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「お金」では引き換えられないもの【親子ではじめるエシカル暮らし・31】

「お金」では引き換えられないもの【親子ではじめるエシカル暮らし・31】

わたしが暮らしている藤野地区には「萬(よろづ)」という地域通貨があります。

なんと藤野に暮らす人の1/10の人が加入している(!)とも言われ、「萬」は1萬=1円で、加入者はメーリングリストに登録し「萬通帳」をもらいます。必要なものがある時や手助けしてほしいことがある時はメーリングリストにメールをすると、登録メンバーに届き、応えられそうな人が返事をするという流れ。あとは各自直接やりとりし、そのやりとりを通帳に書き込んでいく、というシステムです(萬の説明会・登録会は月に一度ほど開催されています)。

さて、萬に入るとバラエティに富んだメールが毎日届きます。

「アロマ虫除けスプレーWSをします」「野菜の苗譲ります」なんてのから「〇日○時に〇〇に行きたいです。車乗せてもらえませんか?」はたまた「〇〇にストール落ちていました。持ち主さんに心当たりありませんか?」なんてものまで。

我が家でも「使わなくなったオーブンレンジ欲しい人いませんか」と呼びかけたら、もらってくれる人が現れ、代わりに桃をいただいたり、「庭の菜園に使う畑の土、大量に探してます」と聞いてみると「どうぞどうぞ」「うちのあげます」とたくさん申し出をもらい、あっという間に揃ったり……などなど、「萬のおかげだ〜!」ということは多々ありました。

通貨と呼んでいるけど「萬」を使ってもいいし、使わなくてもいい。さらには通帳残高がマイナスになり続けてもいい! のが萬の面白いところ。お金というより、人と人が関わり合うこと、繋がりのきっかけになることが目的になっているのです。萬をきっかけに出会った人、仲良くなった人はたくさんいます。それってすごいことだなあと思います。

萬でもらった土で作ったコンテナ菜園。種や苗も萬でもらったものも多い

藤野に来る時、小さな子ども2人抱えて、運転もできず(当時は免許もっていなかった)、東京とはいろんなことがかけ離れた里山で、どんな生活になるんだろ……と思っていました。

そして、引っ越し初日にお隣さんが子守をしてくれるという衝撃から始まって、いろんな人が食べ物を届けてくれたり、車に乗せてくれたり、困った時は助けてくれる、困ってなくても助けてくれる……そんな暮らしのあり方に、心底驚きました。

ありがたい反面助けてもらってばかり……と思っていたわたしに「助けてくれた人に何かを返そうって思わなくていいんだよ。自分ができる時に困っている人がいたら、その人を助けてあげたらいいの」という言葉をもらって、目から鱗。そう言ってくれた人も、かつて大変だった時に助けてくれた人に言われた言葉だと聞き、さらにさらに鱗。

助け合いは「ささやかなこと」の積み重ね

助け合いっておおげさなことじゃなく、道で顔を合わせた人に「駅まで車乗って行く?」と聞いたり、多めに作ったおやつを「よかったら食べて」って持っていったり、そんなささやかなことの積み重ねです。でもそのささやかな積み重ねにこそ、わたしは何度も救われたし、ちょっと困った時や大変な時は「助けて〜誰か〜手伝って〜」と言っていいんだと思えるようにもなりました。

心地よいものをもらったら、自分も誰かに心地よいものを届けたくなる。自然とそんな助け合いをしているような町だから「萬」が生まれ根付いているのかもしれません。

玄関先に誰かが食べ物を届けてくれてること多々。この日は小梅が入ったカゴが庭の木にかけてありました

お金を払い、望むことを対価としてもらう。お金があれば大抵のことは解決できる。そんな社会のあり方に、少しずつ違和感や苦しさを、わたしたちみんな感じだしているような気がします。人と繋がること、関わり合うこと……。そんなお金と引き換えに得るのではない「何か」の可能性を、これからも考えていけたらな、と思っています。

中村 暁野

中村 暁野編集者、エッセイスト。

一年をかけてひとつの家族を取材する、家族と一年誌「家族」編集長。家族にまつわるエッセイやコラムの執筆も手がける。夫と9歳女子、2歳男子、たれ耳うさぎのバターと一緒に、2017年から、山梨と神奈川の県境にある藤野へ移住。古い一軒家を少しずつ自分たちで改装しながら暮らしている。kazoku-magazine.com

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