

岡本 聡子ライター・経営学修士・防災士

戦略系経営コンサルティング会社を経て、上海にMBA(経営学修士)留学。その経験をもとに『中国のビジネスリーダーの価値観を探る』(『上海のMBAで出会った中国の若きエリートたちの素顔』を加筆・改題)を株式会社アルクより出版。幼稚園児の母。分析・事業開発支援、NPO運営なども行う。facebook.com/okamotosatokochina

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