アレルギー対応食のオーダーメイド「マトイル」のメニューがないレストラン
食物アレルギーがあって食べることができないものがあると、自由にオーダーできなかったり、みんなと同じものが食べられないなどたくさんの制約があります。大手電子部品・電気機器メーカーである京セラで働く谷 美那子さんも、子どもの頃からアレルギー反応を起こしてしまう食材が10品目以上あり、食事の席での苦労を経験してきました。そんな経験から京セラ社内の新規事業アイデアスタートアッププログラムに応募し、応募数約800のなかから現在事業検証の段階まで実現したものの1つが、食物アレルギー対応サービス「matoil(マトイル)」です。
■お祝いのハレの日ごはんをシェフが構成
食物アレルギーや食の嗜好に合わせたオーダーメイドのミールキットサービスで、お誕生日などのハレの日のためにあわせたメニューをシェフが構成する「ごちそうキット」を配送で販売しています。
オーダーメイドは、まずはお届けするの方へのヒアリングからスタート。
「アレルギーはそれぞれ持っているものも、重さも違うといのもあって、そこをきちんと伺ってからメニューを提案しています。アレルギーというと7品目、28品目などあって、例えば自分が食べられないのは7品目のなかでは卵だけなのに、ほかも全部抜かれてしまうというような状況を作りたくなくてこういう方式をとっています」
また、オーダーメイドのメニューを主役となるお子さんが気に入ってくれるかどうかも重要。そのため、「ひとくちトライアル」といって、味見ができるサービスも用意されています。
食物アレルギーのあるお子さんがいるご家族は、使用できる食材が限られていることや総菜を
利用しづらいことから日々の家庭料理についても負担になることがあります。また、日常の食
事だけでなく、外食や旅行にも行きづらいといった課題もあります。
「私たちの場合、もともと食物アレルギーを持つ当事者がやっているので、他者には伝わりづらい問題や使いたい場面など、それぞれの事情をあるあるとして受け入れて、それを共有しながらメニューを提案できるというのが、特徴だなと思っています」
■上北沢に「メニューのないレストラン」を作ることでもっと身近な存在に
オンラインでのオーダーメイドメニューの提供サービスの次なるステップとして、上北沢にオープンしたのがレストラン「matoil -マトイル-」です。こちらのレストランは完全予約制で利用は1日1組のみ、決まったメニューはありません。ご来店する方の食べたいものをアレルギーに配慮して作っています。
利用シーンとしては、例えばアレルギーを持つお子さんのお誕生日会。食物アレルギーを持つ子どもは、食事をほかの子と分けられるなど違いは日常にあることです。逆にその違いをうらやましがられることにしていきたい、あの美味しそうな料理を食べてみたい。レストランになることで、違いを気にせずに集まっていただけるのではないかと考えているそうです。
また、オンラインだけでなく、リアルな場を持ったことでの気づきもありました。
「アレルギーがあるお子さんをお持ちの方の中には、対応している食品をオンラインで買う前に、実店舗を見に行くこともある、とお話聞いたことがあります。私たちがどういう人で、どんなところでつくっているのかを見られることが、安心感につながれば嬉しいです。
もう1つやってみて気づいたのが、前を通りかかった方がふらっと『ここは何のお店ですか?』と声をかけていただく。インターネット上だとアレルギーというキーワードなど、その情報を探している人にしかマトイルに行き当らないですが、リアルな場所というのはアレルギー対応食を探していない人にも届くというのがすごく気づきになりました。
アレルギーがない子が行きたい場所に、アレルギーがある子が行けるというのが最終的に作りたいシーン。ここだったら達成できるのではないか?と、いま手ごたえを感じています」
レストラン以外でも、料理教室や月に1回のオープンファクトリーも実施しています。
matoil -マトイル-
・住 所:〒156-0057 東京都世田谷区上北沢4丁目15-12 1FY
・店舗面積:9坪 / 席数16席
・営業時間/営業形態
●メニューのないレストラン:完全予約制
*ご利用日時については、お電話かメールにてご相談ください
Mail:matoil_sh@kyocera.jp
TEL:070-3798-1222(マトイルファクトリー直通)
●月イチオープンファクトリー:毎月最終土曜日 11:00-18:00(予約不要)
*どなたでも気軽にお立ちよりいただけます。体験会などを行っています。