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【フランスからの報告】フランスの住まい事情

【フランスからの報告】フランスの住まい事情

フランスといってもパリから660km以上離れたスイスとイタリアの国境近く、フレンチアルプスのスキー場暮らし。そんな田舎&山から、華やかさはないけれど、ごく普通で一般的なフランスの日常や教育について、毎月2回リポートします!


第7回 意外?! フランス人も「狭いながらも楽しい我が家」が好き

一時期よく日本の住まいは「ウサギ小屋」と揶揄されたけれど、フランス人もそれほど大きな家に住んでいるわけではなく、パリなど大都市の住宅事情は日本の都市部と同様。私の暮らしている山村もスキーリゾートなので地価が高く、仮に広大な敷地があっても、庭を広くして住居はこじんまりと作る人が大半。その理由は、

「家が広いと掃除が大変だし、税金や光熱費もかかる」

「その分、一部を賃貸にしてスキー客やシーズンワーカーに貸す方が賢明」

と、階下を賃貸用ワンルームなどにする合理派も多い。また、

「家は繭のようなもの。家族が集う温かな雰囲気が何より大切。だから広い必要はない。顔を寄せ合えるようなリビングとダイニング。あとは健やかに眠れる寝室があるだけでいい」

という『家は繭』説はよく耳にする。 そんな『繭』も、また日本とは違うことがいろいろ。覗いてみましょう♬

子ども達の描く「夢の家」も庭が主役。そして夏も涼しい山に暮らす子ども達にとっては「暑いところでプールのある家に住んでみたい!」が憧れ。

親の寝室・最優先

建築雑誌の仕事で、よく近所の家を内見させてもらうのだが、移住したての頃、驚いたのは、どの家も一番良い部屋が夫婦の寝室にされていることだった。一戸建てならば、写真のように最上階のワンフロアすべてが夫婦の寝室。トイレもバスルームもあり、窓からの景色も抜群な位置を夫婦が陣取る。

「一番上ならば、子ども達の騒音を頭上に聴く不快から逃れられる」

「子ども達が思春期になる頃には夜遊びに出て行ったり、深夜に帰ってくる階下の動向も気にならないだろうし」

とのこと。

一方、アパートの場合も一番日当たりの良い広めの部屋が親の寝室であることがほとんど。

「家賃を払っているのは私達だから当然」

「子どもは大きくなれば出ていくし、そうしたらたまにしか使わない客部屋になるわけだから」 あくまでも『家主=王座=親の寝室』が基本らしい。

子ども部屋に勉強机は不要

一方、子ども部屋は「寝るだけの小部屋で十分」と、屋根裏や裏部屋であることが多い。そして日当たりよりもむしろ、昼寝にも最適な真っ暗にできる空間が選ばれている。広さも

「広ければ、その分、玩具などが溢れ、掃除も大変」

「整理整頓のできない子どもにもなりがち」

と小さな部屋が好まれる。遊びも勉強もリビングや台所でする子どもが大半。

フランスの小学校では基本的に国から「書く宿題は禁止」とされていて、詩の朗読や自由研究発表など口頭での宿題がメイン。そのため親のそばで宿題をする習慣が小さい頃からついているからだろうか? 中高生になっても台所やリビングのテーブルで勉強をする子どもがとても多く、子ども部屋に勉強机がない家庭は珍しくない。

ダイニング(食事の場所)にテレビ……はNG!

そして家族の集う団欒の場所ダイニング。つまり食事スペースにはテレビは「ご法度」。これは昔からの傾向なのだが、ここ20年ほどでフランスにも急速に大画面テレビが普及。家族と共に同じTV番組を見て、なにやかやと喋りながらの食卓も楽しいものなので、変化するかな?と思いきや、

「いやいや。食事中はお互い目を見ながらの会話でしょう」という説が今も健在。

しかも近年は、フランスでも親も子どもも携帯電話やタブレットを所持。家の中でもそれぞれ通信作業に追われる時間や場面が増えているので

「だからこそ食事中の対話は大切!」という傾向はますます強まってきている。

リビングも本来は暖炉が中心。でも最近は……そしてこれからは……

ではテレビはどこに?……

家族の団欒の場でもあるリビングも、本来は写真のように暖炉が中心だった。それが近年変わり、暖炉のポジションに大型テレビが据えられる家が急増。

ところがここ数年でそれはさらに変貌。スマートフォンやタブレットの普及で

「最近、家族揃ってテレビで同じ番組を観ることをしなくなっている」

という家も増え、そうなると

「暖はとりたいからリビングには皆いて、それぞれ好きな映像を観る」

が新たなスタイルにもなりつつある。

そのために、また暖炉文化が復活。国をあげてのエコロジー政策で電気代も値上がりするばかりなので、薪ストーブ人気も再燃。売り上げが伸び始めているという。

キッチンに洗濯機!?

キッチンに食器洗い機と並んで洗濯機が備え付けられていることが多く、これも最初、見慣れない光景で驚いたことのひとつだった。

でも実際に使ってみるとキッチンは家事の中心ポジションにあるので、機能的で便利な動線にもなることが判明。

例えば朝食の片付けを終えた頃、洗濯も終わっていれば、洗面所などにわざわざ行く必要もなく干す作業に取り掛かれる。直前まで使っていた布巾やテーブルクロスも即、投げ込める。

また、洗濯機が洗面所や浴室にある場合、誰かが入浴中などの時に不都合が生じるけれど、キッチンならばそれもない。 理にかなったアイデアだった。

大きな家でもシャワーのみ。バスタブ不要?!

もう一つ、生まれも育ちも日本の私にとって衝撃的だったのは「豪華な大邸宅でもシャワーだけ。バスタブがない家」がかなりあること。銭湯&温泉文化の歴史も長く、狭いワンルームのアパートでさえユニットバス付きだったりする日本とは、広い家にシャワーしかないことは“真逆の間取り“だ。

でもこれはフランス人が風呂嫌いだからというわけではなく、フランスは昔、水質が悪かったという歴史によるもの。水代わりにワインを飲む習慣もあることからワイン文化が育ち、湯に浸かることや湯を浴びることも決して衛生的とはいえず、香水文化も発展。風呂文化は育たなかったらしい。

つまり日本人の風呂好きは、日本が昔から良質の水に恵まれていた歴史によるものなのかもしれない。

書斎より道具部屋。男衆の秘密基地ガレージ

日本では「書斎」に憧れる男性が昔も今も多いそう。一方、フランス男性達が欲しがる自分スペースは「書斎」よりも「ガレージ」。大工道具や庭道具。自動車やオートバイの修理&整備道具や自転車の部品&工具。その他、ボートやカヤックなどスポーツ道具のための空間。

でもこれもここ数年で急変。

趣味がパソコンを使ってのゲームという人達が増え、またコロナによるテレワークも増え始めているので「一人になれる空間」を男女を問わず求める風潮が高まってきている。

「書斎のある家が一般化する」。これがフランスの住まいの新たな傾向になりそうだ。

ユニークな郵便受け

写真左)番地(481)の下が投入口。その下の取っ手を開けると中がボックスになっている
写真右)左脇が投入口&取り出し。庭付きでベランダには暖炉用の薪まで積んである。ところが「暖炉の煙突を作るのを忘れちゃった」そうで、今、煙突を作成中

余談だが、山の暮らしで楽しいことのひとつは、写真のような手作りログハウスの郵便受けが多いこと。ボルドーやブルゴーニュ地方の村では小さなワイン樽が郵便受けになっていることも多い。

手紙を配る郵便配達員も楽しいに違いない。

祐天寺りえ

祐天寺りえライター

1994年フランスのスキー場(メリベル)に移住。小学校勤務(給食、教室清掃、スクールバス添乗など)、執筆業、鍼灸&指圧&アロママッサージなどを生業とする3子(20&21&26歳)のシングルマザー。著書「フランスの田舎暮らしとおいしい子育て(小学館)」「食いしん坊の旅(パラダイム出版)」「フランスだったら産めると思った(原書房)」facebook.com/rie.yutenjiosaki

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