【フランスからの報告】フレンチパパはママにお弁当を作らせない?!
フランスといってもパリから660km以上離れたスイスとイタリアの国境近く、フレンチアルプスのスキー場暮らし。そんな田舎&山から、華やかさはないけれど、ごく普通で一般的なフランスの日常や教育について、毎月2回リポートします!
お弁当&アペロ(料理持ち寄りパーティ)
今回は『お弁当やアペロ(料理持ち寄りパーティー)』について。まずは美食で名高いフランスのお弁当。さぁ、その実態は!?
「キモノ」「スシ 」「マンガ」「ボンサイ」そして、今や「ベントー」もフランス語!
フランス語で「お弁当」はPique-nique(ピクニック)やCasse-Croûte(カスクルート)。
それに代わって近年、英語の「ランチボックス」よりもよく耳にするようになってきた外来語が、なんと「Bento(ベントー)」!
というのも「ランチボックス」だと「アメリカ人みたいに単に箱にサンドイッチやホットドック。バナナやリンゴを入れるだけの『雑なイメージ』。
それが「Bento」になると、色々おいしいものが詰め込まれた夢ある小箱。まさに日本みたいな『細やかなイメージ』になるから・・・なのだそう。
フランス人達の作る「Bento」
でも、だからと言って日本のお弁当を真似して作るのか? といえば、そこはNon!
ご覧の通り、大きな容器にパスタサラダなど1品だけを詰め込む人がほとんど。
「こんなのでもいいんだぁ!」と思わず嬉しくなってしまうほど大胆なBentoばかり(2018年マルハニチロ調査によれば、日本は3〜5品が84%を占める)。
「メニュー」や「見た目」には悩まない
2019年くらしHow研究所のアンケートによれば、日本人のお弁当に関する悩みのトップは意外なことに「時短」ではなく「メニュー」で70.9% 。
一方のフランス人の悩みトップは圧倒的に「時短」。そして「コスト」。
だからそのために材料を買ったりはせず、家にあるものを詰め込むだけ(お弁当用冷凍食品なども皆無)。
ムッシュー(男性)達は自分で作る。理由は「誰も作ってくれないから」&「妻に作って貰うなんて恥ずかしい」
2018年日本サーモス(株)の共働き夫婦対象アンケートによれば「男性の82%はお弁当は妻が作る」。そして自分で作らない理由は「妻が作ってくれるから」が61.5%。
一方のフランス人については、お弁当調査自体がフランスにはないので、周りの15名のフランス男性に訊いてみた。
すると全員「お弁当は自分で作る」。そしてその理由は「誰も作ってくれないから」・・・と真逆の答え。
そういえば日仏カップルの女性(専業主婦)にこんな風に言われたこともある。
「結婚当初は当たり前だと思って夫のお弁当を作っていた。でもある日、自分で作るからと断られ、それ以来、作らなくなった」
「フランス人は食にこだわるから自分が食べたいものを持って行きたいのかなと思ったら、そうではなくて、妻に作って貰う同僚なんて他にいなくて恥ずかしいから。それが理由だった」
中学生以上も自分で作る。理由は同じ。「誰も作ってくれないから」&「ママに作って貰うなんてカッコ悪い」
もしかしたら「暗黙の了解」でフランス女性達は「夫や大きい子供のお弁当は作らない!」と一致団結しているのだろうか?
そうすれば「ママが作ってくれない子」が大半。少数派の「作って貰う子」は自然と「子供みたいでカッコ悪い」になっていく。
なんだか私達日本女性は「作り損」? でも、もし作らなければ夫や子供も作るようになるのだろうか?
アペロ(料理持ち寄りホームパーティ)での“心得“
春から夏にかけては屋外で食べられるようになるので、料理を持ち寄ってのホームパーティが盛んになる。そしてその際、持ち寄られる料理、これがまたなかなか勉強になる。
それは、味やレシピではなく、ここでも水面下にしっかりとある、フランス女性達の手強くも賢い姿勢。
おいしいものを持参することはもちろん大切。ただし「凝ったものや手間暇かけたものは避ける」ことが肝心。
なぜなら自分の料理の腕を披露する、単なる「自己主張」になりかねないし、それは不快感や嫉妬心を生む場合もあるので。
そもそもアペロには手ぶらで来てもいい! くらい気軽に参加できる風潮にしたいのに、その流れも壊しかねない。
もっと広い観点でいえば、女性の負担を少しでも減らそうと努力している同性達の足を引っ張ることにもなり得るからだ。
お弁当からアペロまで、至るところに女性同士の小さな心得や掟(オキテ)があり、でも声高らかに唱えるのではなく「暗黙の了解」で守り合う。それがフランスのフェミニスト社会を一歩一歩、日常的にも進ませている。